第八十六話
マスクウェルは政務の途中で国王であるアッカバーンに呼び出された。
「国王陛下。お呼びですか?」
「あぁ。忙しい中すまないな」
「いえ・・・」
「アンリ嬢はどうしている?」
「部屋で仕事をしております」
「そうか・・・」
「アンリの案を私の指示ということで人を動かしております」
「そこはお主を信用しておる。王太子として必要であると思うなら何でもするといい」
「ありがとうございます。それで呼び出したのはそれだけではありませんよね?」
アッカバーンの前には1つの木箱が置いてあった。
サイズ的にそれが何か何となくわかってしまったが確認せざるを得ない。
「その箱は・・・」
「先ほど隣国から届いた」
「そうですか・・・。失礼ながら確認いたします」
マスクウェルはそう言って木箱を開ける。
そこに入っていたのは隣国に逃げたはずのアッサムの首だった。
隣国がこれを送りつけてきた意図を考える。
「これで手打ちですか?」
「そういうことだろうな・・・」
アッカバーンからすれば実の弟だ。
複雑な思いがあるのだろう。
だが、その感情を顔には出さない。
「これで1つ問題が片付いたことになる」
「そうですね・・・」
隣国がどのように動くかわからないのが不安材料の1つだった。
だが、アッサムの首をこうして送り付けてきたということは争うつもりはない。
そういう意味があるのだろう。
「では、本格的に内部の立て直しですね」
「そうだな・・・。すまないが近々、文官の採用試験の監督を頼めるか?」
「わかりました。このままでは破綻は見えていますからね。才のありそうな者の補充は必要です。ですが、私でよろしいのですか?」
「これからはお主の時代だ。今後のことを考えればお主が主動した方が良いだろう」
「わかりました。それでは失礼いたします」
隣国の件は片付いたが安心もしていられない。
平民に文字を読み書きしたり計算をできる者は少ない。
突破できる知識層は限られている。
そして、採用してもスパイの可能性もある。
その運用には慎重になる必要があった。
「はぁ・・・。頭の痛い問題だが・・・」
アンリならこの問題をどのように解決するのだろうか。
今すぐには無理だが聞いてみたらいい案があるかもしれない。
マスクウェルとしても叔父の件を引きずっていないわけではないがそれでも前に進むしかない。
気持ちを切り替えて執務室に戻り精力的に政務をこなし様々な案件を裁いていった。
その仕事量は文官達が心配する量ではあったが、アンリとの時間を確保する為でもある。
政務が終わるころには疲労で少しふらついていたがアンリの待つ部屋へ帰っていった。




