12.ゴスロリを倒しましょう!
ヤバっ。これは死なないとしても受けたくねぇー
アジリティラッシュと風を使って光の玉すれすれに上へと高く飛んだが、地面に光の玉が当たり強い衝撃波が押し寄せてきて全身に痛みが走る。体を飛ばされながらも痛みに耐え空中で体勢を立て直し、凶悪なウサギのぬいぐるみの頭の上に着地した。
ハア---- ちょっとヤバかった。
先程の光の玉が当たった地面を見ると、えげつない程地面に大きな穴が出来ている。ミンハさんの魔法や俺の攻撃によって出来た穴も合わさって、周りを見渡せば元の穏やかな緑溢れる景色と真逆の景色になってしまっていた。日が落ちてきたのもあり地面は赤く染まり地獄絵図のような光景に息を吐いた。
あまり長引くと余計に酷くなりそうだな。とりあえずこのウサギをどうにかするか----
「ダークチェイン---- ダブル」
地面から黒いチェーンが通常の2倍出てきて、ウサギの縫いぐるみに巻き付いていく。拘束しながらジワジワとHPを削る優れた魔法だ。
「貴方ねえ! 攻撃を交わしてウサちゃんを拘束するなんて酷すぎるんじゃないかしら? 良心というのもがないのぉ?! 普通は攻撃を受けて倒れるべきでしょう!」
------ いや、お前が良心とか言うなよ。
「トルネード」
ゴスロリに向けて竜巻を起こすと、ゴスロリが竜巻にのまれたのを見てライトニングボルトで電流を流し込む。トルネードは攻撃しながら相手の動きを少しの時間止める事が出来るので他の技と組み合わせがしやすい。
竜巻が消え宙に浮いていたゴスロリは地面に叩きつけられる。攻撃が効いたのか体を震わせながらも立ち上がると、髪を振り乱して地団駄を踏み始めた。もはや最初の頃の巻き髪はなくなりボサボサになっているし、服も破れてしまいボロボロだ。
「もう! 私の美貌がだいないじゃない! あんた一体なにしてくれるのよ! もう魔王様に怒られるー」
ギャアギャアと騒ぐゴスロリから目を離せずにいると、俺の後ろから早いスピードで光の矢が通り過ぎていきゴスロリへと向かっていった。
ゴスロリもいきなりの光の矢の出現に驚いたのか、パニックって何故かその場で回ってしゃがみ込む。
何でしゃがむんだ? 意味分からねえ----
パァン! と音と共に光が弾けるとゴスロリが光の矢を受けて唸り声を上げて蹲った。俺は凶悪なウサギの頭から地面へ降りて後ろを振り返る。
「夕間様ー! お怪我はありませんかー?」
フローラはレーリアの背に乗りながらこちらに手を振っていた。石壁の上に置いてきたミンハさんも、サバンナに片抱きされて俺の元へ凄いスピードで向かってくる。正門の方へ視線を送ると魔物の姿はなく、冒険者達がこちらを見ていた。
「にゃにゃ! このウサギは何にゃん?」
「凄い大きいわねえ。黒い炎が見えるけど触れるのかしら?」
「かわいくない」
3人がウサギに集中している中、フローラが俺の側にきてヒールをかけてくれる。
「大丈夫ですか? あの女性は一体----」
「ああ、何か魔王軍四天王の1人らしい」
「魔王軍四天王のですか? どういう事でしょう? 聞いた事がありません」
「俺も初めて聞いて驚いた。名前なんだったっけな----- ごめん忘れたわ」
「ちょっと---- ちょっとちょっとお! ジュリアーニよ! ちゃんと覚えなさいよね! このレンタル勇者!」
「は? ------ お前なんて言った? レンタル勇者?」
「あらあレンタル勇者でしょう? 魔王様が言ってましたわよ? いつも召喚されて倒しにくるって、異世界から何度も来るから人間共に借りられる勇者。まるでレンタル製品だなって笑っていたわあ! 人間達に上手く使われて馬鹿みたいね。お人好しなのかしら?」
「------ ふざけんなよ」
俺の体内にある魔力が一気に膨れ上がり、電気がピリピリと流れ出す。怒りで我を忘れてしまいそうだ。
レンタル勇者だなんて、俺が1番分かってんだよ。俺の辛さや苦労がお前らに分かるのか?!
ただ借りられてるんじゃねえ、俺は命がかかってるんだ。気楽に何度も召喚されて怒ってねえ訳ないだろ、俺だって自由に生きたいし好きな事しててーよ。
お前ら何かに馬鹿にされてたまるか、好き勝手言って笑ってるんじゃねえ!
「ライトニングボム」
俺は自分の強く握りしめる拳に魔法を纏わせる。
歯を食いしばり魔法の勢いに耐えながら地面に足を突き刺した。
「あらあ、泣いちゃったかしら? そんな拳じゃあ私は死にませんわよ! ウサちゃん! 砲撃するわよ、準備なさい!」
ウサギが体を震わせ空気を吸い始めたが、目は光らず窪んで黒いまま何も変化は起きない。
「な、ウサちゃん! 砲撃ですわよ、砲撃ぃー!!」
「残念ですね。ウサギさんはもう攻撃出来ませんよ」
「にゃにゃん!」
俺とフローラの横に、後ろにいた筈の3人が並んで立った。
「なあんですってぇ?! 貴女達何かウサちゃんにしましたわねー!」
「穴開けた」
「あなぁ?! そんなものでウサちゃんが動かなくなる訳ないわ! ウサちゃん砲撃しなさい!」
「無理だにゃん! お尻を切ったから後ろがもうないにゃん!」
「はあ?! 後ろがないぃ?!」
「ええ、もうないですよ。お尻から綿が出てきたけど本当に縫いぐるみなのね」
「残念」
「お前、もう手がないんだな」
俺は拳に纏わせた魔法の威力そのままに、一歩一歩地面を踏みしめながらゴスロリへと近づいていく。
「ひっ、ひぃぃ---- 嫌あー! 来ないでよお!」
ゴスロリは俺から逃げるように地面へと這いつくばった。腰が抜けてるのか動きは鈍く、まるでカエルのような姿のゴスロリを上から見下ろす。
「お前、俺の事レンタル勇者っていったよなあ?」
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! 取り消すからあ、レンタル勇者だなんてもう言わないからあ」
「ふざけんなよ。何が取り消すだ、取り消せる訳ねえだろ! それを言っていいのは俺だけなんだよ。お前に笑われる筋合いなんてねえ」
拳を更に強く握りしめ、左足を前に出し腰を外側に捻って思いっきり拳をゴスロリに向けてぶっ放す。
「俺だってこんなのもう嫌なんだよ!」
拳がゴスロリの頭に当たると同時に纏わせた魔法を一気に放出した!
ドォオオーン!!! 激しい音と共に一体が光に包まれる。
ゴスロリは地面に張り付いたまま黒こげになると、体が急に淡い赤い光に包まれていく。
光が体の中心に集まると十字架の形をしたデカい光が出現し、ゴスロリの体は光の中へと消えていった。
俺は十字架の光を下から見上げて、赤くなった空を見つめる。握りしめた拳に違和感を感じて掌を覗き見ると、爪の跡がしっかりと残り血が滲んでいた。




