29.変化した街
船に乗る為ドワーフがいる街へと向かう。ウルに跨るミンハさんとフローラを横目に1本道を歩いていく。
サバンナがいうには港がある為、人の往来がとても多いらしい。ウルを連れて歩けば注目されてしまうと考えた俺達は、少し遠回りだけど人のいない道を選んだ。
「そういえば、ウルっていつからあそこにいたんだ?」
「あまり覚えておらん。我は自由だからな」
「じゃあずっとそこにいた訳じゃないんだ」
「我はジルベスター大陸で生まれた。長い間気ままに旅をしていたらあの遺跡を見つけて住処にしたのだ」
「えぇ! ジルベスター大陸って本当にあるにゃん?」
「サバンナどういう事だ?」
「ジルベスター大陸は空に浮かぶ大陸と言われているんですぅ! 御伽話だと思ってたにゃん」
「空に浮かんでる大陸かあ。どんな所なんだ?」
「美しい大陸だ。大陸の真ん中に大きな木があってな、水は透き通り様々な植物が花をさかせている。色んな生き物がいて人がいない自由な所だ」
「へえ、自由っていいな。何でこっちの大陸に降りてきたんだ?」
「我は修行の身なのだ。時が来れば戻る」
「修行?」
「我が一族はジルベスター大陸を守っているのだ。父がその長でな、我はその後継だ」
「後継か、ウルも大変なんだなー」
「勇者は異世界から来てるのであろう? 異世界はどんな所だ?」
「俺の世界には魔物やモンスターはいないし、魔法もないな。建物や移動手段もこっちの世界と異なるし---- 食べ物くらいかな同じなのは」
「そんなにも違うのか?」
「この世界だと馬車を使うだろ? 俺の世界では車や電車で移動するんだ」
「クルマにデンシャとはなんだ?」
「んー説明が難しいなあ。箱みたいなのに入ってエンジンで動くんだよ。魔法の変わりに科学というのがあって電気を使うんだ」
「想像が全く出来ん。今までの勇者達も同じ世界から来てたのだろうか?」
「あー、多分それ俺」
「何? 勇者は我より長く生きているのか?!」
「いや、17だけど」
「17? 嘘をつくな」
「嘘じゃないし。俺の世界とこっちの世界は時間の流れが違うんだよ。初めて来た時は13。こっちの世界だと---- 1900年くらい前かな?」
「我の知らぬ世界を知っているのだな。しかし初めてという事は何度も来て魔王を倒してるのか?」
「今回で10回目だ」
「10回?! 正直信じられん」
「まあ何度も召喚される勇者なんて、俺も聞いた事ないよ」
「本当だとして、1900年前はどんな感じだ?」
「大きく変わった感じはないな。新しい街や無くなった場所もあるけど----」
考えてみるが特にこれといったものが思い浮かばない。
魔王を倒す事に集中してたし観光とかしてないんだよな。
「勇者様! 街が見えてきたにゃん!」
「ミィ〜!!」
俺の肩にいたシロが空へ飛んでいく。
サバンナが指差す方を見てみれば見た事のない街並みが広がっていた。あれ? 目を擦って再び見たがさっきと何も変わらない。
「あの街も変わらぬままか?」
「------」
目に映るのは何処からどう見ても工業都市。デカい煙突から煙りが出てるし、鉄筋みたいなので出来た建物まである。
「サバンナ、あれって地図で見た街か?」
「そうにゃん!」
全然前来た時と違う---- 前来た時はこっちだと250年くらい前か? どうなってんだ?!
