20.新しい武器!
「ふう---- 少し昔を思い出したよ。あんた達には礼を言わないといけないね」
緊迫した空気は和らぎ、バーバラさんはテーブルの上に置かれた武器や装備を見ながら話し始めた。
「ここにあるのは偏屈な私の父の最高傑作。父は何をしたかったんだろうね、死ぬ前にこれらを洞窟に隠したんだよ。私は父の日記からそれを知って探してたんだけど、一定の周期で大蛇が卵を生みにくるから見つけられなくてね」
バーバラさんはテーブルの上にある杖を手に取り大事そうに抱える。指で杖を優しくなぞると再び口を開いた。
「この杖はドラゴンの髭と鱗から出来ているんだ。ほらここを見てご覧。鱗が見えるだろ? だからドラゴンの形をしてるんだよ。強度も強いから壊れにくいし、魔法の威力を増幅する良い杖だよ。ほれ、小さな魔法師。受け取りな」
ミンハさんはバーバラさんが投げた杖を両手をバタバタさせて慌てながらもキャッチする。バーバラさんは目を細めてミンハさんを見ていたが、今度は剣を手に取りレーリアを見つめた。
「この剣はね、クリスタルとドラゴンから吐き出される炎で作っているんだよ。炎を特殊な方法で保存して持ち帰ってきたんだ。ほら、透明なのに真っ赤に光っているだろう? 簡単にかけたりなんかしない凄いものさ。属性は火かい?」
「はい。氷と火です」
「そりゃあいい。正にピッタリだ、大事に使っておくれ」
「あ、有難うございます」
「後は装備だね。マントとローブはこの虹色の鉱石から作られている筈だよ。刃物で切るのはまず無理だね。魔法の付与もしてあって大幅にダメージを減らす特殊な物さ。防具と盾も同じ。マントとローブよりも強度が高くて魔法を跳ね返すんだ、私でもこの防具は作れないね。ブーツの素材はドラゴンの羽。今よりも高く飛べるようになる。動きは早くならないけど空中を蹴って移動出来ると聞いたよ。どれも凄い物だ、大切にしておくれ」
「あの---- 俺達が使っていいんでしょうか?」
「ユウマ---- コリーというエルフを覚えてないかい?」
コリーという名前を聞いて直ぐに思い出す。7回目の召喚の時、俺が使っているマントを一緒に作ってくれた錬金術師だ。旅の途中、エルフの里に立ち寄った時に会ったんだよな、すっげえ変わった人だったから忘れもしない。硬い鉱石を糸に変えるなんて方法知らなかったし、新しい事ばかりで楽しかったんだよな----
「コリーさんは覚えてます。俺のマントを一緒に作ってくれました」
「覚えててくれて嬉しいね。コリーが私の父だよ。私が小さい頃、ユウマという勇者とマントを一緒に作ったって自慢されたもんさ」
---- ええ! あの人奥さんと子供がいたんだ---- 7回目だから、こっちだと450年前くらいか? 流石エルフ、長寿というだけあるな。そか、あの人が作ったやつなんだ----
「だからという訳じゃないけど、あんた達に使って貰えたら父もきっと喜ぶさ。これで魔王を倒しておくれ」
「有難うございます。皆で魔王を倒します!」
「頼んだよ。それとこの虹色の鉱石はどうするんだい? これは今探しても手に入らないからね。私が何か作ってやるよ」
「そんなに貴重な物なんですか?」
「ああ、これは昔エルフの里にあったものさ。もう里は海に沈んでしまったからね、取るのは不可能だよ。ユウマ、何か欲しい物はないのかい?」
---- あの場所、海に沈んだんだ---- 昔会ったエルフの人々の顔を思い出す。エルフの里に滞在した時間は短かったけど、今となっては楽しかった思い出ばかりだ。変わり者であるコリーさんの一度だけ笑った顔が頭に浮かんできてバーバラさんの顔と重なる。
頼んでみようかな---- きっとこの人なら笑わない。
「あの---- 出来たらで良いんですけど、ナックル武器を作って貰えますか?」
「ナックル武器は聞いた事ないね、どんな武器だい?」
「俺は拳で魔王と戦っています。今使っているのはこれ---- 拳にはめて使います」
ナックル武器をテーブルの上に置き、ドキドキしながらバーバラさんの反応を待つ。ゆっくりと武器を眺めてから手に取るとバーバラさんは真剣な表情で口を開いた。
「拳にはめてか---- それならグローブのような形の方が良いんじゃないかい? これだと手を自由に使えないだろ?」
「はいっ。出来れば指先を出せると嬉しいです。電流を纏わせるのにその形にしていましたが、グローブの形で作れますか?」
「私を誰だと思ってるんだい? コリーの娘だよ? 糸にして編めば出来るさ。不可能な事なんてこれぽっちしかないんだからね。私に任せな、最高の武器を作ってやるよ」
俺の目から自然と涙が流れる。ナックル武器を理解して貰った事はもちろん、こんなにも力強く任せなって人から言われたのは初めてだ。
