第三十五話
アンリがリーシャにマッサージを受けている頃、マスクウェルは困っていた。
ガスパーに連れていかれたアンリを心配し政務を切り上げて部屋に向かおうとしたらその進路を塞ぐようにメイド達が立ち話をしていたからだ。
通路は当然1つではない。
だが、どれだけ通路を変えてもメイド達が立っていた。
「どうしてだ?いつもならこんなことなどないというのに・・・」
その理由は簡単だ。
リーシャがメイド達に協力を仰ぎアンリの部屋にマスクウェルが辿りつけないようにしていたのだ。
突破する方法は簡単だ。
メイド達をすり抜けて向かえばいい。
だが、女嫌いとなっているウィリアムにその選択肢はとれない。
マスクウェルは本当は女性をそれほど嫌っているわけではない。
確かに令嬢達の裏の顔を知って嫌悪しているのは確かだ。
だが、自分が迂闊に女性と一緒にいる場面を見られれば様々な派閥が動く。
政務もそれなりに忙しく派閥の力関係の調整に時間を割くぐらいなら、女性嫌いとしていた方がましだった。
「ぐぬぬ・・・。私は諦めないぞ」
マスクウェルは無駄骨になるとも知らずメイド達を突破しようと通路を彷徨い続けた。
「くっくっくっ。傑作だ。頭はいいはずなのにこれは・・・。ぷぷぷ」
この国の王であるアッカバーンが報告を受けて腹を抱えて笑っていた。
「貴方・・・。そんなに笑っては・・・。うふふ・・・」
そう言って王妃も必死に笑いをこらえる。
「そうは言うがな・・・。腹がよじれる・・・」
「まぁまぁ。貴方の狙い通りというところかしら」
「そうだな。これほどアンリ嬢に夢中になるとは思っていなかったが」
アンリを傍付きとして2人の関係を深めどこかでマスクウェルにばらし将来的に結婚をと画策していたがこれほどうまくいくとは2人は思ってもいなかった。
「それはそうと、ユーステッド家の格をあげる件はどうなっているのです?」
「それはもう少し待ってほしい。今、仕込みをしている最中なのでな」
マスクウェルが受け入れたとして問題になるのはユーステッド家の格だった。
騎士爵では到底、家柄が釣り合わない。
最低でも伯爵家程度までには爵位を引き上げる必要があった。
「貴方のことだから、腹黒いことを考えていそうね」
「それは否定せんよ。1国の王ならこんなものだろう?」
「それもそうね」
国を存続させる為には綺麗ごとだけでは済まされない。
今までも国の為に色々なことに手を染めてきた。
可愛い我が子であるマスクウェルの為になるなら、多少の無茶は許容範囲内だ。
それに、丁度良く、馬鹿なことをしでかしそうな者が現れた。
泳がせてアンリの父であるアグニに手柄をたてさせれば陞爵させる理由になるだろう。




