30.ガイというドワーフ
「王女様に勇者様方ですか、ようこそおいで下さいました」
「ガイ様ですね? 騒ぎ立ててしまい申し訳ありません。お願いがあるのですが宜しいですか?」
「どういったお願いですかな?」
「勇者である夕間様はモンスターと契約をしております。モンスターを連れて街を歩く許可を頂きたいのです」
「モンスターと契約とは。それでそのモンスターはどこにおりますかな、一度拝見させて貰いましょう」
「あの、こちらにおります」
シロは羽をパタパタと動かし、ウルは小さな尻尾を振った。2人ともそれぞれのやり方でガイに挨拶しているようだ。
「はっ。何とも可愛らしいモンスターと契約しておいでで----」
「ミィ〜!」
「我を可愛らしいと申すか!」
シロは嫌味と思っていないのか素直に喜ぶが、ウルは気に食わないようだ。子犬姿から直ぐに大きな姿に戻り威嚇するよう唸り出した。
「これは、ジルベスター大陸のシルバーウルフ?!」
「ほう、我を知っているのか」
「お目にかかれる日が来るとは、何とも有難い」
ヒゲモジャのドワーフは顔をピンク色に染めてウルに近づきまじまじと見つめる。
「なあ、おっさんはジルベスター大陸を知っているのか?」
「知ってるも何も俺の目標はジルベスター大陸に行く事だ」
おっさんはこの街について説明し始めた。何でもドワーフは元々国があったようだが、人との争いに負け散り散りになったらしい。この街で奴隷のように扱われていたようだが、200年前に権利を主張し元々あった技術でお金を稼ぎ街を買い取ったようだ。
街を発展していく中で散り散りになったドワーフを集め次の目標がジルベスター大陸へ行く事。どうやらドワーフにとってジルベスター大陸は憧れの地として語り継がれてきたらしい。
「そこでまず我らは船を作り、今は飛行船の開発に力を入れている」
「飛行船? 空を飛ぶためか?」
「そう。今回シルバーウルフに会えたのは奇跡。どうやって行くのか聞いてみたい。協力してくれるなら何でも致しましょう」
「ウル協力してくれるか?」
「ガイとやら、ジルベスター大陸に来てどうするつもりか。答えによっては協力してやろう」
「俺はジルベスター大陸にあると言われる鉱石を貰いに行きたいんだ。ちょっと待っててくれ」
ヒゲモジャのドワーフが近くで控えている帽子を被ったドワーフに指示をだす。
少しの間待っていると、扉の向こうから3人のドワーフが黄色い顔で大きな石を運んできた。
「この鉱石は空から落ちてきたと聞いている。調べて分かった事は魔力を大幅に増加させる力を秘めているようだ。新しい技術の進歩に役立たせる為是非とも探しに行きたい」
「この鉱石ならば我ら一族が住む場所に沢山ある。戦うのでなければ協力しよう」
「何て嬉しい日なんだ、やっと希望が見えた感謝しよう。今日は宴会だ! 皆に知らせろー!」
ヒゲモジャのドワーフが涙を流しながら叫ぶと、石を運んできたドワーフ達が色めき立つ。
「宴会だあー! 酒だあー!」
ピンク色の顔で踊るようにステップを踏んだ後、部屋から出て行って直ぐ耳を突き刺す様な馬鹿でかい音が鳴り響く。
バリーンウーーバーン!!!
