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13.女神なんか嫌いだ!

ブクマ有難う御座います!

 ゴスロリから放たれた赤い十字架の光を見届けてから街へ戻ると、門の所で待ち構えていたギルドマスターに何故か抱きしめられた。


 体格の良いおっちゃんに抱きしめられて複雑な気持ちになったが、悪い気分にはならず何だか恥ずかしい。魔物を倒して感謝された事なんかない俺はあたふたしてしまった。


 ギルドマスターと色々話しをしていると、冒険者ギルドで絡んできた奴らが俺達の近くに寄ってきて謝ってきたが、許すとかそういう気分でもなく返事をしないままギルドマスターに挨拶してその場から離れる。


 まあマスターのおっちゃんが今後情報を送ってくれるみたいだし、ギルドカードと素材を売った金も無事貰えるみたいだからゆっくりと寝るか---- 早くベッドに転がりてえ。 


「勇者様ぁ、夕ご飯はどうされますかぁ? 素材の買取もサービスしてくれましたしぃ、魔物を倒した賞金も入るから好きなのが食べれるにゃん」


「そうだなあ----」


 正直な事を言えば精神的にも疲れていて飯も食いたくない。ゴスロリに言われた言葉は俺の胸につき刺さったまんまだ。魔王がレンタル勇者と言って笑ってたなんて---- 


 ---- そういえばレンタル製品ってゴスロリが言ってたよな? あの時はムカつき過ぎて考えられなかったけど、こっちにもある言葉なのか?


 ゴスロリを思い出して余計に腹が立つ。はあ、しかも魔王軍四天王ってなんだよ、面倒くせえ。


「夕間様? お疲れでしたら何か屋台で買ってお部屋で食べられますか?」


「あ、ごめん。皆はどうする?」


「そうねえ。宿の食事で私はいいわ。立派な宿でしたし」


「私は何でもいいにゃん!」


「ミンハ、肉がいい」


「じゃあ、宿で食事を頂きましょうか。戦った後ですしゆっくり休みましょう」


 皆と歩いて宿へ辿り着くと思いの外立派な外見にラズロの顔が浮かんできたが、頭を振ってそのままロビーへと足を踏み入れる。


 孫が泊まるとなると立派なホテルだな---- こんな高そうな宿に泊まるの初めてじゃないか? ラズロの時は普通の安宿だったのに---- 金かかってんなあ。


 皆は一度着替えるようだが、部屋に行けば寝てしまいそうなので鍵だけ受け取ってそのまま食堂に行く。皆が降りてくるのをテーブルに伏せて待っていると、何処から現れたのか女神が俺の横に立っていた。


「勇者よ。お疲れですね」


「はあ---- 何だ? 今まで出てもこなかったろ」


「私なりに勇者には負い目を感じているのです。申し訳ありません。何度も世界を救ってくれてありがとう」


「負い目? まあいい。それで? 俺に何か用か?」


「はい---- 魔王軍四天王の1人と先程戦っていましたね?」


「そうだけど、あいつらは一体何だ? 今までいなかっただろ」


「そうなんですが---- 今回になっておかしな事になっているのは私のせいかもしれません」


「お前のせい? どういう事だ?」


「勇者に前々回倒された時、魔王は眠る前に私へ泣きついてきたのです。女神と魔王は表裏一体。元々一つですから意識の深い所で繋がっていまして---- 魔王は泣きながら勇者にもう会いたくない、他の奴に変えてくれと言いました。私が不可能だと伝えると、魔王は大泣きして子供の様に駄々をこね始めたのです。私は魔王の泣く姿に同情してしまい--- 仕方なく魔王の気持ちに答えてある事をしてしまいました」


 何言ってんだ? 同情ってなんだよ。


 ---- ふざけんじゃねえ。


 少し魔王に同情してた俺も馬鹿だった。俺だって泣きてえよ---- 女神もなんだ? 勝手な事ばっか言いやがって。


 立ち込める苛立ちは一体誰になのか---- 魔王か? 女神か? 魔法陣に俺の名前を縛った奴か?


 誰かじゃねえ、全部にだ!


 ドンッ! とテーブルが俺の拳によって大きく音を立ててグラつく。俺は体が震え感情を制御出来ないまま声を張り上げた。


「---- おい女神、同情だって? ふざけるなよ!」


「勇者---- 怒るのも当たり前ですね。私が間違えていました。本当にごめんなさい」


「謝ったら許されると思うなよ? それでお前は何したんだよ!」


「私は---- 魔王を勇者の世界に送ったのです」


「は? 俺の世界?」


「はい---- 少しは気が晴れるだろうと軽い気持ちで勇者の世界に送りました。少しは勇者の事が分かるだろうと----」


「何で俺の世界の事を魔王が知るんだよ! 意味分からねえ。そんな事出来るなら俺の名前を魔法陣から解放しろよ!」


「それは---- 魔王を倒して勇者の願いがそれで良いのなら出来ますが----」


 何だよ、それじゃあ俺は帰れねえじゃねえか! 魔王が泣いたら同情するくせに、俺の事はどうでも良いのか? 関係ないお前の世界を何度救ってきたんだ! 女神なんてただ見てるだけの癖に---- 



「俺は魔王と2度と戦わない、もう放っておいてくれ。この世界の事なんて俺には関係ないし、お前が救えばいいだろ!」


「勇者----」


「勇者って呼ぶな! もううんざりなんだよ! 俺が何したんだ? 俺だって魔王になんか会いたくねえよ!」


「夕間様----」


 後ろを振り向くと皆が同情するような顔で俺を見ている。


 ---- 皆に聞かれるなんて---- そんな顔して俺を見るな!


