第七十一話
「マスクウェル殿下。お帰りなさい」
アンリはそう言ってマスクウェルを出迎える。
「ただいま。今日はアンリとリーシャに頼みがあるんだ」
そう言ってマスクウェルは頭を下げる。
「頼みですか?」
「あぁ。まずはアンリにこれを読んでもらう」
そう言ってマスクウェルはアンリに持っていた文書を渡す。
アンリはそれに目を通す。
「これは物価に関する物ですか?」
「そうだが・・・。理解できているのか?」
「はい」
数学的な部分は前世の知識を。
文字自体はリーシャに習っていたので読むことは可能だった。
「驚いたな。理解できるとは思っていなかった」
この世界では通貨が流通している。
だが、民間では何がいくらかといった程度の数字しか扱わない。
数学的な考え方をするのは商会か政を司る文官と貴族ぐらいだ。
「アンリ様は呑み込みが良いですから」
そう言ってリーシャが胸を張る。
「リーシャが教えてくれたおかげよ」
アンリはそうリーシャにお礼を言う。
「アンリとリーシャには政務を手伝ってもらいたい」
「政務をですか?」
「あぁ・・・。文官の数が足りていなくてな。今は少しでも人手がほしい」
「私でもお役に立てるなら・・・」
アンリはそう即答する。
「リーシャはどうだ?」
「本当に関わってもよろしいのですか?」
リーシャはマスクウェルにそう確認する。
「本気でリーシャが調べようと思ったら知れる程度の内容だ。問題ない」
「わかりました。では、アンリ様と共にお手伝いさせていただきます」
「政務は明日からだ。2人共、よろしく頼む」
「はい」
改めてマスクウェルは2人に頭を下げる。
無理を言っているのはわかっている。
だが、それでも今は2人の手伝いが必要だった。
「マスクウェル殿下。明日からの仕事の為に勉強がしたいです」
アンリはマスクウェルにそうお願いをする。
「構わないが・・・。そうだな。少し待っていてくれ」
マスクウェルはそう言うと1度、部屋を出て書類の束を持って戻ってくる。
「この書類は読めるか?」
マスクウェルはそう言ってアンリに書類を手渡す。
アンリは真剣にその書類に目を通す。
「使いまわしの一部がわからないですね」
アンリは素直にそう答える。
「ふむ・・・。確かに独特だからな。だが、コツさえつかめば簡単だ」
マスクウェルはそう言って1つ1つコツをアンリに教えていく。
そのおかげで大体の意味が理解できるようになっていた。
「アンリは凄いな・・・」
マスクウェルは素直にそう感嘆する。
自分でも文字を習い始めた頃は苦戦していた。
それをこの短時間で習得するアンリの才能は本物だった。




