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TS男装令嬢は王太子の傍付きを拝命する。  作者: 髙龍


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第五十話

男の手がアンリに伸びてくる。


アンリは自由に動かぬ体を必死に動かして少しでも時間を稼ごうとする。


「この状況でまだ抵抗するのか?面白い」


そう言って男はニタニタと笑う。


男は抵抗を楽しむようにアンリを追い詰める。


だが、その抵抗が功を奏したのだろう。


部屋の扉が荒々しく開かれる。


「旦那。まずいですぜ」


「っち。これからって時に・・・。何があった?」


「警邏部隊のがさ入れです。ここに到達されるのも時間の問題かと」


「そうか・・・。チンピラ共を投入して時間を稼げ」


「旦那はどうします?」


「俺は逃げる。こんな場所で捕まるわけにはいかないからな」


「わかりやした。この娘はどうします?」


「連れていく。何かの役に立つかもしれないからな」


「時間がありません。急ぎやしょう」


アンリは男の部下に乱暴に抱えられる。


その際に衣服が乱れてしまったが男達が気にしている様子はない。


「こっちです」


男達は狭い通路を進んでいく。


どうやら逃げ道としてあらかじめ用意してあったのだろう。


かなりの時間が経った頃、男達が階段を上る。


そして扉を開くと人通りのない道に出る。


「これからどうしやす?」


「拠点はまだある。とりあえずはそこに逃げ込むぞ」


男がそう指示を出すがそれは叶わなかった。


いつ、そこに現れたのかわからないが周囲を囲む者達がいたからだ。


「っち。時間がないっていうのに」


「旦那。血路は開きやす」


そう言って男の部下が突撃するが囲んでいる者達の方が腕が上だった。


あっという間に男の部下は叩きのめされる。


「お前らは何者だ?」


男はそう聞くが誰も何も答えない。


周囲を囲んでいる者達の正体はリーシャのお抱えの精鋭部隊だった。


残っていた男の部下が男を守るように布陣する。


そこに馬に乗り駆けつけてくる者達がいた。


駆けつけてきた者達はマスクウェルの率いる騎士団だった。


マスクウェル達が到着したのを確認しリーシャお抱えの精鋭部隊はすっと姿を消す。


「騎士団の到着か・・・。だが、まだ手がないわけではない」


男はまだ諦めていないようだった。


「娘を寄こせ」


男はそう言ってアンリを人質に取るように短刀を首に向けてくる。


「無駄な抵抗はよせ」


そう宣言したのはマスクウェルだった。


アンリは足手まといにならないように最後の抵抗として男の腕を思いっきり噛みつく。


「ぐっ・・・」


男はたまらずアンリを手放す。


そこを見逃すマスクウェルではなかった。


訓練された騎士達は即座に対応する。


アンリの意識があったのはそこまでだった。

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