第九十三話
マスクウェルは悩んだ末、小規模の研究機関を立ち上げることにした。
王国の財政は苦しいがそれでも投資するだけの価値があると判断したからだ。
研究するにも物がなければ始まらない。
マスクウェルは付き合いのある商会に様々な植物を手配するように頼んだ。
中にはそのままでも商品価値の高い物もあるだろう。
逆に王国の環境では育たない物もあるかもしれない。
だが、失敗を恐れていては前に進めない。
挑戦することそのものに意味があった。
アンリは1つ心配ことがあった。
それは農地の不足だ。
様々な植物を育てるには現在の農地だけでは足りていない。
農民は常に開墾を続けている。
畑の面倒を見ながらではその速度はどうしても遅くなる。
それに開墾した土地に未知の物を植えるより確実に育つとわかっている作物を植えたいだろう。
農民にも生活があるのだ。
無理にやらせるわけにもいかなかった。
だが、ここで思わぬ人物が活躍した。
王国の軍派閥の長であるマルスである。
彼は兵士を引き連れ王国中を転々とし凄まじい速度で農地を開墾していった。
後に彼が語ったのは「小銭を稼ぎながら新兵を訓練するのに丁度良かった」である。
そんなわけで新しく開墾された土地には大陸中から集められた様々な農作物が植えられた。
成功した物もあれば失敗した物もある。
失敗した物についても諦めるのではなくマスクウェルが立ち上げた研究機関で栽培方法を模索し続けていた。
栽培された農作物は王国内で流通するのはもちろんのこと近隣諸国にも流通し王国の経済を大きく助けることになる。
この結果、王国は農業大国としての地位を確立することに成功した。
「国も豊かになりましたね」
アンリは隣にいるマスクウェルにそう言う。
「そうだな・・・。これも全てアンリのおかげだ」
「いえ。決断し判断をくだしたマスクウェル殿下の努力の賜物です。それに協力してくださった皆さんも・・・」
これはアンリとマスクウェルだけの成果ではない。
手配をしてくれた商会はもちろんのこと不平不満を持ちつつも受け入れてくれた農民。
それにここまで安定して育てられるのは治水に協力してくれた兵士に支援してくれた貴族。
それらが合わさっての結果だった。
この国はまだまだ発展していくだろう。
その姿をマスクウェルの隣で見続ける。
アンリは今の生活に満足していた。
「アンリ。私からアンリにお願いしたいことがある」
「何でしょうか?」
「私と結婚してくれ」
そうプロポーズしてくる。
付き人として隣にいる生活も悪くなかった。
だが、その言葉はアンリがずっと待ち望んでいた物でもある。
「はい。喜んで」
アンリはこの日、パートナーとして歩む決意を改めて固めた。




