第九十話
マスクウェルは全員が集まったのを確認して静かに口を開いた。
「呼び出してすまないな。だが、この国の将来に関わる問題だ。是非とも皆に協力してもらいたい」
そう言って治水に関する説明を行う。
だが、予想されていたことではあるが実施が遅れる貴族からは不満の声が聞こえてくる。
「不満があるのはわかるが待ってもらえないだろうか?」
「いずれ実施されるのだろう?全てを同時に行えない以上は仕方ないだろう」
そう言った援護の声も上がるが顔を見れば納得できていないのがわかる。
「ほっほっ。ならば私が支援しよう」
そう言ったのはローゼンブルク侯爵家の当主であるホークだった。
ローゼンブルク侯爵家の財政状況は王国内でもトップクラスだ。
その支援を受けられるならば計画をかなり前倒しにできるだろう。
だが、声をあげたのはホークだけではなかった。
古くより王家を支える貴族達が揃って支援を申し出る。
「本当に良いのか?」
マスクウェルは支援を申し出た貴族達に確認する。
「王家が困っているのに見捨てるほど我々の忠誠は低くありません」
「そうです。それにこれは我々にも利益のあることです」
「すまない・・・。協力に感謝する」
マスクウェルは忠臣達に改めて感謝する。
これで、かなりの地域を同時に開発することができる。
この忠臣達に影響されたのかお金は出せないが労働力として兵士を派遣するとの約束も取り付けた。
お金も人材の問題も解決した今、後は計画を実行するだけだ。
「王太子殿下・・・」
ホークはそう切り出してくる。
「何だ?」
「そろそろ嫁を取るつもりはありませんか?」
ホークは内情を把握しているはずだがそう言ってくる。
「言っておくがリーシャと結婚するつもりはないぞ?」
当然リーシャの気持ちには気がついている。
だが、古からの習わしでリーシャと結婚はできなかった。
それはホークも知っているだろう。
「それは、他に好いている娘がいると思っても構いませんかな?」
マスクウェルは覚悟を決める。
「そう思ってもらって構わない」
マスクウェルのその言葉に貴族達がざわつく。
「女嫌いの王太子殿下にそんな娘が?」
「一体どこの誰なんだ・・・」
ホークは静まった時に告げる。
「ならば結構。これで後継者問題も解決ですな」
マスクウェルは内心、この古狸と悪態をつく。
だが、その狙いもわかっていた。
貴族達の多くはあわよくば自分の娘をと考えている。
だが、肝心のマスクウェルが既に相手を決めているとわかれば無駄な行動は起こさないだろう。
今後、色々探りを入れられるだろうがそれぐらいは我慢するしかないだろう。




