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11.魔王に四天王?!

 取り残された俺達は、ギルドマスターに呼ばれ大人しくついていく。


 2階にあるギルドマスターの部屋に着くと、ギルドのお姉さんに促され近くのソファへと座った。ミンハとサバンナも俺の横へ座り静かにしていると、大男は足を踏み鳴らしながら対面するソファへと行きドカっと音を立てて座る。前屈みになりながら睨んできたので、俺もムッとして大男へ睨み返した。


 ---- そっちから仕掛けてきたんだろ? やられた癖に面倒くせぇ。


「それで? ギルド内での乱闘は禁止だとジンは知ってるよなあ、何があったか話してみろ」


「マスター、こいつらのカードの色がおかしい。まずはそれを調べてくれ。どう見ても弱そうじゃねえか」


「ほう。ギルドの石板が間違ってると言いたい訳か?」


「い、いや、ギルドを疑ってるんじゃない。こいつらが何か細工したんじゃないかと----」


「偽装? そんな事が出来ると思ってるのか? まあいい、リンこいつらのカードを渡せ」


 先程のお姉さんが俺達のカードをギルドマスターに手渡すと、ギルドマスターは渡されたカードを1枚1枚じっくりと確認していく。黒いカードを見て目を見開いて驚いていたが、カードをテーブルに置くと溜息を吐いた。


「この黒いカードは誰のだ?」


 ------ 疑われてんのか? やっぱ作らなきゃ良かった。ギルドって変わらねえよな---- 


「俺のです」


「このカードに書かれた文字は何だ? 何て読むんだ?」


 テーブルにある自分のカードを確認すると、夕間と漢字で書かれている。


 文字が違うから読めないのか。不思議だなあ、どうして漢字なんだろう---- 言葉だけじゃなくて、意識も関係あるのか? レベルも読み取れるし凄い魔道具だなあの石板。


「おい、早く答えろよ! マスターが聞いてんだろ!」


 こいつマジ煩いな。弱いくせに何なんだ? ったく脳筋にだけはなりたくねえ。


「ハア---- これは俺の世界の文字です。名前は夕間」


「ユウマ---- もしや---- クガユウマか?!」


「そ、そうですけど----」


「これは失礼した。おいジン! このカードは本物だ、早く謝れ」


 ---- え?! なんだこの展開?


「マスター、もう少し調べてくれよ。おかしいだろ!」


「いや、何もおかしくはない。むしろ名前を聞いて分からないお前が馬鹿だ。クガユウマは勇者だ。レベルも間違いないだろう。何度も召喚されてると聞くしな」


「はあ? 勇者?! こんな奴が勇者だって?! ハハ! マスターそんな訳ないじゃないですか、こんな細い奴が勇者? 笑いが止まらねえや」


 ----- 何か段々腹立ってきた。こいつマジ何なんだ? やっぱ蹴っときゃ良かった。


 苛々しながら笑い続ける大男を睨んでいたらギルドマスターが立ち上がりズカズカと歩いて大男の頭をいきなり殴った。


 よく分からない展開に頭が追いつかずポカーンとなる。ギルドマスターは怒鳴って大男を片手で掴み部屋から投げるように追い出した。


 大男を殴った意味が分からず無言のまま大人しくしていると、ギルドマスターが急に頭を下げ俺へと謝った。


「俺の管轄で起きた事だ。俺が謝ろう。本当に申し訳なかった」


 ---- ええ?! 全然分からねえ。


 こんな事今までなかったし---- いきなり謝られるとは---- 腹は立つけど笑われるなんていつもの事過ぎて普通っちゃ普通だし、嫌な思いばっかしてきたからよく分からねえ。


 こんな風に頭を下げて謝られたのは初めてかもしれないな---- このおっちゃんいい奴なのか?


「許してはくれないか。あんな風に笑われては腹が立って同然だな。ジンの冒険者カードは取り上げよう、それでどうだ?」


「や、もう良いんで気にしないで下さい」


「そういう訳にはいかん。俺にとってクガユウマは恩人なんだ。はいそうですかと言われても俺の気がすまない」


 お、恩人ん?! ますます分からなくなってきた。

 一体どういう事だ?


