第六十五話
アンリは肌寒さを感じて目を覚ます。
隣を見ればマスクウェルがじっとこちらを見ていた。
「マスクウェル殿下・・・。おはようございます」
「アンリ。おはよう」
体はまだ動かせないがそれでもアンリの心は軽くなっていた。
それは隣にいる愛しい人のおかげだろう。
「無理をさせてすまないな」
マスクウェルはそう言って謝ってくる。
「いえ。私も嬉しかったですから」
そこに闖入者が現れる。
「王太子殿下。アンリ様。おはようございます」
そう言って部屋に入ってきたのリーシャだった。
「リーシャ・・・?」
「昨日はお楽しみいただけたようでなりよりです」
そう言って何やらシーツを確認する。
シーツは2人の行動の結果、汚れていた。
アンリは恥ずかしさから顔から火が出そうになる。
「これも職務ですので」
リーシャはそう言って涼しい顔だ。
マスクウェルは思い出したように呟く。
「そういえばそうだったな」
「マスクウェル殿下。どういうことですか?」
「王侯貴族にはちゃんと出来たか確認する風習があるんだ」
「そんな風習が?」
「これでもマシになったんだ・・・。昔は使用人が直接確認していたからな」
その状況を思い浮かべアンリは絶句する。
見られながらするとか嫌すぎる。
「王太子殿下。国王陛下より伝言です」
「何だ?」
「アンリ様の扱いは王太子殿下に一任するとのことです」
そこでアンリは自分のことを考える。
マスクウェルと関係を結んだことで今までと同じではいられないだろう。
「そうか・・・」
マスクウェルはそう言って何やら考えに耽る。
「王太子殿下。僭越ながら申し上げます。アンリ様が女性だと知っている者はごくわずかです。このまま傍付きのままでもいいかと」
「それも悪くないな」
「どういうことです?」
「王太子妃となれば会う機会は減るが傍付きのままなら仕事中も一緒にいられる」
「いいんですか?」
「構わぬだろ。私が理性を抑えるのが大変だがな」
そう言ってマスクウェルは笑いかけてくる。
「何はともあれアンリ様はまず、体調を整えることからですね」
「そうね・・・。満足に体を動かせないのは不便だもの」
薬の影響はまだ完全には抜けきっていない。
だが、寝てばかりでは体力が落ちてしまう。
そろそろ本格的にリハビリをはじめてもいいだろう。
「私は仕事がある。時間が出来れば様子を見にくる」
「はい。お仕事頑張ってくださいね」
アンリはマスクウェルを見送りリーシャを見る。
「リーシャは手伝ってくれるのよね?」
「当然です。しばらくは部屋の中だけですが体力が戻ったら中庭なども散歩にいきましょう」
アンリはリーシャに手伝ってもらってまずは立ち上がることからはじめた。




