第六十三話
「アンリ。今日は特別な治療をしましょう」
「特別な治療?」
「その準備の為にまずはお風呂ね」
リーシャはそう言ってアンリを浴室に連れていく。
まともに体の動かせないアンリは大人しくリーシャに体を洗われる。
薬と治療の後遺症で体を洗われるだけで大変だった。
体を洗い終わりリーシャに手伝ってもらって服を着る。
だが、その服はふんだんにフリルがあしらわれ女性であることを強調していた。
アンリは鏡に映った自分を見る。
この姿を男が見たなら誘っていると思われても仕方ないほどだ。
部屋に戻るとベットは綺麗に整えられていた。
「アンリはそのまま寝てて。私は出かけてくるから」
リーシャはそう言って部屋を出て行ってしまった。
アンリは薬の後遺症に耐えながらリーシャが戻ってくるのを待つ。
だが、半日ほど経ってもリーシャは戻ってこなかった。
扉が開く音がする。
最初はリーシャが戻ってきたのだと思って気にしていなかった。
だが、いつまで経っても相手は動かない。
アンリは何とか頭を持ち上げて相手を確認する。
そこに立っていたのはマスクウェルだった。
目と目があい、お互いに硬直する。
「マスクウェル・・・。殿下・・・?」
言葉を発してからアンリは気がつく。
今の格好はアンリが女だと主張している。
アンリは血の気が引いていく。
マスクウェルに女だとばれた。
女嫌いのマスクウェルにとってこれは最大の裏切りだ。
だが、マスクウェルの反応は違っていた。
「アンリ・・・」
マスクウェルはそう言って近づいてくる。
「見ないで・・・」
アンリは動かぬ体で必死に身体を隠す。
「アンリ・・・」
マスクウェルはそのまま抱き着いてくる。
「マスクウェル殿下・・・」
「どうしたアンリ?」
そう優しく問いかけてくる。
「私はマスクウェル殿下のことを騙していたんですよ?」
「そのことか。最初からアンリが女だと知っていた」
「なっ・・・?」
あまりの衝撃にアンリは頭を殴られたような衝撃を受ける。
「マスクウェル殿下は女嫌いだって・・・」
「確かに女は嫌いだがアンリは別だ」
そう言って唇を奪われる。
「殿・・・。下・・・」
「アンリ・・・。私はアンリのことが好きだ」
マスクウェルはそう愛を囁いてくる。
アンリにはその愛の囁きが甘美に響いていた。
「私もマスクウェル殿下のことが・・・」
アンリは恥ずかしくて好きという言葉が言えなかった。
「アンリ。いいな?」
マスクウェルはそう確認してくる。
「はい・・・」
アンリに断るという選択肢は存在していなかった。
この日2人は結ばれた。




