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4.はじめまして さりげなさ




 それから、サシャの家には行っていない。お祭りにも行かなくなった。ザングとも、同じ区画だから姿は見るけれど、会ったと表現するような状態にはない。

 一緒に出かけなくなった私をサシャが心配するから、家にいる口実を作ろうとずっと本を読んだ。元から本は好きだったし、魔術の才があると分かってからは魔具作りも始めた。

 幸いこれも性に合っていたみたいで、そのおかげで今がある。

 アンを大事な私が、私の今を作った。

 それなのに私は、彼のことを、彼が彼だとすら知らなかった。


「一所懸命な恋は可愛いんだけどねぇ」

「何度断られても食い下がる様子は、可愛らしさより逞しさを感じる。実に軍人らしい根性だ」

「確かにねぇ」

「しかし、アンペロプシスにはカミノキミがいるわけだが、それがどう転ぶのやら」


 虚しさより寂しさが勝る感情を無理矢理押し込めていると、聞き慣れない単語が聞こえた。


「カミノキミって……何?」

「ああ、アンペロプシスには長い間文通している相手がいるんだよ。それも、間を置かずに」


 ディアは私の頭から離れ、私とロニの間に移動した。


「手紙の君で、紙の君。彼、取り合いになるご褒美の物資なんて見向きもしないで、通信部に一直線なんだよ。かーわいいんだ。その相手がアンペロプシスの好きな子なら、応援しちゃうかも」


 両頬を押さえて身体をくねらせるディアは、その高い位置にある腰で、私とロニを弾き飛ばす。


「あ、ごめぇん。で、それでね、紙の君のこと、エーヴァみたいな子は認めたくないみたいで、絶対に家族だーって言い張ってるんだけど。アンペロプシス、家族いないって言ってたんだよねぇ」


 エーヴァみたいな子、という言い方をしたということは、アンを好きな子は一定数いたようだ。


「愛想も出世も興味がない奴が好きになるのはどういう人間か、下世話と分かっているが気になるな」

「出世に興味がない?」

「ああ、それなりに有名な話だ。あいつ、本当なら大尉まで昇進していてもおかしくないらしい」

「大尉!?」


 凄まじい差だ。軍属の家系でもない、それも出自不明の若輩者の常識を優に通り越している。一体どれだけの手柄を立てたのか、見当もつかない。そこまでいくと、お父さんも追い抜きそうだ。


「えっと……今は」

「少尉だ」

「それは、また」


 随分と、差がある。

 下を纏める立場への変換を避けているのだろうか。大尉ともなると、流石に怯む気持ちも分かる。気楽にやっていきたいのなら、絶対になりたくない階級だ。

 それでも軍部からすれば、全ての特異性に目を瞑った上での任命だったはずだ。断った場合、色々と不利益を被った可能性すらある。逆に、そうまでして固辞した理由は何だろう。


「好きな子いるなら、出世して身を立てたいんじゃないのかなぁ。男の人ってさ、そういうとこあるじゃん? 紙の君への誕生日プレゼント、何あげたんだろうねぇ」


 干しムカデです。


「最新の手紙は、次の物が来るまで常に持ち歩いているらしいぞ」


 だから防水性能の高い便箋を定期的に送ってきたのか。

 私の手紙を持ち歩いていると知らなかった。そもそもアンが男だと知らなかった。その衝撃とこの衝撃、どっちが上かと聞かれると、アンと私が結婚している事実だと答えるだろうし、私は今日一日ずっと混乱中である。


「そういえばさ、アップルパイ嫌いなのかなぁ。前、頑なに断ってるの見たんだけど」


 もしかして、サシャのアップルパイを食べるまで食べないつもりなのだろうか。


「そうなのか? 青色が好きだとは聞いたがな」


 それは。それは、もしかして。

 私が。

 青を好きと、言ったから?


