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TS男装令嬢は王太子の傍付きを拝命する。  作者: 髙龍


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第五十三話

リーシャはアンリの状態を見ながら治療行為を続ける。


強制的に与えられる刺激はもはや暴力に等しい。


だが、どんな手段を使ってでも今は薬を少しでも体の外に排出する必要がある。


「アンリ・・・。ごめんね・・・」


リーシャは治療を続けつつアンリに謝り続ける。


その謝罪の意味は複数ある。


自分が軽い気持ちで送り出したが為に事件に巻き込まれたこと。


もし、自分が送りださなければアンリが巻き込まれこのような状態にはならなかっただろう。


リーシャはマスクウェルのことが好きだ。


だが、自分がマスクウェルに受け入れられることはないと理解していた。


その理由はいくつかあるがローゼンブルク侯爵家の娘というのが一番大きい。


古からの習わしで王国内で力を持つ貴族のいくつかは王族との婚姻に制限を受けていた。


それは、もし婚姻すれば強すぎる力により王家を乗っ取ることも不可能ではないからだ。


自分が望んでも手に入らない者を手に入れられるアンリに嫉妬しなかったかと言えば嘘になる。


だが、それでもマスクウェルの幸せを願って2人の関係を応援すると決めていた。


最終的に受け入れるかはマスクウェル次第だったが、あの様子を見れば断ることなどありえないだろう。


ならば、自分のすべきことはアンリを救うことだけだ。





アッカバーンは報告を受け、王都内にいる火急の仕事を受け持つ貴族以外を全員招集していた。


「国王陛下。このような時間にどうしたのです?」


集まった多くの貴族が不安そうな顔をしている。


アッカバーンは黙して何も語らない。


今、アッカバーンがすべきことは貴族の動きを封じることだったからだ。


新設した警邏部隊が捕縛した男達の拠点から証拠を集め、分析している。


必ず貴族の誰かが協力者として力を貸しているはずだ。


自由に動ければ証拠を隠滅し罰することが難しくなるだろう。


それにマスクウェルの心中を考えれば今回の件はマスクウェルに任せるべきだ。


次代の王として今回の事件は大きな意味を持つ。


今までも政務の多くをマスクウェルに任せてきた。


だが、危険なことはなるべくアッカバーンが対処してきた。


今回の件をうまく対処できるならそろそろ玉座を譲ってもいいのかもしれない。


その為にもアンリには無事に回復してもらいたい。


マスクウェルが受け入れるとしたらアンリ以外ありえぬのだから。


今のマスクウェルに欠けているのは王族としての最も重要な責務である次代の子を共に作るパートナーなのだから。

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