「あ、あのう。どういう事ですか?」


「俺の父親は元冒険者でな。魔物と戦っていた時に勇者に助けられたと言っていた。その時父親が死んでいたら俺は今ここにいない。父親は勇者の凄さをよく俺に話してくれたものだ。俺の名前はクーガ。勇者にちなんで名前をつけたと父親から言われた」


 ---- 俺誰か助けたっけ? 全然覚えてねえ、良く俺から名前をつけたな。しかもクーガって---- ユウマが名字だと思ってるんだろうな---- 


 感謝されたのなんて初めてだな。雰囲気的に覚えてないとは言いにくいし、何て返せば良いんだ? そうですか、とかでも良いんだろうか----


 無言のままあれやこれやと考えていると、部屋の扉が大きな音を立ててギルドの職員らしき若い男が酷い表情で現れた。転がるように慌てて入ってきて、息をするのが苦しそうだ。


「マスター、ま、魔物です! 沢山の魔物が街の正門に向かって来ています。想定数は100!」


「魔物?! 何で魔物なんか---- と、とりあえずギルド内にいる冒険者を正門へ向かわせろ! 街に滞在してる冒険者には手分けして声をかけるように! 報酬はギルドから出そう。早く魔物を倒すぞ!」


「分かりました!」


 魔物が来たのか? 数は100って聞こえたよな? 


「クガユウマ。是非とも力を貸してくれないか?」


「あー ----」


 サバンナとミンハの顔を見ると、2人はやる気に満ち溢れた顔で頷いてきた。


 まーしょうがねえ、これも何かの縁かもしれないし、殴ってすっきりするか。


 よし! 久しぶりの戦闘だ!


「分かりました。この空閑夕間。街を救いましょう」


「おお、そうか。勇者がこの街にいてくれて助かった」


「任せて下さい。サバンナ、フローラとレーリアを呼んできてくれ、ミンハは俺と一緒に先に行こう」


「あいあいさあ、勇者様お気をつけてぇ!」


「ユーマ早くいこ」


「ああ、じゃあマスター俺達は行きます」


「勇者よくれぐれも宜しく頼む」


 駆け足で階段をおり建物から出ると、先程までいた街の人々は消えていて何人かの冒険者が正門に向かって行くのが見えた。


 サバンナと別れ街の中心にある噴水広場まで走って行き、ミンハを脇に抱えて正門がある方角へと体を向ける。身体強化を足にかけ地面を強く蹴ってジャンプしてから、足裏に風を送りさらに高く飛ぶ。


 空を飛ぶように高い位置で街の正門を見れば、こちらに向かってくる魔物の群勢が目に映る。2足歩行で鬼のような姿をした奴や、4足歩行の獣みたいな奴もいて結構な数の魔物が近くまで来ていた。


 建物の屋根をつたって正門の石壁の上に着地する。魔物の数は100と聞いていたが、それよりも多い数がいるように感じた。ミンハを脇から下ろし正門に目を向けると、冒険者達が怯えるように立って武器を構えている。


「ミンハはここで正門から魔物が入らないよう守って欲しいんだ。魔法で攻撃してくれると助かる」


「むー、わかった」


「ミンハ頼んだぞ、俺は行ってくる」


 空間収納からお気に入りのナックル武器を取り出し拳にはめる。


 ナックル武器に魔力を流すとビリビリと電流が走りだし武器が光り始めた。久しぶりに使う武器に嬉しくなりながらも、魔物の群勢の中へ突っ込む為呼吸を整える。


 息を吸って高く空中を舞い、魔物が沢山いる場所へ勢いよく突っ込み魔物へと拳を振り上げた。ドォオオーン!! という音と共に何体かの魔物が吹き飛んだのを見て、更に拳を振り上げていく。


 後ろから攻撃をしてくる奴には後ろ蹴りで対処し、精神を集中させて連続技で魔物を殴りながら前へと進む。途中で魔物に囲まれ魔法を展開して広範囲に攻撃を仕掛け数を減らしていく。