「耳が痛いにゃん」
「ちぎれる」
「凄い音ね、なんの音かしら?」
「皆大丈夫か?!」
「何とか---- 急にで驚きましたわ」
「煩い音だ。鼓膜が破れるでないか」
シロだけ平気そうにパタパタと羽を動かしているが、あんなデカい音を聞いてたまったもんじゃない。
「ガハハっ! 祭りや宴会の前は作業場にいる者にも聞こえるよう音を鳴らすのです。お気に召さないようですみません」
俺達の様子を見てヒゲモジャが笑いだす。
「俺の事はガイと呼んで下さい。宿に案内しましょう。宴会まで体を休めたらいい」
「帰りもあれに乗るのかしら?」
「あれに乗るのはこりごりにゃん」
「ムリ」
「トロッコも嫌なようで、階段で降りますかな?」
「勇者、我はあの乗り物に乗るぞ」
「シルバーウルフ様に気に入って頂けて何より、どうぞお好きな方で降りて下さい」
俺とレーリアにウルで再びトロッコまで行き乗り込む。ミンハさんとサバンナ、シロとフローラは階段で降りて行くようだ。それぞれに案内役のドワーフがつくようなので、宿で合流する事にした。
「早く出発せんか!」
小さくなったウルを抱いたまま動きだす。来た時と違う方向へ動き出したトロッコはゆっくりと前に進み、外が見えたとたん急降下した。
恐っ! 体が少し浮く感覚がして足に力が入る。
帰りは短く急降下した後、大きく一回転だけして止まった。スピードが早く高い所から下降したのもあって帰りの方が恐い。
「凄かったわね、帰りの方が面白いわ」
「我も気に入ったぞ」
ウルの激しく振る尻尾が顔に当たり息が漏れる。はあ---- 嫌いじゃないけどもう俺はいいな。
力を入れすぎたのか少し痺れた足で歩き出す。街の中心に出れば普通の街並みに見えるが出てる看板が普通ではなかった。
作業場兼お店にしているのか、武器や防具はもちろん怪しげな薬屋やよく分からない魔道具まで売られている。居酒屋や肉料理の店が多く立ち並び
露店はあまり無いようだ。
「ここが街の中心だ。周りは工場で囲っているがこの先の洞窟に船乗り場がある。明日案内しよう」
「へえ、港がある訳じゃないんだ。昔もここから船に乗れたのか?」
「船はガイ様によって考案された。初めて人を乗せたのはここ100年くらいですな」
「えっ、ガイって何歳なんだ?」
「ガイ様は230歳。ここにいるドワーフの中で最も長く生きておられる」
「ほう、ドワーフもエルフと共に長寿と聞いていたが、我までではないのだな」
エルフか、そういえばバーバラさんって何歳だったんだろ。
シンリーとバーバラさんを思い出し懐かしく感じる。ついこないだなのに随分時間が経ったような気分だ。
俺達が案内された宿は見た目普通の宿。中に入っても綺麗に清掃されており好感が持てるなと思っていたらドワーフの女性が出てきた。
ニコニコと笑顔で出迎えてくれたのはガイの奥さんらしい。サリーさんというらしいが何歳なのか検討もつかない。
部屋に案内される前にフローラ達を待つと言ったら温かいお茶と見た事もないお菓子でもてなしてくれた。
「美味しい。このお菓子は何ていうお菓子ですか?」
「これはドワーフがよく作るお菓子でフォンといいます。とうの実を潰して小麦と一緒に捏ねてから焼くのですよ」
「とうの実?」
「はい、とうの実はこの近くの森でとれますよ」
口の中に広がる味はトウモロコシに似た甘い味。パンとケーキの中間みたいな食感は食べやすく紅茶のようなお茶にぴったりだ。
「我はもう少し甘い方好みだな」
「あら私は好きだわ、甘すぎなくて」
「俺も丁度いい。サリーさん有難う」
「ふふ。喜んで貰えて嬉しいわ。それにしても王女様方は大丈夫かしら?」
「そうですね、少し様子を見てきましょうか?」
「いえね、階段から降りてきてるのでしょう? 具合が悪くなってないか心配だわ」
「ただ降りてくるだけじゃないのか?」
「あの階段は螺旋になっているから皆目を回すのよ。だから普段使ってないのだけど、ガイは説明してなかった?」
確かにあの高さから螺旋なら具合悪くなりそうだ。俺達が黙っているとサリーさんが何か察したように赤い顔で案内役のドワーフに指示を出す。
「様子を見てきて頂戴。私は冷たい飲み物を用意するわ」
バタバタと動き出す中、お茶を頂いていたレーリアが小声で話しかけてきた。
「顔色があんなに変わると見ていてわかりやすいですね」
「あ、ああ。レーリアもそう思ってたか?」
「怒ると赤いですし、嬉しいとピンク、驚いたり緊張すると青でしょうか?」
「あと石を運んでた時は黄色かったよな」
「それは気付きませんでした。他の色もあるのか気になりますね」
「何をヒソヒソと話している。我に内緒ごとか?」
ウルが拗ねって尻尾を丸めた時、入り口のドアがバタンと音を立てて開いた。
「サリーさん! 冷たい飲み物を頼む!」
「もーいわんこっちゃない! ガイに後で説教してやるんだから」
青い顔のドワーフと赤い顔をしたサリーさんを見ていたら、ミンハさんが現れ今にも倒れそうなフローラとサバンナが宿に運ばれてきた。
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来週は6月2日火曜日と5日金曜日に更新します。