 私、あなたのこと、ちょっとだけ知っていると思ってもいいのだろうか。私とのやりとりを、あなたも大切に思ってくれていたのだと。そう、自惚れて、いいのだろうか。

 ……それにしては、知らないことが多すぎるのだけど。

 私の身を貫いた熱がすんっと落ち着く。しかし、瞳の色が二色という特徴を一色教えたからいいかと思っていた彼のことだ。大抵のことをどうでもいいと判断していた可能性がある。

 つまり、問わなかった私が悪いのかもしれない。

 あなたは女の子ですか? 聞いていない。

 あなたの瞳の色は一色ですか? 聞いていない。

 聞いていないのだから、アンが答えていないのは当然だ。成程成程、これはお互いさまということで手を打とう――……聞かないの、普通じゃない?

 釈然としない気持ちは残るものの、圧倒的に会話が足りないのは事実である。あれだけ長期間文通したが、聞きたいことも聞かねばならぬこともたくさんあった。その内の大半は今日できた。


 人伝に知っていく彼の中に、私が知っている事柄、それも私が関係している箇所を見つけて、ほっとした。そしてそれ以上に、やっぱり嬉しかった。

 話すのが、楽しみだ。

 『親友アン』と対面しそびれたような気持ちが燻っていた。諸々の衝撃で、なんだか出会い損ねてしまったような心地が蟠りとなっていたのだ。

 けれど私は、『アン』に会えていた。驚きのあまり、それを見なかっただけで。

 再度アンへと視線を向けた。視線の先には人だかりができていて騒がしい。

 先程まで、その隣にはエーヴァしかいなかったとは思えない人気ぶりだ。「かの有名な戦場の英雄アンペロプシス」と知った人々が、彼に殺到しているのだ。


「噂に名高い英雄が、こんなに若く美しいとは。いやはや、天は君に幾つの才を与えたもうたのか」

「アンペロプシス少尉は、どのような任務においても重要な役割を任せられ、そしてそれらを完璧にこなしてしまうのです! 彼ほど素晴らしい軍人は見たことがありません!」


 アンの声は一切聞こえない。アンが口を開く前に、エーヴァが受け答えするからだ。

 手紙で薄々、否、盛大に察していたけれど、アンは恐らく、会話が上手ではない。そして実際にその様子を見るに、話す意欲も皆無である。

 戦場ではそれでもなんとかなったかもしれないが、王都ではそうもいかないだろう。

 だからといって、いきなり一人で立たせて大丈夫だろうかとはらはらしてしまう。無意識に手を握りしめ、ぎゅっと力を篭める。

 ああ、私の大切なお友達のアン。ちょっと色々盛大に不器用だけれど可愛い、ちょっと色々多大に感性がぶっ飛んでいるけど優しい、私の大切なお友達の、アン。

あ んなに会話が苦手なアンが、社交界の荒波に放り出されている。ただでさえはらはらする状況なのに、父はさりげなく既婚の身であることを話すようにと言っていた。

さ りげなく。そんな高度な技術を彼は扱えるのか。おそらく周りがさりげなくしてくれた助言を、手紙にそのまま書いてくるような人だ。

 さりげなく。その言葉を知っているかどうかすら怪しい。


「将軍からの信も厚いと聞き及んでいる。今宵はその武勇伝について語らいたいものですなぁ!」

「――俺は、妻がいるのだが」

「……は?」


 さりげない。


「十三年間、手紙のやりとりをしていた」

「そ、れは、長う、ござい、ますね?」

「今日、結婚した」

「今日!?」


 さりげない。


「新婚ゆえ帰る。失礼する」


 さりげない。

 ぽかんとした人々をあっさりと置き去りにし、すたすたと去ってしまったアンの背を、疑問も衝撃も全てを抱えた人々が呆然と見送る。先程まであれだけきらきらと輝いていたエーヴァが、絶望どころか悲しみさえ浮かべられていないところに、彼のさりげなさを見た。

 さりげないとは、一体何だったのだろう。そして、気のせいでなければ、妻はここにいる。

 いくら何でも、十七にもなってこんなさりげなさがあって堪るか。これはきっと作戦だ。父が何らかの指示を出していたに違いない。そう思い、父を探す。

 あ、駄目だ! あちゃーって顔してる! 

