第三十四話
お湯につかりゆったりしているとメイドさんがお風呂の中に入ってくる。
「アンリ様。マッサージにきました」
「マッサージですか?」
「はい。明日からも厳しい訓練が続きますからしっかりとケアが必要です」
今日、行ったのは走り込みだけだがそれでもかなりの疲労が溜まっていた。
「すみません。お願いします」
アンリは風呂から上がると用意されていたマット横になる。
「それでは失礼いたします」
そう言ってメイドさんが丁寧に体をマッサージしてくれる。
「気分はどうですか?」
「気持ちいいです」
「それにしてもアンリ様が羨ましいです」
「羨ましいですか?」
「はい。とてもバランスの良い体をしておられます」
「そうですか?」
「そうですよ。私なんて油断するとすぐに体に出てしまうので・・・。」
そう言って二の腕を摘まんで見せる。
ぷにぷにしていて触り心地が良さそうだ。
「女性の魅力は体だけではないのでは?」
「そうですけど・・・。やはり少しでも綺麗でいたいじゃないですか」
「なるほど・・・」
とはいえ、王宮に務めているのだ。
アンリの実家よりも高位の家柄でこれだけ性格もいいのだ。
縁談には困らなそうな気がする。
「お世話になっていて申し訳ないのですがお名前をお聞きしても?」
「そういえば名乗っていませんでしたね。リーシャ・ローゼンブルクと申します」
「ローゼンブルク・・・?侯爵家の・・・?」
侯爵家のローゼンブルク家と言えばこの国では有名だった。
領地でも多くの領民に慕われている。
遠く離れた王都にもその噂話が流れてくるほどだ。
「侯爵家に生を受けたのは事実ですが今は一介のメイドです。今まで通りに接していただければ・・・」
そう言って微笑んで見せる。
その笑顔の破壊力は抜群だ。
アンリは思わず見とれてしまう。
「そんなに顔を見てきて何かありましたか?」
そう言って首をかしげてみせる。
そのしぐさがまた、リーシャの魅力を良く引き出している。
「可愛らしいので見とれてしまいました」
「ふふ。ありがとうございます」
そう言ってリーシャはマッサージに戻る。
「結婚相手に困らなそうですけど・・・」
「そうですねぇ。縁談はよくきますけど・・・」
「何かお困りなのですか?」
「今は恋愛よりこうしてアンリ様に仕えている方が楽しいですから」
確かにメイドとして働いているリーシャは生き生きとしていた。
縁談相手には悪いがこうして助けてもらっている立場だ。
いなくなられては色々と支障が出てしまう。
「お世話してもらっている身ですが、良い縁談がきたら受けてくださいね」
「それは、はい・・・」
少し返事が遅れたところを見ると少し困らせてしまったかもしれない。
いなくなられても困るがそれでもリーシャには幸せになってもらいたい。
アンリは心の底からそう思っていた。




