15.伝説の大蛇
「よし、そこまで!」
洞窟近くまで移動してきた俺達は、野営テントを立てパーティーとしての戦闘練習とスキル取得やレベルアップに向けて修行をしている。魔王軍四天王の強さも分からないし、魔王がどれくらい強くなったか分からないからだ。
1ヵ月この場で過ごし、少しずつだが皆の事も分かってきた。
フローラは見た目と同じく根も真面目だが少しだけおっちょこちょいで良く塩と砂糖を間違えたりする。キノコのスープが甘かった時には驚いて吹き出してしまった。他には天然な発言が多くよく皆からいじられている。
レーリアは色気あるお姉様だが、中身はただの戦闘狂だ。防御スキルを早めに取得して新たな剣の創作に励んでいる。水浴び場で鉢合わせた時はビビったが、向こうは何も気にしてないのかむしろ俺に近づいてきやがった。
ミンハさんはレベル上げの為魔物が来ると1人で倒していく。スピードを上げるスキルを取得し、オズの様に杖で叩いて魔物を倒す幼女を見るのはアニメの様で面白い。俺が1人で修行していると必ず近くにミンハさんがいて俺を魔物から守る様にこっそりと巡回している。
サバンナは1番バランスの良いレベルの上げ方をしていて愛嬌があり何より力持ちだ。案内するというだけあって1人で野営場所にテントを立てたり、夜の見張りを進んでしてくれている。たまに獣人族の仲間を呼んで休んでるみたいだが、他の獣人族の姿を俺は見たことがない。
俺達の配置はミンハさんとレーリアが前衛、俺とサバンナが中央にいてフローラが後衛と決まった。これから洞窟を進むにあたり1列になった場合、レーリアが前かミンハさんが前かで2人が揉めだして全然決まらない。
2人とも戦いたい気持ちが強すぎてお互い引かないので結局ジャンケンを教えてミンハさんがチョキで勝ちやっと順番が決まった。
ミンハさん、レーリア、俺、フローラ、サバンナで進む事となり、修行を終えた俺達は荷物を纏めて洞窟へと入っていく。
最初の洞窟は道が険しいと聞いていたが、進めど険しい場所なんかなく、途中から幅も広いし平坦な道しかない。クリスタルの中にいるような洞窟に少しだけ浮かれながら観光気分で歩いて行った。
「なあ、最初の洞窟は道が険しいんだよな? なんか平坦すぎないか?」
「にゃにゃー、前にここに来た仲間はそう言ってたにゃん」
「そうなの。おかしいわねー、歩き易くてなんだか気が抜けてしまいそうだわ」
「そうですね、何があるか分かりませんし気は引き締めておきましょう。ミンハ? 何か見つけたの?」
「ここ見て」
ミンハさんが指さす場所を見れば道の端にあるクリスタルの結晶が何故か溶けて変色している。
他の結晶も確認してみると、道の端のクリスタル全てが変色し青から紫になってしまっていた。
------ これは一体どういう事なんだ?
