第七十七話
アッサムは王城から逃げ出すと影響力のある貴族の屋敷に逃げ込んだ。
「アッサム様・・・?」
「作戦は失敗だ。次の手を打たなければ」
「そうですか・・・。状況はよくありません。ここは隣国に逃げられては?」
「そうだな・・・。国内の勢力はほぼ潰された。隣国の力を借りるべきか」
「すぐに馬車を用意いたします」
貴族はそう言うと本当にすぐに馬車を用意してみせた。
「お前はどうする?」
「無事に逃げられるよう時間稼ぎいたします」
「そうか。すまない・・・」
アッサムはそう言ってあっさりと貴族を切り捨てる。
アッサムにとって自分の派閥の貴族はコマでしかなかった。
アッサムが逃げてそう時間も経たずマスクウェルが手勢を引き連れて貴族の屋敷を訪れる。
「アッサムはどこだ?」
「王太子殿下。私がそれを言うとでも?」
「言わぬなら吐かせるまでだ」
貴族は言動とは違い抵抗はしなかった。
「やけに素直だな?」
「この状況では勝てませんからね」
アッサムの口車に乗っていたわりには冷静に物事を判断できるだけの頭があるようだ。
だからこそ、粛清の嵐を乗り越えられたのだろう。
「王太子殿下に1つお聞きしたい」
「何だ?」
「貴方は王位を継いだ後、この国をどのような国にしたいですか?」
「その質問に今、答える必要はあるのか?」
「えぇ。私にとっては大事な質問ですので」
「民が笑って暮らせる国にしたい」
「そうですか・・・。貴方にとって民が一番なのですね」
そう言って捕まえた貴族は暗い笑顔を浮かべる。
「不満そうだな?」
「私は貴族ですからね。貴族が優遇されないのならそれは私にとっては何の価値もない」
「それがアッサムに与した理由か?」
「そうですよ。あの方は約束してくださった。貴族にとって住みやすい国を作ると」
「馬鹿げているな。統治に貴族の力は必要だ。だが、絶対ではない」
マスクウェルはそう断言する。
事実として現在、王国では貴族だけの登用を見直す動きが出ている。
平民の登用も行っていた。
能力を見て判断し役職を任せる。
その結果、国の底力が確実に底上げされていた。
アッカバーンもマスクウェルも国を良くしようと動いてきた。
だが、これは変革期に訪れる必然だったのかもしれない。
それを考えればこういった芽を育ててしまったアッカバーンとマスクウェルの失策だったのだろう。
「お前の考えはわかった。連れていけ」
マスクウェルはそう部下に命じる。
これからこの貴族は厳しい取り調べを受けることになるだろう。
情報を引き出せても厄介な事態になりそうだった。




