第四十九話
アンリは縛られズタ袋を被せられ乱暴に運ばれる。
かなりの距離を移動し扉が開く音がする。
攫った者達の拠点についたのだろう。
だが、建物に入っても解放はされず、どこかに運ばれる。
そして10分ほどして地面に降ろされた。
「旦那。標的を捕まえました」
「そいつは男だろ?ずいぶん、丁寧に扱うな」
「いえ。俺達も最初は男だと思ってたんですが・・・」
「どういうことだ?」
「捕まえた時に気がついたのですがこいつは女です」
「女?王太子の傍付きが女だと?」
「はい。格好は男でしたが確実に女です」
「なるほどな・・・。だが、女ならば色々と利用価値がある」
「旦那。楽しむのはいいですが俺達にもわけてくださいよ」
「それは面を見てからだ。袋を外せ」
「わかりやした」
アンリはズタ袋から解放される。
室内は薄暗く灯りは蝋燭の火だけだった。
「ほう。これはこれは・・・」
そう言って男がアンリの顔をじっくり眺めてくる。
その視線にアンリは身を竦める。
まるで、品定めされているようだった。
「くくく。にっくき奴の娘ではあるが上玉だな」
そう言って男はアンリを縛っている縄を解く。
アンリはこのままここにいてはいけないと思い、男の急所を蹴り上げる。
「ぐっ・・・」
男が怯んだすきに逃げようとするがすぐに手下に捕まってしまった。
「小娘。よくもやってくれたな・・・」
男は辛そうにしているが部下に指示を出す。
「例の薬を飲ませろ」
「旦那。いいんですか?下手をしたら壊れますよ」
「構わん。やれ」
男の部下は怪しげな瓶を手に取るとアンリに飲ませようとしてくる。
アンリは飲まないように暴れるが頭を押さえつけられ強引に薬を流し込まれる。
「なに・・・。これ・・・」
体の力が抜け、全身が熱くなってくる。
「どうだ?禁制の薬は」
そう言って男は笑っている。
アンリは問いかけられたが答える余裕はなかった。
まるで自分の体ではないような錯覚を覚える。
呼吸は自然と荒くなり思考がぼんやりしてくる。
「すぐに楽しんでやりたいがまだ痛みがありやがる」
薄れる意識で喫緊の危機は遠のいたがそれでも依然、危機的状況であることには違いがない。
男の痛みが引けば襲われてもおかしくない。
アンリは自然とマスクウェルのことを考えていた。
男だと身分を偽って近づいた罰がきたのだろうか。
それでも、共にいた時間はアンリにとって大切な宝物だった。
今頃、戻らない自分のことを心配してくれているだろうか?
もしかしたら探してくれるかもしれない。
アンリは途切れそうな意識を何とか繋ぎ時間を稼ぐことだけを考えていた。