 何だか方々に申し訳なくなってきた。父の認識は甘く、彼のさりげなさは凄まじい存在感を放っていましたこと、大変に申し訳ございません。そして、エーヴァに対してとても気まずい。

 しかし、何が起ころうと人生は続いていくのと同様に、アンが放ったさりげなさ爆弾を受けた周囲が固まっていようと、会場全体は稼働している。固まっていた人々も、徐々に解凍され始めた。呆然としつつもなんとか会場の流れに戻っていく人々に流される形で、エーヴァも見えなくなった。



「びっっっくりしたぁ。アンペロプシス、結婚してたんだ」

「正確には、した、ようだな。……ますますアンペロプシスの思い人に興味があるぞ」

「珍しいねぇ。ロニって人の色恋にあんまり興味ないのにー」

「忠犬にも狂犬にもなれるああいう輩を掌握出来なければ、昇進なぞ出来まい。是非、奴の扱い方をご教授願いたいものだ」


 ロニは、サンワール初の女将軍を目指しているのである。


「………………文通を、すれば、いいのでは、ないでしょうか」

「成程。慧眼だ。確かに奴とは、書面越し以外でまともに意思疎通を図れる気がしない」


 私は何とも言えない気持ちで会場を見つめる。先ほどまできらきらとアンを見ていた少女達の目は、冷たさまではいかずともぬんっとした重みを帯びていた。

 父よ。親の欲目だったのだと思うが、きっと彼は、あなたが思うよりモテない。

 私も彼がアンでさえなければ、「何だこいつ。二課向きだな」と思ったはずである。

 二課へ思考が向いたからではないだろうが、声をかけてくる人々をぬるぅりと躱したゼノンが、足早に向かってきた。視線の動きから私に用があると分かり、二人に断わってゼノンの元へ向かう。


「クレスとラクーシャが、眼鏡を取りに行った」


 合流するや否や、早口で告げられた言葉に丸くしかけた目で瞬きする。


「え? 今? ……それはまた……私も行ったほうがいいでしょうか?」


 私に伝えたということは、そういうことなのだろう。予想通り、ゼノンは静かに頷いた。


「そうだな。君が入るほうが円滑だ。手伝ってやってくれ」

「了解しました」


 覚悟を決め、今後の予定を頭の中でざっと立てる。

 眼鏡も、二課で使用されている隠語の一つだ。眼鏡装備が必要な作業は、原則作業部屋で行う。そのことから、眼鏡はこの場を離れて行う任務に対して使う隠語となったのだ。


「それにしても、流石に全隊の魔具確認は骨が折れる。これは、四日は徹夜だ」

「五日じゃないですか?」

「前例がないから僕にも分からない。何せどれだけの古参兵でも、戦後は初体験だ」


 ぬるりと肩を竦めたゼノンに、私も苦笑した。横を通りすがった紳士の髭も苦く揺れる。

 長い戦争だった。本当に、本当に長い、今を生きる誰もが戦時中しか知らない。

 そんな、戦争だったのだ。


 


