第六十六話
マスクウェルは政務を行う前に国王であるアッカバーンの元に向かった。
「国王陛下。私的な事情で時間を使い申し訳ありません」
「構わぬ。とはいえ、やってもらいたいことは山のようにあるがな」
アッカバーンの告げた通り、仕事は山のように溜まっていた。
どの案件もアッカバーンかマスクウェルしか采配できぬ物ばかりだ。
これではアンリの元にいつ戻れるかわからなかった。
だが、弱音を吐くわけにもいかない。
この国難を乗り越えなければアンリとの未来も閉ざさてしまうのだから。
隣国の首脳部では意見が割れていた。
このまま王国に攻め込むべきという派閥と策が失敗したことにより慎重論を唱える派閥だ。
国境は完全に立て直されており、仕込んでいた手も潰されている。
全面戦争を仕掛けられるのはリスクがでかい。
その理由は王国以外にも友好的でない国を抱えているからだ。
隙を見せればそれらの国が戦を仕掛けてくるかもしれない。
隣国の国王は決断する。
「今回はここまでだ。時間をかけた策が通じなかったのは残念だが次の機会もあろう」
野心に燃えるこの国王はまだ諦めていなかった。
だが、それは今ではない。
こうして王国にとっては一時の平穏が訪れることになる。
マルスは隣国に潜ませていた密偵から隣国の動きを聞いていた。
「そうか・・・。まだ油断は出来ぬが一安心というところか」
集められていた軍は解散された。
隣国が攻めてくるという最悪の事態は回避されたとみていい。
「すまぬが引き続き監視は頼むぞ」
「はい」
密偵は再び隣国にて情報収集をする為に隣国に忍び込んでいった。
「すまぬが、王都に伝令を頼む」
「ただちに」
部下はそう言って馬に乗り駆けていく。
マルスの掴んだ情報は最速で王都に届けられた。
「そうか・・・。これで全て元通りというわけにはいかぬが少しはゆっくりできるな」
王国の立て直しは急ピッチで進んでいる。
アッカバーンもマスクウェルも采配の為に大忙しだ。
マスクウェルは仕事が忙しすぎてアンリの元に戻れていなかった。
見かねたアッカバーンが口を出す。
「手を抜くわけにはいかぬが余裕はできた。アンリ嬢に顔を見せてくるといい」
「しかし・・・」
「いいから行ってきなさい」
アッカバーンは重ねて言う。
「国王陛下。感謝いたします」
マスクウェルはアッカバーンに礼を言うと退室していった。
「ああいった手前もう少し頑張るとするか」
アッカバーンはそう言って仕事に戻る。
マスクウェルのあの表情を見てしまえば無理をする意味もあるというものだ。




