第四十三話
「親子の再開に水を差すようで申し訳ないが私から提案がある」
国王であるアッカバーンがそう切り出す。
「提案ですか?」
「そろそろ表舞台に出てくる気はないか?」
「表舞台ですか・・・」
アグニは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「懸念はわかっている。多くの貴族がお主を恐れている。だが、だからこそ私に力を貸してほしい」
「国王陛下・・・」
アンリはその言葉の意味を理解していた。
父であるアグニは多くの貴族を敵にまわした。
正しいことをしたのは間違いない。
だが、だからこそ、貴族はアグニを恐れる。
自分達にいつその牙を剥いてくるかわからないからだ。
「この数十年。国の膿を出すことに注力してきた。だが、完璧ではない。お主のような者こそ必要だ」
国王であるアッカバーンはそう重ねていう。
「しかし、私が動けばアンリに迷惑がかかりませんか?」
アグニが心配しているのは愛娘であるアンリのことだった。
「申し訳ないがアンリ嬢をマスクウェルの傍付きにした時点で察しの良い者は動きはじめている。どちらにせよ、アンリ嬢が危険なのは変わらない」
「国王陛下・・・。貴方という人は・・・」
「良いじゃありませんか。貴方。久しぶりに会ったアンリはとても楽しそうです。なら、私達が表舞台に出ることで少しでも矛先が減るのならそれはアンリの為となります」
母であるカニスがそう言いきる。
普段は優しい母親だが、ここぞという決断力は健在だ。
「はぁ・・・。昔から君は変わらないな。そういう顔をした時の君に勝てた記憶がない」
「受けてくれるということでいいのかな?」
「私に選択肢はなかったように思いますが・・・」
「お主には新設する警邏部隊の副隊長の立場を用意する。それを祝して準男爵に陞爵するものとする」
「ありがたくお受けいたします」
「国王陛下。差し出がましいとは存じますが、新設する警邏部隊に部下を派遣しても?」
ガスパーがアッカバーンにそう確認する。
「お主が必要と思うなら許可しよう」
「ありがとうございます」
ガスパーがそう申し出たのには理由がある。
新設する警邏部隊は貴族すら取り締まることが出来る権限が与えられている。
王の力も強いが貴族の力もまだまだ強い。
そこにメスを入れる為には信頼のできる人材が少しでも多く必要だった。
「ガスパー様。感謝します」
「腐敗した貴族はまだまだ多い。困難な道だと思うが私も期待している」
アグニとガスパーは固く握手をする。
この一幕を見ればアグニとガスパーは元部下と上司というより戦友のようだった。