 ゼノンと別れ、友二人と小さく手を振って別れた。

 大きな扉を抜け、会場を出る。明るい廊下には会場を抜けてきた人々が点在していた。

 この辺りは会場の延長線上だが、騒がしくもどこかのんびりとした空気が流れている。逆にせかせかと向かってくる人はこれから参加のようだ。

 これだけ大きな規模の会場だ。まだまだ参加者は増えるだろう。

 そこを離れれば、会場の余韻を残した人々もいなくなった。任務の詳細はクレスが聞いているだろうし、追加指示もなかったので、着替えも兼ねて二課へ戻って構わないはずだ。

 急いでいた私は、暗がりから出てきた人にまったく気がつかなかった。


 視界の端から暗闇がぬぅっとせり出してきたように感じ、思わず身体が跳ねる。しかし、すぐに警戒を解く。月光を思わせる白髪と、珍しい二色の瞳。どう見てもアンだ。


「びっ、くりした……どうしてこんな所にいるんですか?」


 誰にも真似できないさりげなさを発揮して会場を去ったはずのアンが、何故ここにいるのだろう。


「君の任務は、ルクトス隊と合同任務だ」


 合同任務は珍しくない。二課は戦闘に長けていない。だから護衛として他の隊がつく場合が多く、それ自体は珍しくないのだが、今日帰還したばかりの隊がつくとは予想外だ。

 足を進めながら、これからの予定をざっと立てていく。ちらりと視線を向けても、アンと視線が合うことはない。アンはまっすぐ前を見て……いまいちどこを見ているか分からないな、この人。

 雑談をしても大丈夫だろうか。結婚しているのだから大丈夫も何もないのだろうが、そもそも結婚が大丈夫なのだろうか。

 仲良くやっていけたらいいなと思う理由に、人生を共に歩む相手としてという理由が現れた途端、全てがややこしくなった気がする。だが、ややこしいとは思うものの、その努力を放棄しようとは思えない。

 だってアンだから。理由はこれに尽きるのである。


「私、アンのこと、女の子だって思ってたから、会ったときびっくりした」

「そうなんだ」


 誰もいないが、一応声を潜める。どこで誰が聞いているともしれない。それが王城というものだ。

 それにしても話が弾まない。アンらしい。手紙のやり取りを始めた頃のようで、何だか懐かしい。


「駄目だった?」


 ぴたりと立ち止まったアンは、懐から何かを取り出した。とてもよく知っている、見慣れた物。頑丈さの代わりに味気なく面白みもない武骨な封筒。何よりも心待ちにしていた、戦場から届く紙きれ。


「俺が男では、君はもう、俺に手紙をくれない?」


 アンから差し出された手紙を、私の手は無意識の内に両手で受け取っていた。握りしめたいのに潰したくなくて、抱きしめたいのに汚してしまいたくなくて。両手で、掲げるように受け取ってしまう。


「俺の瞳は、気味が悪いとよく言われる。君も、そう思ったのだろうか」


 宛名だけが書かれた封筒。

 いつだって何よりも心待ちにしていた封筒は、いつだって配達の人から渡される。送ってくれた人は一度だってあの家に来たことはない。

 当然だ。だから手紙が届くのだ。

 手紙に書かれた私の名前は、見慣れた形をしている。十年以上、私を救い続けた人の筆跡だ。この形で書かれる私の名が、どれだけ待ち遠しかったか。


「驚いたのは、女の子だと思っていたあなたが男の子だったからです。瞳も、青だと聞いてたのにそれだけじゃなかったから。知っていた情報が当てはまらなかったのに、そこにいるのが『アン』だと言われたから驚いただけです。あなただって私が男の子だったり、九十才だったら驚くでしょ?」

「問題ない」

「嘘でしょ……?」


 アンの場合は本当に私が九十歳だと思っていた可能性が捨てきれないが、まあいいか。


「……書くに、決まってるじゃない。私はアンが読んでくれなくなっても、書くよ」

「君の手紙は任務より優先されるべき事柄だから、俺は必ず読む」

「任務優先だと思う」

「場合による」

「よりませんね。……よらないからね?」


 急速に不安になってきた。私が大切に思っているのだから、同等以上に思ってほしいなんて思っていない。そんなのは人それぞれだ。『アン』という存在へ、依存に似た執着を向けたのは私の勝手だ。

 だけどアンも少しくらい私とのやりとりを大切に思ってくれていたのなら、とても嬉しい。それは事実だ。

 だが、軍務より最優先に掲げてほしいとは言っていない。言ってないからね!?

