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野球はスリーアウトから  アイスティーシーズン  作者:


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17/20

一軍合流

 本拠地ほんきょち球場きゅうじょうからはなれたけん遠征えんせいしている。


 そこでぐん試合しあいがあるのだ。


 で、その試合しあいちゅう、ベンチにマネージャーがはしってくる。


いますぐ一軍いちぐん合流ごうりゅうしてください!」


 急遽きゅうきょおれ一軍いちぐん昇格しょうかくまったらしい。


かったな。あとのことはにしなくていいぞ」


 ぐん監督かんとく笑顔えがおう。


 すぐさま選手せんしゅ交代こうたいだ。


 とにかく時間じかんがないらしい。着替きがえているひまはないそうだ。


 ユニフォームのうえにジャンパーを追加ついかして、マネージャーと球場きゅうじょうそといそぐ。


 一軍いちぐん今日きょうよる試合しあいだ。「交流戦こうりゅうせん」で遠征えんせいちゅう


 試合しあいおこなわれるのは、普段ふだん対戦たいせんしない球団きゅうだんの「本拠地ほんきょち球場きゅうじょう」なので、


「どうやってくんです?」


 おれはマネージャーにたずねた。


「それなんですけど」


 ぐん担当たんとうのマネージャーは少人数しょうにんずうだ。


 もしもおれ外国人がいこくじん選手せんしゅなら、目的地もくてきちまで同行どうこうするという。


 しかし、おれ日本人にほんじんだ。


 なので、マネージャーがにこやかにげてくる。


一人ひとりでがんばってください。移動いどう手段しゅだん用意よういしておきました。場所ばしょまではおくります」


 それをいて、おれ不安ふあんになる。


 よる試合しあいはじまるまでに、一軍いちぐん合流ごうりゅうできるだろうか。


 どうも自信じしんがない。普段ふだんかない球場きゅうじょうだし、電車でんしゃえとかあるだろうし・・・・・・。






 わたし高速こうそくバスにりこんだ。


 これからとなりけんまで、プロ野球やきゅう観戦かんせんく。


 交流戦こうりゅうせんだ。贔屓ひいき球団きゅうだん現在げんざいとなりけん遠征えんせいしてきている。こういう機会きかい大事だいじにしたい。


 それで手配てはいした。「試合しあいのチケット」と「高速こうそくバスの往復おうふくチケット」、そのふたつがセットになった「おとくパック」だ。


 なお、今日きょうはこのけんで、その球団きゅうだんぐん試合しあいをしている。


 一軍いちぐん試合しあいまえに、そっちをくこともかんがえた。


 でも、ぐん試合しあいったとしても、途中とちゅうすことになる。


 だから、そっちはあきらめた。今日きょう一軍いちぐん試合しあい集中しゅうちゅうする。


 そして、いままさにバスが出発しゅっぱつしようというときになって、


「すみません! ります!」


 二人ふたり男性だんせいがバスにりこんできた。


 バスのなかおどろきのこえであふれる。


 りこんできた片方かたほうは、贔屓ひいき球団きゅうだん選手せんしゅだ。


 そっちじゃないほう説明せつめいする。こっちは球団きゅうだんのマネージャーらしい。


さきほど急遽きゅうきょかれ一軍いちぐん昇格しょうかくまりました。よる試合しあいはじまるまでに、一軍いちぐん合流ごうりゅうしなければなりません」


 それで、この選手せんしゅもバスにるという。これならえは必要ひつようない。っているだけで、一軍いちぐん試合しあいがある野球場やきゅうじょうまで、れてってくれるのだ。