 数が減らない事に不安になり正門へ視線を送ると、何体かの魔物が冒険者と戦っていたが、ミンハの魔法らしき攻撃が始まると魔物が次々に倒れていく。炎と岩のような物が土砂降りの雨の様に降っているのを見て、レインってこれかと思った。


 中々良い魔法じゃねえか! 凄えなー


 余所見する俺へ後ろから魔物が襲いかかってきたのか、背中にいきなり衝撃を受け体勢が膝から崩れ落ち背中に痛みが走りだす。


 痛え、よそ見してる暇はないか----


 後ろをすぐさま振り向くと3体の魔物が俺の目の前に立っていた。ハアっと息を吐き俺は地面へ思いっきり拳を入れる。


 グラグラと地面が崩れ出し俺から半径5m程の地面は形を変え窪みができていく。目の前にいた魔物も地面の中へと埋まっていった。周りに魔物がいないか今度は確認して再び正門を見る。


 よし、これで少しはミンハの魔法が見えるな----


 どれどれ------


 今度は炎の海が出現していて、魔物達を強い火力で燃やしているようだ。


 ミンハは後方支援でも良いかもな---- これだけ火力があれば役立つし前衛にいる必要もない。


 ただなあ。オズのように戦いたいんだろうなミンハさんは----


 何かミンハって幼女だけど、ミンハさんってしっくりくるな。今度からさんつけよー。


 じゃあ、ちゃちゃっと残りもやりますか。フローラやレーリアを呼ばなくても良かったかも----


 まあいいか。早く終わらせて上手い飯でも食うかな。


「ライトニングボム」


 魔物の群れに向かって必殺技を放つ、光が早いスピードで群れ近くまで行くと光が膨張して膨れ上がり爆風と爆発音が俺まで届いた。ライトニングボムは攻撃力が高く、爆風でさえもかなりの威力がある技なので数を一気に減らす事が出来る優れた技だ。単体に当てればより威力が高まりかなりのHPを減らせるので、魔王を倒す時に役立っている。


 これで大分減ったな、後少しみたいだし一体ずつ倒していくか。


 身体強化で足に力を入れて走り出すと、前方の空中に何か浮かんでいるのが目に映り込んだ。どうやらこちらに向かってきているようで、段々と人の形になるのを見て俺は足を止めて立ち止まった。


 ------ なっゴスロリ?! なんでこの世界にゴスロリなんていんだよ。しかも右目に⭐︎がついてるし、何より紫の唇が気になる----


「貴方が勇者かしら? 私は魔王軍四天王の一人ジュリアーニ。宜しくお願いしますわ、ホォーッホッホ!」


 ------ 魔王軍四天王?! はあ?


 今までいなかったじゃねえか! どういう事だ? しかし今度の召喚は女ばかりだな、敵といえど今度は何故かゴスロリ---- 


 小さなハットの下にある沢山の縦ロールを見て突っ込みたくなる。その巻き髪、一体どうなってるんだよ!


「なあ、四天王って今までいなかったよなあ?」


「あらあ、なんていい質問かしら? 魔王様は私達を体の中で長い年数をかけて育てて下さいましたのよ。この度、無事に産まれる事が出来て幸せですわぁ! ホォーッホッホ!」


 体の中---- どうやって育てたんだ? 前に見た時腹出てなかったぞ?


「おい、長い年数ってどれくらいだ?」


「気になったかしら? そうよねえ、気になるわよねえ! でも教えてあーげない、それじゃあつまらないですものねえ! ああ私って天才かしらぁ? ホォーッホッホ! 貴方はここで知らないまま死んでしまうの、お辛いですわねー 悲しいですわねえ? そんな事も思わない内に殺して差し上げますわっ!」