「勇者? どうかしたのか?」
「あ、ああごめん」
シロを呼び戻し坂道を下る。街に近づけは近づく程、建物の大きさに驚きが隠せない。街に入る為検問所を探していると汽笛が鳴り響き、つい自分の耳を疑ってしまった。
「モンスターだ!」
「何だあのモンスターは!」
検問所の前で列を作る人々がウルを見て騒ぎ始める。
騒ぎが大きくなっていく中、フローラがウルから降りてサバンナに声をかけた。
「サバンナ、許可証は持ってますわね?」
「ここにありますにゃん!」
「俺達の街を守れー!」
「モンスターは何処だ? 何処にいる!」
「あそこです!」
槍やら剣を持ったドワーフ達が次々に現れあっという間に囲まれる。
「お前ら! モンスターなんぞ連れてきてどういうつもりだ?!」
俺の腰くらいしかない厳ついドワーフが槍の穂先を向けてきた。七人の小人のような姿だが、可愛さは全くないし槍を持つ筋肉は立派。顔つきも怖い奴らばっかりで、怒っているのか皆真っ赤な顔で俺達を睨んできた。
「この街の管理者、又は責任者はいらっしゃいますか?」
フローラが前に出てドワーフへと話しかけたが、緊迫した空気は変わらず槍も向けられたまま。何かあっては危険なので俺はフローラの隣で見守る事にした。
「身元もしらん奴に合わせるもんか! 今すぐここから立ち去れ!」
「去らないとお前らの命を貰う。モンスターなんぞ連れてきて、俺らの街を壊すつもりか?!」
「いえ、そのような事は致しません。身元はこちらを---- 中を確認して下さいませ」
フローラがドワーフに許可証を差し出す。警戒するドワーフ達の1人が、剣を構えたまま近づいてきて許可証を乱暴に奪い取る。
仲間達の元に戻り、許可証を広げ中を確認するドワーフが急に目を見開く。読み進めていくと同時に顔色が段々青くなっていった。
赤からあんな青くなるか? ドワーフって分かりやすいんだなー。
「私はジュラ王国、王女フローラ。ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。責任者か管理者はどちらにいらっしゃいますか?」
「も、も、申し訳ありませんー!! 王女様とは知らず酷い態度を! 皆土下座だあー!」
「土下座など必要ありませんわ。こちらにいるモンスターは勇者と契約を交わしています、その為街に入る許可を頂きたいのです」
「契約ですか? 勇者様はモンスターと契約しとるんで?」
「ええ、安心なさい」
「ガイ様の所へお連れします。お前ら道を開けろ! 王女様、勇者様がお通りだ!」
ドワーフの真っ青だった顔が肌色戻っていく。列を作っていた人々は王女と聞こえたとたん歓声を放ち道を開けた。
もはやパレードのちっちゃい版。久しぶりに聞く歓声と投げられる視線につい溜息を漏らしてしまう。
面倒くせえ---- やっぱじろじろ見られるのは嫌だな。
早く歩きたい気持ちとは裏腹に、ドワーフの歩幅は狭く全然前に進まない。必要以上にじろじろと見られるのに耐えかねた俺は、先頭のドワーフを追い越し検問所を抜けた。
街に足を踏み入れると目の前に立派な銅像が出迎えてくれた。
プレートアーマーを着たヒゲモジャの男は、剣ではなく何故か金槌を持っている。
ヒゲモジャの銅像の後ろに見えるのは今までに見た事のない街並み。石造りの建物もあるようだが、以前見た街と違いすぎて困惑してしまった。
取り敢えずガイって奴に会ってからだな。
銅像から街並みをシロと見ていたら、ようやくフローラ達が検問所を抜けてきた。
「王女様、どーぞお乗り下さい」
検問所を抜けて直ぐ横にある建物へ入ったら、鉄で出来たトロッコへと案内される。
「我も乗るのか」
「ウルには小さいよな、何処かで待ってるか?」
「我を置いてくな。ようするに小さくなれば良いのであろう?」
ウルがシュルシュルと小さくなり子犬サイズへと変化していく。
なれるなら最初からさせれば良かったと内心思ったが口にするのはやめた。
「どうだ、これなら一緒に乗れるぞ」
口調と見た目のギャップに笑える。目をウルウルさせる仕草は子犬みたいで可愛い。
ウルを抱っこしようと手を伸ばした瞬間、後ろから服を引っ張られた。
「抱っこする」
「あ、ああ」
ミンハさんはウルを抱っこしご機嫌でトロッコへ向かう。トロッコの中にあるシートに座るとお腹付近に安全バーのような物が下された。
ゆっくりと動き出し前へ進むトロッコはまるで遊園地のアトラクションのようだ。手掘りであろう洞窟の中に入った瞬間、急に下降しスピードが上がる。
「きゃあぁ」
「にゃうー」
暗闇の中、凄いスピードでアップダウンを繰り返し、仕舞いには1度外へ出て一回転までした。
明るい建物へ入りブレーキがかかる。急なブレーキに前のめりになりながらも建物に目が奪われてしまった。
凄え、どうなってんだ?
東京タワーのような鉄骨が見え、大きな窓から見える感じではかなり高い位置に着いたようだ。
「気持ち悪い」
「ミンハ大丈夫?」
「レーリア手を貸して下さい」
「もうダメにゃあ」
レーリア以外皆がダウンしてるのを見て、ふと肩にいるシロへ声をかける。
「シロ大丈夫か?」
返事がない所を見ると完全に伸びているようだ。
「勇者! この乗り物はなんだ。もう一度乗らせろ」
ウルは舌を出し尻尾を盛大に動かして喜んでいる。ダウンするミンハさんから抜け出して俺の膝に乗ってきた。
「これも昔からあるのか?!」
更に尻尾を振って興奮するウル。もはや子犬としか見えずモンスターだと忘れてしまいそうだ。
「到着したぞぉー! 王女様、勇者様のご到着だー!」
トロッコから降りて歩いて行くと、建物の様子が変わり全面ガラス張りで展望台の中そのもの。
街を見下ろす様に眺める場所を通り過ぎたら、ポツンと1人用のソファが置かれた部屋に通された。
「あちらにいるのがガイ様です。ガイ様! 王女様、勇者様一行でさあ!」
クルッとソファが回転し始める。現れたのは街に入った時に見た銅像と同じヒゲモジャのドワーフだった。
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