第四十五話
「仕事の話も良いがアグニ卿。良かったら夕食を食べていかないか?」
アッカバーンはそう提案する。
「国王陛下・・・。それは・・・」
「遠慮することはないぞ。アンリ殿も普段は私達と食べているからな」
「アンリ。それは本当か?」
「はい。国王陛下や他の王族の方々と食事を共にさせていただいております」
アグニは少し考えこむ。
それを見てカニスが助言する。
「せっかくの国王陛下のお誘いです。断るのも失礼というものでしょう」
「そうだな・・・。国王陛下。お言葉に甘えさせていただきます」
「王妃も喜ぶだろう。婦人と話したがっていたからな」
「それは光栄ですね。私も王妃様とお話してみたかったのです」
「では、そろそろ支度も終わる頃だろう。移動するとしよう」
アンリはそこで気がついた。
はじめからアッカバーンは夕食を共にするつもりだったのだ。
でなければ、食事の用意ができるわけもない。
食堂に移動すると席には王妃だけが座っており他の王族の方々はまだ来ていなかった。
王族の方々はそれぞれに仕事を受け持っており忙しい。
それでも食事をできるだけ一緒に取るのは王族の伝統だった。
「貴方がカニスね。私の隣にいらっしゃい」
カニスはアグニを一瞬見てから王妃の隣に移動する。
「王妃様。失礼いたします」
そう言ってから腰を下ろす。
「お茶を用意させるわね」
王妃がそう言うとすぐにお茶が用意される。
アンリはいつもの席に座る。
アグニだけがどこに座ればいいかわからずおろおろしていた。
「アグニ卿。私の隣に」
そうアッカバーンが呼びかける。
「国王陛下。本当によろしいのですか?」
「友好を深める意味もあるがお主の顔を他の者達に覚えさせる意味もあるのでな」
「そういうことでしたら」
アグニはアッカバーンの隣に腰を下ろす。
少し待っていると他の王族の方々も集まってきて自分の席に座る。
全員が揃ったのを見てアッカバーンが口を開く。
「ここにいるアグニ卿を新設する警邏部隊の副隊長に任ずる。それぞれ力を貸すように」
「かしこまりました。必ず力になりましょう」
王族の方々は1人として嫌な顔をしていなかった。
それだけ新設する警邏部隊の重要度が高いことを意味している。
王族の権利はいまだに強大だ。
だが、それに匹敵するぐらい力を持つ貴族がいるのもまた事実。
内乱にこそなっていないがいつバランスが崩壊してもおかしくなかった。
貴族の利権にメスを入れるのは自ら火薬庫を爆破するに等しい。
それでも、いつ爆発するかわからない問題を先送りにするのではなく解決しようとするのは王族の責務だった。