 予想外よそうがい事態じたいに、バスのなかがざわついた。


 まさか、プロ野球やきゅう選手せんしゅ一緒いっしょに、移動いどうすることになるなんて・・・・・・。


 そんななか、マネージャーと選手せんしゅあたまげて、


目的地もくてきちまでよろしくおねがいします」


 すると、おきゃくさんの一人ひとりが、


一軍いちぐん昇格しょうかくおめでとー♪」


 そうって、拍手はくしゅをした。


 これをかわりに、ほかのおきゃくさんたちも拍手はくしゅはじめる。


 選手せんしゅ何度なんどあたまげながら、たったひといていたせきすわった。


 マネージャーがりると、バスがはしす。


 これからけんざかいえて、一軍いちぐんがいる野球場やきゅうじょう目指めざすのだ。


 おきゃくさんたちはそわそわする。


 本心ほんしんでははなしかけたい。サインとかをおねがいしたい。


 でも、がまんしよう。そんな空気くうき自然しぜんとできていた。


 一方いっぽう選手せんしゅはスマホでなにかを真剣しんけんている。


 となりせきにいたおきゃくさんがこっそり、「なにているのか」をかみいた。


 それをうしろのせきのおきゃくさんに、うまくパスする。


 そのかみがバスない一周いっしゅうした。選手せんしゅにばれないように、こっそりとだ。


 おきゃくさんたちのおおくがおもす。学生がくせい時代じだい授業じゅぎょうちゅう、こんなふう先生せんせいぬすんで、教室きょうしつないでメモをまわしたっけ。


 選手せんしゅているのは、他球団たきゅうだん投手とうしゅだ。その動画どうが


 この投手とうしゅ今夜こんや試合しあい先発せんぱつするらしい。


 それで研究けんきゅうしているのだろう。


 しばらくして、べつのメモがまわってきた。


 なるほど。これも選手せんしゅに、ばれてはいけない。






 バスのなかにアナウンスがながれた。


 あとじゅっぷんくらいで、目的地もくてきちくらしい。


 おれはスマホからかおげる。


 今夜こんや試合しあい先発せんぱつする相手あいて投手とうしゅ、その研究けんきゅうにすっかり夢中むちゅうになっていた。


 マネージャーのうとおりだ。っているだけでいい。


 ただし、ファンのひとたちと一緒いっしょだけど。


 それで不安ふあんだった。「高速こうそくバスでの移動いどうちゅうずっと、はなしかけられるんじゃないか」と。


 でも、そういうことは一切いっさいなかった。


 たぶんをつかってくれたんだとおもう。本当ほんとうにもうしわけない。


 バスがいたら、さきりよう。


 そうかんがえたときだった。


 きゅうにバスのなかが、にぎやかになる。


 おれ以外いがい全員ぜんいん突然とつぜんうたしたのだ。


 うちの球団きゅうだんである。


 おれ一緒いっしょうたったほうがいいのかな?


 まごまごしていると、一番いちばんわった。


 その直後ちょくごに、拍手はくしゅこる。


今夜こんや試合しあい、がんばってねー♪」


 バスが走行そうこうちゅうでなければ、がって「おじぎ」をくりかえしていたかもしれない。


 おれすわったまま、あたまうえりょううでおおきくふると、


「ありがとうございます!」


 このあと、ふたた球団きゅうだんはじまった。


 今度こんどおれうたう。


 それがわったときにちょうど、バスがまった。


 目的地もくてきちいたのだ。


 おれ自分じぶん荷物にもつつと、盛大せいだい拍手はくしゅおくられながら、最初さいしょにバスをりた。


 まえには、おおきなドーム球場きゅうじょうがある。


 試合しあい開始かいし時間じかん刻々(こくこく)せまっていた。






 わたし球場きゅうじょうないせきく。


 まさか、プロ野球やきゅう選手せんしゅがバスにりこんできて、一緒いっしょ移動いどうするとはおもわなかった。


 しかし、あれでバスないのおきゃくさんたちに、つよ一体感いったいかんまれたとおもう。


 今夜こんや試合しあい、あの選手せんしゅ出番でばんがあれば、全力ぜんりょく応援おうえんしよう。


 あのバスにってきたひとたちは全員ぜんいん内野ないや一角いっかくにかたまってすわっている。今夜こんや試合しあいほかけんからも高速こうそくバスがているそうだ。まちがえてほかのバスにらないように、試合しあい終了しゅうりょうにはみんな一緒いっしょに、自分じぶんたちのバスに移動いどうする予定よてい


