第四十四話
「失礼いたします。国王陛下」
そう言って白髪の老執事が部屋に入ってくる。
「スチュワートか。何かあったか?」
「王太子殿下がこちらに向かっております」
「来るとは思ったが思ったより早かったな」
「王太子殿下がこちらに?」
「皆のものわかっておるな」
この確認はアンリが女性であることを漏らさぬようにとの配慮だった。
「わかっております」
少しして扉がノックされる。
「国王陛下。失礼いたします」
そう言って入ってきたのはマスクウェルだった。
「どうした?まだ、政務の時間だろう」
アッカバーンはそう詰問する。
「申し訳ありません。ですが、アンリのご両親が登城していると聞き、挨拶をせねばとこうして参りました」
「そうか・・・。後で呼ぼうとは思っていたから丁度良いか」
「丁度良いですか・・・?」
「例の新設する警邏部隊の副隊長にアンリの父であるアグニ卿をおこうと考えている」
「なるほど・・・。ですが、荒事が予想されます。腕の方は大丈夫なのですか?」
「腕についてはガスパーが保障してくれるだろう」
「ガスパー。どうなのだ?」
マスクウェルはガスパーに尋ねる。
「腕の方は保障いたします。それと私の配下から何人か手配する予定です」
「それならば、大丈夫か。アグニ卿。色々大変だと思うがよろしく頼む」
「力の及ぶ限り王家の剣としての職務を全うするつもりです」
ここで言う王家の剣とは王家に対する最大の忠誠だ。
騎士になるものは全員、宣誓するがここで改めて宣言するのは大きな意味があった。
国王であるアッカバーンと王太子であるウィリアムの敵を排除する。
そのような意味が込められていた。
マスクウェルもその意味に気がつき笑みを浮かべる。
「期待している」
「王太子殿下。私からも1つ良いですか?」
「答えられるものなら何でも答えよう」
「アンリは迷惑をかけておりませんか?」
「アンリが迷惑?最近はガスパーに取られているがよくやってくれている」
「そうですか・・・。私が不甲斐ないばかりに苦労ばかりかけてきました。貴族教育も満足にしてやれておりません」
「確かに貴族としてみれば未熟な部分もあるだろう。だが、それを補って余りある才能がある。不足している部分についてはこれから覚えていけばいいのだ」
「王太子殿下。感謝いたします」
「王太子殿下。私からもアンリをよろしくお願いたします」
アグニとカニスはそう言ってマスクウェルに頭を下げる。
2人に頭を下げられマスクウェルは少し困ったような顔をしていた。
それをアッカバーンとガスパーは微笑ましいものを見るように見ていた。




