第四十一話
「そういえば母上は何処に・・・?」
アンリは気になって聞いてみる。
「アグニが見かけた攫われた令嬢というのが母君のカニス嬢でな・・・」
「吊り橋効果という奴ですか?」
「それもあるとは思うが母君からすれば本当に助かったのだろうな」
「???」
アンリは疑問符を浮かべる。
「その大物貴族は攫った娘を味見と称して襲っていてな。アグニが突入した時は襲われる寸前だったんだ」
「もしかして父上が首を斬った理由って・・・」
「本人から聞いた話だが、カニス嬢の状態を見て我慢できなかったそうだ」
「なるほど・・・。父上は母上を好いていたのですね」
「夜会なんかで警護に着くこともあったからな。ちらっと見て一目惚れだそうだ」
アンリは普段のアグニを思い出す。
母と惚気る事が多かった気がする。
「母上はどう思っていたんですか?」
「事件の前はそこいらにいる騎士の1人だろうな。だが、事件の後にアグニに告げたそうだ」
「告げた?」
「お嫁にいけません。責任を取ってください。と言われたそうだ」
「うわぁ・・・。またべたな・・・」
「王家としても失態だからな。秘密裏に色々手をまわしたわけだ。それに、実際はどうあれカニス嬢の評判に傷が入ったのも事実だ。カニス嬢のご両親としても嫌とは言えんだろう」
「それが騎士爵を譲られたという話に繋がるのですね」
「その通り。今回、アンリ嬢に無茶振りをしたのもその辺も関係あるのかもしれないな」
「どう関係するのです?」
「王家の恥を注いでくれたのだ。だが、表面的には没落貴族として扱うしかない。国王陛下としては心にずっと残っておられたのだろう」
没落貴族として扱いながらもずっと気にかけていたということは信頼されているということなのだろう。
たまたま、自分が都合が良かっただけかと思ったが、今回抜擢された理由は父であるアグニへの信頼からということになる。
「ますます頑張らないといけませんね」
「頑張るのはいいがほどほどにな。潰れては元も子もない」
「はい」
食休憩を終え、アンリは再びガスパーの指導の元、体力作りに戻る。
その姿を様々な勢力の者が目にしていた。
好意的に見る者から悪意を向ける者まで実に様々だ。
ガスパーは指導をしつつ視線を確認する。
この娘を中心に王宮に嵐が訪れるだろう。
可能な限り守るつもりでいるが完璧に守るのは難しい。
自分は武官としては信頼されているが貴族や文官の戦い方を全くしらないのだから。