平坦な道をよく見てみれば、大きな物体が道を削ったかのように擦れた後が残っている。道に残る擦れた場所をしゃがんで触ると粘ついた液が指についた。
------ うわっ、気持ち悪るー。何だこれ----
粘ついた液をサバンナに見せる為立ち上がる。サバンナのいる場所を確認し歩きだしたとたん洞窟が急に大きく揺れ出した。
「ここは危ないですぅ! もう少し先に行くと水がある広い場所がある筈にゃん! 皆そこまで走るにゃん!」
俺は近くにいたミンハさんを脇に抱えて走り出す。フローラはサバンナに抱え上げられて走りながら皆でどんどん先に進んでいく。振動が大きくなり、クリスタルが上から落ちてきて当たりそうになりながらも進んで行くと小さな滝がある広場に到着した。
------ 振動はあるけどここなら大丈夫そうだな。
青い光とクリスタルが絶妙に美しく、滝から流れる水と泉は透き通っていて、初めて見る光景に胸が躍りワクワクして洞窟内を眺めた。
「ふいぃー。聞いてた話と違いすぎるにゃん。早く洞窟を抜けた方が良いにゃん」
「そうだな、後どれくらい何だ?」
「んー、情報通りだと今までの距離の3倍くらいにゃん。走れば夜までには出られるにゃん!」
「フローラとミンハさんは皆で背負って行くとして、レーリアは大丈夫か?」
「私は大丈夫です。体力には自信ありますから」
「そ、そうか。じゃあ少し休憩したら走って洞窟を抜けてしまおう」
「あいあいさあ! 私はちょっと先がどうなっているか確認してくるにゃん!」
サバンナは奥にある道へと軽快に入っていき、俺達は滝が流れる泉の近くへ腰を下ろし喉を潤した。冷たい水に満足しながらサバンナを待っていると、収まっていた振動がどんどんとまた強くなる。
まあ大丈夫だろうとのんびり過ごしていたら何やらサバンナの声が聞こえてきた。何を言ってるかまでは聞こえず耳を澄ましていると叫ぶような声で何かを訴えている。
「---- げ---- みな--- てにゃ-- み-- 逃げてにゃーん!」
逃げて? レーリアとフローラが顔を見合わせて首を傾げたと思ったらサバンナが転がるように走って戻ってきた。
「皆、逃げてにゃーん!! 早く戻るにゃーん!!」
意味が分からず呆然としたまま座っているとサバンナの後ろから馬鹿でかい影が見え更に振動がグラグラと強くなる。
「にゃー、逃げるにゃん! 大蛇にゃーん!」
はあ? 大蛇って----
伝説の大蛇は次の洞窟にいるって言ってなかったっけ?
サバンナの後ろにいた馬鹿でかい影が光にあたり真っ白な大蛇が姿を現した。口元からは長い舌を垂らし紫の毒らしき液体が垂れている。大蛇は体を震わすと地面の周りに紫の霧を撒き散らし始めた。
凄えでけえ! これが伝説の大蛇か!
まさか真っ白とは---- もっとえぐい姿を想像してたけど綺麗な姿だったんだな。
とりあえず、このままここにいるのはやばいか----
「皆あの場所まで移動だ! 決めたフォーメーションにまずはなろう! レーリア、ミンハさんを頼む!」
俺は隣にいるフローラの手を掴んで思いっきりジャンプしながら横抱きにする。
自分で指差した広い場所に降りてフローラを降すと、前に出て配置についた。
レーリアはミンハさんを連れて来て2人で俺の前に立つ。サバンナは焦っているのか走りながら思いっきり上に飛んで俺へと向かってきた。
にゃーん! といいながら俺に勢いよくぶつかってくる。
「怖かったにゃーん。デカ過ぎるにゃーん!」
「おい、サバンナ。早く降りろ」
サバンナを手で払って大蛇を見上げると、紫の霧に包まれた白い大蛇は俺達と対峙するように塒を巻いていた。
思ったよりも早い大蛇の出現に戸惑いつつも、伝説という言葉に興奮し周りの世界は色鮮やかになっていく。
美しいクリスタルの洞窟に伝説のモンスターなんてまるでゲームの世界だ。
これだよ、これ! 早く戦いてえ!
俺は空間収納からナックル武器と装備を取り出し急いで身につける。
硬い鉱石の糸で作られたマントを羽織り、ナックル武器をつければ準備は万全だ。
「よし、皆準備はいいか? 伝説の大蛇と戦闘開始だ!」
俺の言葉と共に、前衛であるミンハさんとレーリアも興奮しているのか凄いスピードで大蛇へと向かって行った。
読んで頂き有難う御座います!
初めて勇者ものを書いてますがとても楽しいです。
戦闘シーンは特に楽しく、次は大蛇との戦闘なので気合いを入れていきます!




