立て札
むかーし、むかし。
ある村の前に、「立て札」が一つ。
とのさまからの「おふれ」だ。
この立て札には、何が書いてあるのか。
「村長を呼んでくるべ」
「んだ、んだ」
この村で文字を読むことができるのは、村長だけだ。
村長はすぐにやって来た。
さっそく立て札を読んでみる。
(『村長たる者、他の村人たちの手本となるべし』)
そのあとに、具体的にやるべきこととして、『早寝早起き』とか、『毎日腕立て伏せ二〇〇回』とか、そんなことが書いてある。
村長は黙って考える。
この立て札、この村に限ったものではないようだ。他の村にも、同じ立て札があるらしい。
(これから毎日、腕立て伏せを二〇〇回か・・・・・・)
自分の年齢でそれはきついし、他の項目も面倒くさい。
そこで、ふと悪い考えが浮かんでくる。
(たしか、このあたりの村ではどこも、文字を読むことができるのは、村長だけか)
だったら、今やるべきことは・・・・・・。
村長は重々しい口調で伝える。
「この立て札、他の村長たちとの相談が必要な内容だ」
そう言って、その場を立ち去る。
そして、すぐさま近隣の村の村長たちを集めて、あの立て札について話し合った。
その結果を翌日、村人たちに伝える。
「あの立て札に書いてあるのは、『来月、村対抗の野球大会をするように』だ」
「そうだったべか」
「だから、村長たちで集まっていたんだべな」
疑うことを知らない村人たち。
さらに村長は続けて、
「『この立て札は、かまどでごはんを炊く時、燃料として使うように』とも書いてある。読み終わったあとは有効利用しろ、ということだ」
証拠隠滅である。
次回は「お・か・ね」のお話です。