 試合しあい開始かいし直前ちょくぜんに、今日きょうのスターティングメンバーが発表はっぴょうされる。


 次々(つぎつぎ)選手せんしゅたちが紹介しょうかいされていくなかわたしおどろいた。


 あの選手せんしゅ名前なまえばれたのだ。今日きょうのスターティングメンバーである。


 この野球場やきゅうじょうにいるほかのおきゃくさんたちにとっても、予想外よそうがいだったのだろうけれど、わたしたちにとっては、ものすごいサプライズだ。


 となりにいるひとたちとたがいにかお見合みあわせながら、あの選手せんしゅけて拍手はくしゅおくる。


 しかも、しかもだ。


 かいおもて、あの選手せんしゅにチャンスで打席だせきまわってくる。ランナーはいちるいるい


 そこでタイムリーヒットをった!


 おなじバスにってきたみんなで、歓声かんせいげる。


 先制点せんせいてんだ!


 いちるいランナーもホームベースにかえってくる。一気いっきてん






 試合しあいきゅうかいおもてはいっていた。


 おれ戦況せんきょうをベンチでまもる。


 今日きょうはスタメンで試合しあいることができたし、タイムリーヒットをつこともできた。


 しかし、ほんのすこまえに、代打だいだげられていた。


 これは仕方しかたがないだろう。


 チームは現在げんざいけている。


 まずはいつく。そのためにはてん必要ひつようだ。


 ランナーはいちるい。ホームランなら一気いっきいつける。


 そのための代打だいだだ。おれよりもパワーのある打者だしゃいま打席だせきっている。


 すでにツーアウト。がけっぷちの状況じょうきょうだ。


 おれ代打だいだ選手せんしゅ応援おうえんした。


 そうしながらおもす。


 今日きょうはいろいろなことがあった。


 ぐんでいきなり、一軍いちぐんへの合流ごうりゅうげられて、高速こうそくバスにってきた。


 あのバスに一緒いっしょっていたファンのひとたちが、球場きゅうじょうのどこにいるのかはっている。


 かいおもてにタイムリーヒットをったとき、この球場きゅうじょう一番いちばん歓声かんせいげてくれた。内野ないや一角いっかくにかたまってすわっている。


 せっかくとおくから観戦かんせんているのだし、できることなら試合じあいせてあげたい。


 おれ代打だいだ選手せんしゅを、大声おおごえ応援おうえんした。


 このときあたまかたすみでは、あるかんがえがかんでいた。






「ゲームセット!」


 審判しんぱんこえに、わたしは「ふー」といきく。


けたかー」


 とはいえ、プロ野球やきゅうのシーズンはながいのだ。ったりけたりはたりまえ


 それに、けはしたものの、試合しあい内容ないようわるくなかった。りょうチームがてんうシーソーゲーム。ていて面白おもしろ試合しあいだった。


 ゲームセットの直後ちょくご、こっちにはしってくる選手せんしゅがいる。


 あの選手せんしゅだ。一緒いっしょにバスにって移動いどうしてきた選手せんしゅ


 わたしたちがかたまってすわっている場所ばしょ、そのまえまでると、ぼうしをって一礼いちれいする。


 わたしおもわず拍手はくしゅをした。


 周囲しゅういにいるひとたちもだ。拍手はくしゅをしながら、がっているひともいる。


 この拍手はくしゅほかのおきゃくさんたちには、なんのことかわからないようで、


なに? あの選手せんしゅいが、集団しゅうだんているの?」


 そんなこえこえてくる。


 こころなかでほくそわたし


 まあ、いっちゃ、いかな。


 おなじバスにって、この球場きゅうじょうまで一緒いっしょにやってただけのい。


 でも、これはうれしいサプライズだ。試合じあい残念ざんねん気持きもちが、一気いっきんじゃったよ♪


 そして、かえりのバスで。


 さすがに、あの選手せんしゅがまたってくることはなかったけれど、バスのなか終始しゅうし、あの選手せんしゅ話題わだいがっていた。


次回は『脱衣』というお話です。

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