第八十一話
マスクウェルはアンリの案を実行する為に国王であるアッカバーンの部屋を訪れた。
「国王陛下。ご相談があります」
「何だ?」
「文官不足を補う方法があります」
「そんな方法が?」
「はい。商会から文字の読み書きと計算できる者を借りてはどうかと・・・」
「商会からか・・・。確かに補えるかもしれないが・・・」
アッカバーンはそう言って難しい顔をする。
「外部に漏らせぬ情報もある。その辺をどう考えている?」
「守秘契約を結んだ上、最初は重要でない物を任せる予定です」
「そうか・・・。だが、商会としても貴重な人材だ。借りられるのか?」
「最初は我が王家と関係のある商会に声をかけるつもりです。その上で絶対に引き抜かないと誓約書を交わします」
「そうか・・・。そこまで考えているのなら止めはせぬ。だが、お主の発想ではあるまい?」
「そうですね・・・。アンリが提案してくれました」
「アンリ嬢がか・・・。得難い資質だな」
「そうですね。男であれば宰相にまで登り詰めたかもしれません」
「しばらくは性別を偽って傍付きのままだったな・・・。他にも案があるようなら積極的に採用するように」
「それは構いませんが何か考えがあるのですか?」
「アンリ嬢には悪いがこの国の改革に付き合ってもらう」
「それは・・・」
マスクウェルは言葉に詰まる。
「女性でも優秀な者はいる。それをアンリ嬢に証明してもらいたい」
マスクウェルはアッカバーンが何を考えているのか理解した。
「貴族を廃するだけでも反発があれだけ起こったのですよ?危険すぎませんか?」
「それはわかっている。だが、ここまで治世が乱れたのだ。儂の治世は長くない」
アッカバーンは疲れたようにそう言う。
事実、アッカバーンは事態が落ち着いたら引退するしかないだろう。
マスクウェルとしてはまだまだ学びたい事が沢山あった。
「男尊女卑の意識を改善する。これを最後の仕事とする」
アッカバーンはそう宣言した。
「わかりました・・・」
ここまで覚悟が決まっているのだ。
マスクウェルには最早止める手段はない。
「では、私は商会に掛け合ってきます」
「そちらは任せる」
「失礼いたします」
マスクウェルもアッカバーンもそれぞれ大量の仕事を抱えている。
無駄にできる時間は存在していなかった。
マスクウェルはこれからアンリに降りかかるであろう困難に心配になる。
アッカバーンが引退すれば自分はアンリとの時間をあまり取れないかもしれない。
出来る限りサポートするつもりではいるがそれでも限界があるだろう。
リーシャが裏で色々動いているの知っているが自分でも打てる手がないか必死に考えていた。