 ゴスロリは空中から凄いスピードで俺へと突っ込んでくる。俺は慌ててゴスロリから離れ体勢を立て直した。宙に浮かぶゴスロリと対峙し俺はゆっくりと息を吸う。


「ライトニングボルト」


 手からビリビリとする光をゴスロリに向けて放つ。煙りが上がったので直撃したかと思っていると、煙りの中から愉快な顔をしたゴスロリが俺へ突進してきた。


「ぬいぐるみ爆弾よお、行きなさい!」


 空中に可愛いクマのぬいぐるみが現れゆらゆらと俺へと向かってくる。


 なんだ? こんなぬいぐるみなんか出して---- 呆れて立っていたらぬいぐるみが俺の目の前にきていきなり光を放った。


 やべえ、身体強化を全体にかけスキルを発動させる。ボディハーデンスキルは体を硬くし、攻撃力増加と防御力増加どちらも出来るお気に入りのスキルだ。


 ぬいぐるみが想像以上に大きく爆発し、爆風で俺の体が吹き飛ぶ。手を前で交差させて受けたのにかなり後ろまで下がった。


 いってえ。流石の俺も直撃は厳しいな。


「ホォーッホッホ! クマちゃんの爆弾はどうかしら? 可愛くて好きになりそうでしょう? 沢山プレゼントさせて頂きますわっ!」


 ゴスロリの周りに、何十体ものクマのぬいぐるみが現れ宙に浮いている。


 やれやれ、面倒臭い奴が出てきたもんだ。俺、女を殴る趣味はないんだよなあ、どうしよ。


「さあ、クマちゃん達! おゆきなさい!」


 ま、しょうがないか。


 話し方も苛つくし何より煩い、男がゴスロリの女装してると思っておくか。


 先程より早いスピードでクマが飛んできたが、俺にとっては遅すぎる。


 スキルを発動し、スピードを上げてクマをどんどん避けていく。アジリティラッシュスキルはスピードを上げて動くのに適しているので、点と点を繋ぐようにジグザグとスピードを出したままゴスロリの正面へ移動した。


 右手の拳にパワーと電流を溜めながら、軽くジャンプして勢いをつけるとゴスロリの顔めがけて思いっきり殴る。


「お前、ちょっと静かにしてろっ」


 俺の攻撃を受けたゴスロリは後ろへ結構な距離で吹っ飛び地面に跡をつけていった。


 地面に体を打ちつける音が聞こえなくなると、ゴスロリが上半身を起こして体を震わせ始めたので俺は右手を前にして身構える。立ち上がったゴスロリは、ゆっくりと空へ両手を広げて喚き出した。


 魔法か? デカいクマとか出てこないよな?


「あーん、もう許せませんわ!! 女の顔を殴るなんてぇ! 魔王様にも殴られた事ないのにぃ!」


 ゴスロリの声と共にデカいウサギの縫いぐるみが現れどんどん大きくなっていく。ウサギの顔を見れば目は窪んで真っ黒だし、口は×とただ縫われていて全然可愛くない。


 ウサギ?! 少しはクマの可愛さ分けてやれよ! 


 ウサギのぬいぐるみは更に大きくなり、黒い炎がウサギの周りに現れもはや凶悪なウサギにしか見えない。


 あー、もう面倒せえ。何なんだ今回の召喚は。いつもと違いすぎて疲れる。こんなのがあと3人もいるのか? 勘弁してくれよー。


「もう、ぜっったいに許せないですわ! ウサちゃん! あいつを倒して頂戴!」


 大きくなった凶悪なウサギは、宙を舞いながら俺の方へと向かってきた。


 ドォオン! と音を立てて俺と対峙するよう地面に足をつけたと思えば、体を震わせ空気を凄い勢いで吸い込んでいく。吸引力が強く足元がふらついたので葉を食いしばって耐えた。


 様子を見ていると、凶悪なウサギの片目が光を放ち縫われていた筈の×の口が♢の形へ変わりデカい光の玉が現れた。


 ---- な、何だ?! 大砲みてえじゃねえか!


 光の玉は渦を巻きながら徐々に大きくなっていく。ウサギのもう片方の目が光を放ち両目に色がつくと光の玉が勢いよく俺へと発射された。






読んで頂き有難う御座います!

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