第七十九話
アンリは扉の開く音で目が覚める。
周囲はまだ暗く深夜だろう時間帯だ。
アンリの部屋の前にはマスクウェルが手配した護衛が待機しているのでこの部屋に入れる者は限られていた。
ベットから起き上がり来訪者を確認すると相手はマスクウェルだった。
アンリは会いたかった相手の来訪に喜びベットから飛び出した。
「マスクウェル殿下」
アンリはそう言ってマスクウェルに抱きついた。
「すまない。寝ているところを起こしてしまったな」
「いえ。こうして会えて私は嬉しいです」
アンリは下からマスクウェルを見上げる。
そこで、マスクウェルの顔色が悪いことに気がついた。
「マスクウェル殿下。ちゃんと休まれていますか?」
「いや・・・。しなければいけないことが多すぎてな・・・」
「立場はわかりますし重要なことだというのもわかっています。ですが、マスクウェル殿下が倒れられては本当にこの国は路頭に迷ってしまいますよ?」
「そうだな・・・。すまないが少しだけ休ませてもらおう」
「はい」
アンリはマスクウェルと共にベットに移動する。
アンリはベットに座り膝をぽんぽんと叩く。
「これは・・・?」
「膝枕という奴です。お嫌でしたか?」
「そうか・・・。せっかくだしお邪魔するとしよう」
そう言ってマスクウェルはアンリの膝の上に頭を乗せる。
アンリはマスクウェルの頭を優しく撫でる。
最初は緊張していたようだがマスクウェルはすぐに穏やかな顔となりすやすやと眠りはじめた。
まともに休息を取れないぐらい追い詰められていたのだろう。
アンリ達も頑張っていたがマスクウェルはそれ以上に働きその重責を果たしていた。
それを考えればこうして一時の休息を与えるぐらいはいいはずだ。
だが、アンリも疲れていることに違いはない。
マスクウェルを膝枕したままうつらうつらし、そしてそのまま寝てしまった。
日の光を感じてアンリは目を覚ます。
するともう起きていたマスクウェルと目が合った。
「おはようございます」
「おはよう」
マスクウェルはアンリが起きたのを確認して身をおこす。
だが、アンリには1つ問題があった。
足が痺れ感覚がない。
「アンリ。どうした?」
「足が痺れて動けません」
普通に考えればこうなることは必然だった。
だが、少しでも安らぎを与えたいと思ったアンリはそのことに思い至らなかった。
「その・・・。すまない・・・」
マスクウェルはそう謝罪してくる。
「いえ。私が望んだことですから」
結局、アンリが動けるようになったのはかなりの時間が経ってからだった。




