第九十一話
会議も終わり気が緩んだところで会議室の扉が開かれる。
まるでタイミングを図っていたようだ。
扉から入ってきたのは国王であるアッカバーンだった。
「皆がきていると聞いてな。すまないがお邪魔させてもらった」
そう言って上座に歩いてくる。
マスクウェルは自分が座っていた席を譲ると後ろに下がった。
アッカバーンは席に座ってから貴族達の顔を確かめる。
「これより簡易ではあるが功績を称え褒美を取らすものとする」
先の戦争での功績やこれまでの実績を称えアッカバーンは陞爵や褒美を与える。
その中にはアンリの父であるアグニも含まれていた。
アグニは伯爵に陞爵されこれでマスクウェルとアンリの結婚に障害がなくなった。
後はタイミングだけだがマスクウェルはまだアンリとの仲を公表するつもりはなかった。
アッカバーンもマスクウェルに考えがあると思っているのだろう。
そこには触れてこなかった。
「これからも王国の発展の為に尽くしてくれることを願う」
アッカバーンはそう締めくくり退室する。
マスクウェルもそれに続き退室する。
先に出て行ったアッカバーンは自然と歩調を緩めマスクウェルと並んで歩く。
「中々、思い切ったことをしたな」
これは文官の募集の件と治水のことを言っているのだろう。
「私の功績ではありませんが国の為になると思いましたので」
「そうか・・・。だが、これで実績は十分だな」
これだけでアッカバーンは誰がこの案を出したのか理解したのだろう。
「実はもう1つ考えていることがあります」
「廊下で話す内容でもあるまい?私の部屋で聞こう」
マスクウェルは誘われるままアッカバーンの執務室にやってきた。
そして、アンリの提案した学問を教える構想を話して伝えた。
「利にかなっているな。できるなら今すぐ実行したいところだが・・・」
「タイミングは私に考えがあります」
「ふむ・・・。ならばお主に任せるとしよう」
そう言って静かに目を閉じる。
こうして改めてみると昔は大きいと感じた父であるアッカバーンが小さく感じる。
自分が成長したのかアッカバーンが衰えたのか・・・。
マスクウェルはまだまだ学ぶことも多いと感じているが世代交代の時期はそう遠くはない。
そう実感してしまった。
在位中も様々な困難が多かったはずだ。
それを考えれば老後をゆっくり過ごしてもらいたい。
自分に出来ることはこの国を豊かにし繁栄させることだ。
本当にそれが自分に出来るのか正直なところ不安だ。
マスクウェルは深呼吸し気持ちを落ち着かせる。
1国を背負うのはこれほど重いことなのかと改めて考えさせられた。