いつも馬鹿にされて1人で作ってきた武器が、他の人に作って貰えるなんて嬉しいに決まっている。ジジィに教えて貰った武道が生かされる武器になるなら尚更だ。
俺---- これでやっと本気で戦える。
喜びで体が震えて涙が止まらない。
皆の前で泣くだなんて恥ずかしいのに、止まらないんだよ。今回の旅は何なんだ---- 泣いてばかりじゃねえか。
俺の肩にバーバラさんの手が置かれる。優しくて力強い手は、豆だらけで汚れてシワシワだ。バーバラさんの生き様が手から伝わってきて涙が更に流れた。
皆も俺を心配しながら優しい言葉をかけてくる。シンリーなんて貰い泣きしたのか、バーバラさんへ泣きながら抱きついていた。
しばらく涙を流していると、バーバラさんからの提案で食事を頂く事になり、温かいシチューに心が温まる。この日から武器が出来るまで、バーバラさんとシンリーの家に皆で泊まる事となった。
ボロボロの廃墟のような家は、お化けなんかいなくて温かく優しい場所。久しぶりに柔らかなベッドで温もりに包まれながら眠りにつく。
それから2週間。シロのレベル上げや飛ぶ練習に付き合いながら、バーバラさんへのお礼を兼ねてボロボロの家を皆で補修する。
扉や屋根を中心に直しある程度見れるようになった頃、シロが初めて宙に浮いて空を飛んだ。ついグルグルとシロを追いかけて遊んでいると、俺の武器が完成したと聞かされる。皆で山小屋に向かいバーバラさんへと声をかければ、中が前よりも物に溢れぐちゃぐちゃな状態だった。
「ユウマ、拳にはめてみな」
バーバラさんが差し出したグローブは虹色に輝きながら魔法文字が浮かび上がっている。手に取り拳にはめて見ると自分の拳にピッタリと馴染み浮かび上がっていた文字の色が変わった。
「ちゃんと色が変わったね、魔力を流してみな」
拳に魔力を流すとズンっとグローブが重くなりビリビリと電流が流れ出す。今まではめていたグローブとは違い掌を広げて指を動かすと、指先からもピリっと電気が走っている。
凄え---- 拳に纏う電流が前よりも強いし、これなら武道の技を使って攻撃出来る。それに重さもあるから攻撃力も上がる筈だ---- 早く試してみてえ!
「バーバラさん、有難う。こんな凄い武器初めてだ!」
「それはね、虹色の鉱石の他に本物の雷を閉じ込めたのさ。昔父が集めてた素材の中にあったからね、ユウマにピッタリな素材だろ?」
「そんな事出来るんだ---- 凄え、これで魔王倒してくるよ」
「ふっ期待しているよ、他に頼まれてたやつも出来てるからね、皆確認しておくれ」
「にゃん! ピカピカの新しい双剣だにゃん!!」
「サイズぴったり」
「素敵な防具ね、嬉しいわ」
「魔力を貯めておけるアクセサリー---- バーバラ様有難う御座います」
「こんな事しかしてあげられないけどね、頑張っておくれ」
「「はい!!」」
バーバラさんにお礼を伝えて、俺達は直ぐに出発の準備を始めた。予定よりも時間がかかってしまっているので、少しでも前に進んでおきたい。
荷物を背負い家からでると、バーバラさんとシンリーが俺達を見送りに外まで出てきてくれた。
「また何かあったらいつでも呼んでおくれ、直ぐに飛んで行くからさ」
「ばあちゃん、俺も行くよ! 絶対ついて行くからな!」
「遊びじゃないんだよ、ったく-- 皆死なないようにね。怪我には気をつけるんだよ。特にユウマ、10回目の討伐だからって気を抜いちゃあダメだからね」
「分かったよ。バーバラさん、シンリー色々有難う。頑張ってくるよ、また会おう!」
「バイバイ」
「有難う御座いました。行ってきますね」
「お世話になりました。バーバラ様とシンリーもお元気で、またお会いしましょう」
「にゃうん、有難うなのにゃん!!」
皆で手を振りながら、暗い森の中を歩いて行く。バーバラさんとシンリーは俺達の姿が見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。
「最初はどうなるかと思ったけど、いい出会いでしたね」
「にゃん、武器まで作ってくれたにゃん!」
「ご飯美味しかった」
「ええ、優しい方でしたわね。今度お礼をしなくてはいけませんわ」
皆来た時とは大違いの顔で道を歩いている。バーバラさんとシンリーに出会い、手に入れた装備が嬉しくて喜びが隠せないようだ。
ま、俺も同じだな---- 早く戦いてえ。
体の横にある拳を握りしめると、肩に乗った白が頬に頭をすり寄せてきた。
「よし、皆。魔王の拠点へ向けて出発だ!」
魔王の拠点まであと少し、俺に続いて皆が声を上げると皆で一斉に走り出した。
有難う御座います!
次は新たな魔王四天王を出す予定です!




