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TS男装令嬢は王太子の傍付きを拝命する。  作者: 髙龍


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第八十五話

マスクウェルは朝食の後、アンリに見送られて政務に向かった。


移動しながら考える。


アンリを今後どのように守っていくべきか。


恋人として大切に思う気持ちに変わりはない。


だが、アンリの価値はこの国にとって欠かせないものになりつつある。


このまま安全を確保する為に部屋に閉じ込める。


そういう選択肢があるのも事実だ。


だが、アンリには自由に動き回ってもらいたい。


それに傍付きとなっている以上、自分の近くで仕事をするのが普通だ。


だが、それをすれば秘密が露見するリスクが高まる。


非情に悩ましい問題だった。


「しばらくはこのままで・・・」


マスクウェルはそう結論付ける。


病気養生ということになっているのでまだ、しばらくは時間が稼げるはずだ。


マスクウェルは気持ちを切り替えて自分の執務室に入る。


そこには既に仕事を始めている文官達がいた。


「おはようございます。王太子殿下」


「おはよう。ゆっくり休めたか?」


マスクウェルはそう声をかける。


「はい。久々にぐっすり眠らせていただきました」


それを聞いてマスクウェルは自分の判断が間違っていなかったことを確信する。


感情に任せ昨夜、指示を出していれば真面目過ぎるこの文官達は夜を徹して手配していただろう。


「すまないが、いくつか仕事を頼む」


「何でしょうか?」


マスクウェルは昨日、アンリが提案した内容を文官達に説明する。


「意味のあることなのですよね?」


文官はそう確認してくる。


文官達も農業の専門家というわけではない。


だが、これが農民達に受け入れられにくい内容であるとわかったのだろう。


「今は私を信じてくれないか?」


「そうですね・・・。王太子殿下は決して無駄なことをしない方でした」


そう言って納得してくれる。


「私は担当の者と話してきます」


「すまないな。説得が難しいようなら私が出向く」


「ありがとうございます。ですが、王太子殿下が出向かなくても良いようにするのが私の仕事です」


そこには文官としてのプライドがあるように見えた。


これなら任せても大丈夫だろう。


「お任せください」


そう言って文官は部屋を出て行った。


「私は部下に恵まれている・・・」


思わずそう言葉が漏れる。


「それは王太子殿下が今まで頑張ってきた結果です。我々は全てを見てきました」


部屋に残った文官達の顔を見る。


そこには今まで築いてきた信頼という名の絆で結ばれているようだった。


彼らがいるならこの国はまだ大丈夫。


そう思わせてくれるありがたみがあった。

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