第九十二話
アンリの提案した政策は問題はありつつも大きなトラブルはなく順調に成果をあげていた。
予想以上に多くの物書きが応募し文官達を支えてくれている。
治水の方も貴族達の協力もあり順調に進んでいた。
アンリ自身は養生を終え、マスクウェルの傍付きとして復帰し文官達と肩を並べ政務に関わっていた。
文官達もアンリの才が本物であると理解し多くの政務を任せている。
「アンリ。疲れていないか?」
マスクウェルはそう心配そうに聞いてくる。
「確かに大変ですが毎日が充実しています」
アンリはそう言ってマスクウェルに微笑む。
「そうか・・・。それならいい」
マスクウェル自身も多くの政務を抱えている。
アンリが負担することでその量は減っているがそれでも重責がその肩にかかっていることに違いはない。
貴族達は最初の頃はマスクウェルの想い人が誰かのか探りに来ていたが今ではその頻度は減っていた。
傍付きとして常に共にいるアンリがその相手だとは誰も気がついていない。
文官達の中には2人の空気を見てわかっている者もいるようだが黙ってくれている。
いつまでこの関係が続けられるかはわからない。
だが、アンリとしては長いことこうして共に過ごせることを願っていた。
農作物も探していた物が見つかりつつある。
だが、アンリが失念していたことがあった。
地球の農作物は長い年月をかけて品種改良されてきた経緯がある。
その為、見つかった物の中ではこのままでは食用に適さない物が含まれていた。
アンリはどうすれば食べられるのかを必死に考える。
せっかく、探し出してくれたのだ。
このまま無駄にするにはもったいなかった。
「アンリ。難しい顔をしてどうした?」
「せっかく探してもらったのに食べられないのがもったいなくて・・・」
「そうか・・・」
マスクウェルは共に考えてくれる。
そして1つの答えを導き出した。
「そういえば、山の中では時折、実らない物が実ることがあったな」
「そうなんですか?」
「条件はわかっていないがヒントになるかもしれない」
「そうですね・・・。調べてみる価値がありそうです」
この日からマスクウェルとアンリは必死に文献を探しその条件を探る。
そして1つの結論に達した。
「そうか・・・。植物と植物をかけ合わせれば・・・」
「そうだな・・・。途方もない試行錯誤が必要だが・・・」
「マスクウェル殿下。専門の研究機関を作りましょう」
アンリは強くそう進言する。
時間はかかるかもしれない。
だが、成功すれば莫大な利益を王国に運んでくる可能性があった。




