第九十四話
マスクウェルは表向きは国の発展を祝う場として王国中の貴族を招集した。
「王太子殿下。おめでとうございます」
会う貴族、全員がそう言ってくる。
マスクウェルは笑顔でそれに応える。
アンリは傍付きとして少し後ろを歩いていた。
マスクウェルは場が温まったのを確認してアッカバーンの元に向かった。
「国王陛下。私から皆に報告したいことがあるのですが・・・」
「重要なことのようだな。構わぬ」
マスクウェルは許可を得て宣言する。
「私はこの機会を気に婚約を発表する」
マスクウェルの言葉に会場中がざわつく。
どれだけ探っても相手が判明しなかったマスクウェルの相手は誰なのか。
貴族全員の視線が集中していた。
「私の結婚相手は隣にいるアンリ・ユーステッド嬢だ」
アンリは会場中の視線が集まるのがわかった。
凄まじい圧だが、マスクウェルの隣に立つと決めたのだ。
臆せず姿勢を正して受け止める。
誰が言ったのかわからなかったが「男ではなかったのか・・・」と聞こえた。
マスクウェルは静まるのを待ち爆弾発言を続ける。
「私の政策の中にはアンリの案が含まれている」
再び会場中がざわつくのがわかった。
マスクウェルは実際にアンリが関わった政策を1つ1つ伝えていく。
貴族達はその意味を悟り再びアンリに視線を向ける。
「皆の者に提案がある。誰でも学べる場を設けるつもりだ」
ここまで市井出身の文官が活躍した事実を前に貴族達も表立っては反対できない。
それに今までの功績を考えればこれが国の未来に続く政策だと嫌でもわかる。
後ろで人が立つ気配がしてマスクウェルとアンリは振り返る。
アッカバーンは2人に笑顔を向け貴族達に宣言する。
「アンリ嬢の功績を考えれば女人でも素晴らしい活躍をする者がいるのは明らかだ。そこで、私は女人の政策への参画を認めるものである」
この宣言は貴族達に衝撃を与えた。
政は男の物。
そういう考えがあった。
だが、同時に今すぐは難しいという判断もしていた。
ただ参画を認めただけでは意味がない。
参画を許された女性側の意識の改革があってはじめてこの宣言が生きるのだ。
「それと、私はこれを機に国王の座を降りる。後は任せたぞ。マスクウェル」
「はい・・・」
いつかは訪れることだった。
マスクウェルの覚悟はとうの昔に決まっていた。
アンリは国王の座を降りるアッカバーンにあるお願いをすることにした。
「お父様。私から1つお願いがございます」
「私に出来ることなら聞こう」
「では、学び舎の長をお願いできませんか?」
「学び舎の長をこの老骨に?」
「はい。経験豊富なお父様の力がどうしても必要なんです」
アンリはそうお願いする。
「わかった。引き受けよう」
経験豊富なアッカバーンの知識の継承。
それだけでなく反発してくるであろう貴族への牽制の意味もあった。
元国王であるアッカバーンが長を務めるのだ。
馬鹿なことなどできないだろう。




