第四十八話
アンリは冷静に頭を働かせる。
だが、相手は包囲網をすぐに狭めてくる。
覚悟を決めるしかない。
来た道を戻るのはなしだ。
王城までは後少し。
王城にさえ、辿りつければアンリの勝利だ。
アンリは覚悟を決めて正面突破を試みる。
相手も正面突破をしてくるとは思わなかったのだろう。
何とか隙を突き、突破に成功した。
だが、安心するのはまだ早い。
足音で相手が追いかけてきているのがわかる。
後先のことなど考えずにアンリは全力で走る。
だが、無情にも相手が追いつく方が早かった。
アンリは手を掴まれバランスを崩す。
だが、アンリはまだ諦めていなかった。
必死に抵抗し脱出を試みる。
だが、相手も必死だ。
ここでアンリに逃げられては困るのだろう。
アンリは複数人に拘束され捕まってしまった。
その際に、マスクウェルから貰ったペンダントがからんと落ちた。
政務をしていたマスクウェルだったが、帰りの遅いアンリのことを心配していた。
リーシャからはお使いを頼んだことは聞いていたがもう帰ってきていてもおかしくない時間だ。
「遅い。遅すぎる」
「王太子殿下。落ち着いてください」
「そうは言うがな・・・」
マスクウェルは心配しすぎて政務どころではなかった。
そこにリーシャが駆け込んでくる。
「王太子殿下。失礼いたします」
「何用だ?」
「単刀直入に申し上げます。アンリ様が行方不明です」
「行方不明?どういうことだ」
「帰りがあまりにも遅く、迎えを出したのですが・・・」
リーシャはそう言って何かを差し出してくる。
マスクウェルはそれが何だかすぐにわかった。
「これはアンリの・・・」
忘れるはずがない。
それはマスクウェルがアンリに贈ったペンダントだったのだから。
「捜索は?」
「動員できる者は全て動員しております」
「そうか・・・」
マスクウェルはそこで深呼吸をする。
リーシャは現在は王宮でメイドをしているが本来の役目はそうではない。
ローゼンブルク侯爵家は表向きは善政を布き民に慕われている。
だが、本来の役目は王家の目だった。
諜報を専門とし裏からも表からも様々な情報を集め国の為に動く。
それが王家から与えられたローゼンブルク侯爵家の役目だった。
そのローゼンブルク侯爵家の娘であるリーシャが命じればこの王都で集められない情報などないに等しい。
「私は私の役目を果たそう」
そう言ってマスクウェルは剣を手に騎士団に向かった。
情報が入り次第、自ら動くために・・・。
騎士団の本部ではガスパーが待ち構えていた。
ガスパーはマスクウェルの覚悟を悟りただ団長の席をマスクウェルに譲る。
これで正式に騎士団はマスクウェル支配下に入った。