 慌てて人の有無を確認し、ほっと胸を撫で下ろす。王城の隣に軍の本部があり、渡り通路が繋がっているのだが、私達はその渡り廊下を通っている最中だ。誰に聞かれてもまずい内容である。


 足早に渡り通路を抜け、二課室を目指す。二課は軍部の端にある。軍部の居住区域は二課とは対角にあった。二課が今までやらかした功績による島流しの結果は、清々しいほど地図に出ている。


「アン、着替えは?」

「俺は廊下で着替える」

「ここは本部だし、風紀管理部が厳しいですよ」


 アンは廊下で着替える予定だったようだけれど、肝心の着替えはどこにあるのだろう。


「この任務で君の護衛としてつくことが決まった時点で、二課に運び込まれた」

「初耳です……あの、一つ聞きたいんですけど、私達の関係って、その」


 アンがあまりにあっさりしているので、私は前提を間違っているのではと不安になってきた。


「夫婦だ」

「あ、そうですか……その、それを」

「夫婦だ」

「ふ、うふを、知られないようにって方針だったと、記憶してるんだけど」

「そうだ」

「……判断はそちらに任せますが、私の護衛はアンでいいの? 人選大丈夫?」

「妻の護衛は夫の役目だ」

「そうでもないと思いますね」


 埒が明かないと思いますね。この人こんなに頑固だっただろうか……いや確かに、理由は分からないが、時に何かしらのきっかけで凄まじく頑固になる。物騒サンドイッチとか。

 夫婦であることを内密にするのも、この任務も、都合と主体は彼らだ。彼らがいいなら私に異論はない。全容を知らない私が首を傾げても、彼らがよしというならそちらを優先しよう。

 その結果「大丈夫か……?」という事態に陥っても、それはそれだ。その時考えればいい。

 軍人は、基本的に上の言うことは絶対だし、その任務の主体となる隊の方針に従うのが通例である。

 説明されないのなら、今はまだその時ではない。最後まで説明されない場合も、それはそれだ。


「アン。私、これの返信、どこに出せばいいですか?」


 さっきもらった宝物を大事にしまった胸の内ポケットを、軽く叩く。


「直接か、上官に」

「夫婦の手紙がお父さんを経由して配達されるの、なかなか斬新ですね」

「そうだな。通常の配達より手順が増える」


 お父さん。あなたが親代わりになって育て上げた自慢の息子は、なんかこう、凄いことになっています。間が空く手紙とは違い、打てば響く流れで悩ましい返事が返ってくる。心安まる暇がない。

 ああ、この人確かにアンだ。間違いない。私の知っているアンだ。良くも悪くも。切ないような寂しいような気持ちが霧散するのだけはよかった。後は大体良くはないのが問題だ。


「そうだ。アンも文通を楽しんでくれていたのなら、クレス中尉にお礼言ってもいいかも」

「クレス中尉?」

「手紙の運送期間を大幅に短縮してくれたあの空間転移の魔術。それを開発した人なんだけど」

「感謝する」


 かぶせ気味に感謝をされたが、私に言っても仕様がない。クレス中尉は今回の任務で一緒だから、そこで言うといいよと伝えると、分かりづらいが、どこか嬉しそうに見えた。

 気付けて嬉しい。これから直接話す機会が増えれば、もっと分かりやすくなるのだろうか。それは、誇らしい。

 分からないことを明かしていく作業に胸をときめかせるのは、二課の性なのだ。


 二課に戻り、アンは客人用の控室を使ってもらった。

 軍人名物早着替えにより瞬時に服を脱いだが、どうしてもそわそわとしてしまう。もうこれはどうにもならないと諦め、下着姿のまま、先程それを置いた机へと近寄った。

 そうして、誰かにとっては紙くずで、私にとっては人生である紙をそっと開く。思わず口元が綻ぶ。そのまま机の引き出しを開け、自室と職場に常備してある便箋を取り出し、ペンを握った。


『ミントに会えて嬉しいです。』

『私も、アンに会えてとても嬉しいです。 これからも、沢山お話ししましょう。』







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さり気なさの威力の凄まじさよ…。
誰にも真似できないさりげなさ 笑
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