第五十一話
騎士たちはアンリが離れたのを確認し犯人達をあっという間に制圧する。
マスクウェルは真っ先にアンリの元に向かった。
「アンリ。しっかりしろ」
だが、アンリの意識は戻らない。
「貴様。アンリに何をした?」
「くっくっくっ。もう手遅れかもな」
そう言って男は吐き捨てる。
「何だと?」
「こいつには禁制の媚薬を飲ませた」
マスクウェルは怒りで震える。
王族という立場からその禁制の媚薬については詳しかった。
多くの者を廃人にした忌避すべき薬だった。
「貴様・・・。楽に死ねると思うなよ?」
「お前は騙されていたのにその娘を庇うのだな」
「お前に語るべきことは何もない。連れていけ」
マスクウェルは騎士に命令する。
騎士は即座に反応し男を捕縛して連れて行った。
全てが終わった頃、男達が出てきた扉から数人の兵士が飛び出してくる。
「王太子殿下・・・?」
「ふむ・・・。都合よく鼠が飛び出してきたと思ったらそういうことか」
マスクウェルは何故、男達が逃げ出そうとしたのか全てを理解した。
「アグニ卿はいるか?」
「副隊長はまだ内部です」
「すまないがすぐに呼んできてくれ」
「かしこまりました」
兵士は即座に戻りアグニを連れて戻ってくる。
「王太子殿下。まさか、自ら動かれるとは・・・」
「こちらにも動かねばならぬ理由があった」
「何かあったのですか?」
「アンリが攫われたのでな」
「アンリが・・・?」
「こちらの落ち度だ。許せ」
マスクウェルはそう言って頭を下げる。
「王太子殿下。頭をお上げください」
「だが・・・」
マスクウェルはそう言って意識のないアンリに視線を向ける。
「アンリ・・・」
アグニは状況を見て何かをすぐに察した。
「最善は尽くす。だが、最悪も考えておいてくれ」
「はい・・・。ですが、怒らないのですね」
マスクウェルは女嫌いだ。
今のアンリは服が乱れ女性だと理解しているはずだ。
「最初から知っていたからな」
「知っていた・・・?」
「どこもかしこも男とは違っていた。黙っていたのは都合がよかったからだ」
マスクウェルはアンリが女性だと知っていて傍に置いていたのだ。
過剰なスキンシップもどこまでアンリに覚悟があるのか試す目的もあった。
「そうですか・・・。ですが、騙していたのは事実です。処分は如何様にも」
「国王陛下達も絡んでいるのだろう?ならば、お主を罰することなでできぬさ」
「王太子殿下・・・。アンリをよろしく頼みます」
アグニはそれだけ言うと一礼してから建物に戻っていった。




