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野球はスリーアウトから  アイスティーシーズン  作者:


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2/20

がしんしょうたん

 ほか学校がっこう練習れんしゅう試合じあいをした。


 去年きょねんなつ大会たいかい、その成績せいせきでは自分じぶんたちのほううえだ。こっちはいっ回戦かいせんち、回戦かいせんけたが、あっちはいっ回戦かいせんけている。


 それで、今日きょうてるとおもってのぞんだ試合しあいだったのに、まさかの敗北はいぼく


 部員ぶいんたちはんだ。


 そんなかれらに、監督かんとくかたる。


 中国ちゅうごく故事こじだ。『臥薪がしん嘗胆しょうたん』というはなしてきやぶれたおうはなしだ。


 ――いつか復讐ふくしゅうげるために、たきぎうえたり、にがきもをなめて、過去かこ屈辱くつじょくわすれない。


 もともとはそんな意味いみだが、現代げんだいでは「一時いちじ苦労くろうえて努力どりょくかさね、目的もくてき達成たっせいする」という意味いみにもなっている。


今日きょう試合しあいけたくやしさを、これからの練習れんしゅうにぶつけよう! そして、なつ大会たいかい去年きょねんよりもすすもう!」


 監督かんとくかえったあとで、部員ぶいんたちはかんがえる。


「『臥薪がしん嘗胆しょうたん』か」


なつ大会たいかいまでのこ期間きかんすくないけど、みんなでやってみる?」


 とはいえ、さすがに「たきぎうえる」のはありない。からだ回復かいふく重要じゅうようだ。それをそこなっては、満足まんぞく練習れんしゅうができなくなる。


「じゃあ、もうひとつのほうか」


「たしか、『きもをなめる』だっけ?」


 そういうわけで、インターネットで検索けんさくしてみる。


「『きも』。あと、なめるんだから、『食用しょくよう』っと」


 すると、いくつもの画像がぞう表示ひょうじされた。


 フォアグラを使つかったフランス料理りょうり数々(かずかず)。フォアグラをテリーヌにれたり、サラダにぜたり、ステーキにえたり。


 さらに、あんきもを使つかった和食わしょく数々(かずかず)。あんきもにポンをかけたり、てんぷらにしたり、お寿司すしにしたり。


へんだな。どれも美味おいしそうにえるんだが・・・・・・」


 部員ぶいんたちはかんがえる。


 ひょっとして、監督かんとくが『臥薪がしん嘗胆しょうたん』の意味いみを、なに勘違かんちがいしているのでは。


 てきやぶれたおうさまのはなしらしいから、


「こういう美味おいしいものをべたいけれど、いまちぶれておかねがないから、おうさまはきもだけをなめて我慢がまんしたとか、それが本当ほんとう意味いみじゃないのか?」


「ありるな。いつかかえき、こういう美味おいしいものをべる。そんな気持きもちをわすれないために、きもだけをやすってきて、それをなめたのかも」


 たぶん、そうだ。そうにちがいない。


「じゃあ、なつ大会たいかいしょうしたら、このなかのどれかを、みんなでべにくか」


「いいな。『臥薪がしん嘗胆しょうたん』だ。今日きょう試合しあいけた屈辱くつじょくえて、なつ大会たいかい結果けっかそう。そして、みんなで美味おいしいきもべにくぞ!」


 それからかれらの練習れんしゅうわった。


「『臥薪がしん嘗胆しょうたん』!」


「『臥薪がしん嘗胆しょうたん』!」


 それが部員ぶいんたちのくちぐせになった。


 さらにノックのとき気分きぶん高揚こうようすると、


「フォアグラー!」


「あんきもー!」


 おもわずさけぶ。


 監督かんとく薄々(うすうす)づいていた。部員ぶいんたちが『臥薪がしん嘗胆しょうたん』について、なにへん誤解ごかいをしているっぽい。


 しかし、かれらはいま目標もくひょうかってぱしっている。チームは確実かくじつつよくなっているし、このいきおいをいでは駄目だめだ。


 だから、監督かんとくさけかえす。


「フォアグラー! あんきもー!」


 しばらくして、なつ大会たいかいはじまった。


 まずはいっ回戦かいせん勝利しょうり


 さらに回戦かいせんでも勝利しょうりする。


 ゲームセットの直後ちょくご部員ぶいんたちはマウンドにあつまると、


「フォアグラー!」


「あんきもー!」


 ひとさしゆび高々(たかだか)と、てんかってげた。


 これがかれらの『臥薪がしん嘗胆しょうたん』。


 そして、実際じっさいべた「フォアグラ」と「あんきも」は、とても美味おいしかったのだ。


次回、ちょっと二軍にいただけなのに、こんなことになるなんて・・・。

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