「クソっ。俺部屋に行くわ。1人にしてくれ」


 女神と皆の顔が見たくなくて、下を向いたまま駆け出し部屋へと向かう。


 部屋に入り扉を強く閉めるとその場に座り込み涙が流れる。漏れる嗚咽は止められず喉の奥が痛い。扉にもたれかかり、膝を胸元で折って泣きじゃくるように泣き続けた。


 ------ もう嫌だ、何で俺だけこんな思いして生きてんだよ。10回目だぞ? 俺の4年半返せよ!


 友達はいない、親にも放ってかれてる俺だけど、俺は生きてんだ。俺の人生は俺だけのもんだろ、誰かが好きに変えていい訳じゃねえ。もう解放してくれ---- 十分戦っただろ? いつまで戦えばいいんだよ----


「夕間様---- 大丈夫ですか?」


 声かけてくるなよ---- 放っといてくれ!


「夕間様?」


「うるせえ、1人になりたいって言っただろ! 声かけんなよ!」


 沸騰するように頭に血が上り腹の底から声を張り上げた。声を出しても気持ちは収まらず、フローラへ八つ当たりするように捲し立てる。


「お前らは良いよな。国が魔王の復活で危なくなると俺を呼べば良いんだから。勝手に召喚して使い捨てのように魔王と戦わせるんだ。フローラだってそう思ってるんだろ? 俺に感情がないと思っているのか? そんな訳ねえだろ! 俺は人間なんだ、勇者何て立派なもんじゃないただ都合が良い人形のように扱うな! もう解放してくれ俺は戦いたくない!」


 大きな水の粒が両目から流れていく。涙が溢れ鼻水も垂れて顔がもうグチャグチャだ。


 何だよ---- 喉も鼻も胸も座る尻も頭も全部いてぇ。


 頭を膝につけて痛みが収まるよう体を小さくするが、涙が止まらず一向に収まる気配はない。


 もう嫌だ---- いなくなりてえ。


 その方が楽だよな---- 死ぬのも良いかもしれない。


 死ねば召喚に怯える事もないし、新しい人生をやり直せるかもしれない---- リセットやチャプターが選択出来るならもうしてるくらいだ。俺なんていなくていいだろ、別に俺じゃなくても問題ないし誰も困らねえ------


「夕間様---- 夕間様はもう戦わなくても大丈夫ですわ。お祖父様は夕間様を召喚しなくて済むよう動いていましたが、魔王が思いの外早く復活し間に合わなかったのです。結局頼ってしまい情けないですが、私達の力で魔王をきっと倒してみせます。今まで世界を何度も救って頂き、本当に有難う御座いました」


 扉の向こうからフローラの足音が聞こえ徐々に小さくなっていく。弱々しく歩く足音からフローラの心情が感じられて、胸が一層苦しくなった。


 暗い底にいるような感覚になり、暗い部屋が更に暗く感じて何も見えない。


 ---- 戦わなくて良いだなんて今度は何だよ、俺の力が無くても平気なら最初から呼ぶなよな。


 あーもう分からねえ。フローラは何が言いたいんだ? もう俺は要らないって事か?


 違う---- そうじゃねえ、俺の事を思って言ってくれたんだ。


 ラズロやフローラの気持ちなんて知らなかったし知ろうともしなかった。自分の気持ちを優先して、他人の事を見下したり知ろうとしないなんて---- このままじゃ俺がムカついてた奴らと一緒だ。


 気持ちがゆらゆらと揺れて涙が止まり、段々と気持ちが落ち着ついてくる。胸の痛さが無くなったけど、今度は罪悪感が重くのしかかってきた。


 あー理不尽な事ばっかりだ。


 俺を召喚した相手に罪悪感を感じるなんて---- 悪い事ばかり考えてたけどそれだけじゃなかったな。


 今までの事を思い出す。


 優しくしてくれた奴もいたし、今日何てギルドマスターに抱きしめられたしな。


 少しはオズだったり、俺の事を考えてくれたフローラやラズロへ何かを返したい。 


 俺が出来る事って、結局魔物や魔王を倒して皆の生活を守る事なんだよな。そー考えたら勇者で良かったと少しは思えるかもしれないし、今までの4年半に意味があったと思えるかも。


 俺ってどういう風に生きたいんだろ。生きるってただ息してりゃあいい訳じゃないよな。


 胸元にあった膝を伸ばしフーっと息を吐く。


 顔を上げると暗かった筈の部屋に月明かりが差し込み、暗い底から抜け出したように感じられた。希望の光みたいだな。俺は光に導かれるよう気持ちを入れ直し、両頬を強く叩いた。




読んで頂き有難う御座います!


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