謙虚でいさせていただけ
プロジェクトが終わったのは木曜日だった。
しかも、成功だった。
わざわざ言っておくのは、アイリンがこの数週間、少なくとも四種類の惨事に備えていたのに、そのどれ一つとして起こらなかったからだ。
もちろん、私も協力した。
当然である。
その日の午後、上司がチーム全員を集めた。
「みんな、本当にありがとう。簡単なプロジェクトではなかったけれど、素晴らしい結果になった」
アイリンも、みんなと一緒に笑顔を見せた。
すると上司が彼女を見た。
「それからアイリン。特に君には感謝している。大変な状況になっても、最後まで全体をまとめてくれた」
来た。
褒め言葉。
危険な領域だ。
私はすぐに、いつもの返事をいくつか用意した。
チームみんなのおかげです。
申し分ない。
私は自分の仕事をしただけです。
定番だ。
誰だって同じことをしたと思います。
私のお気に入りの一つ。
ところが、アイリンの口から出たのは別の言葉だった。
「ありがとうございます。みんなでやり遂げたことを、私も誇りに思います」
私は待った。
……それだけだった。
言い直さない。
自分の貢献を小さく見せるための説明も付け加えない。
私は心配になった。
その日の帰り、ルーシーがアイリンに追いついた。
「誇りに思っていい仕事だったよ」
「うん。そう思ってる」
まただ。
まったく抵抗しない。
これは深刻になってきた。
…
その夜、家でアイリンがお茶を淹れているとき、私はこの問題について話し合うことにした。
「でも、あのプロジェクトが完璧じゃなかったことはわかってるよね?」
アイリンはスプーンを動かす手を止めた。
「わかってる」
「ミスもあった」
「うん」
「もっと上手くできたことだってあったでしょ」
「たぶんね」
よし。
ようやく話が通じてきた。
私は続けた。
「それでも、自分を誇りに思うの?」
「うん」
……私が期待していた展開と違う。
そこで別の角度から攻めることにした。
「調子に乗った人間にはなりたくないでしょ?」
アイリンが笑った。
「それを防いでたの?」
「誰かが謙虚でいさせないと」
「四十九年間ずっと?」
その言い方は余計だと思う。
アイリンはお茶を持ってソファへ行った。
「最近、考えてることがあるの」
私はもう、その言葉が嫌いになっていた。
アイリンが腰を下ろした。
「どうして私は、『自分はまだ足りない』って思うのはこんなに簡単なのに、『私はよくやった』って思うのは、こんなに難しいんだろう?」
私にはいくつか答えがあった。
ただ、よく考えてみると、どれもあまり聞こえがよくなかった。
少し黙ったあと、アイリンが続けた。
「たぶん私、ずっと何かを手に入れようとしてきたんだと思う」
私は聞いた。
「成功?」
「違う」
「人から認められること?」
「それもあるかもしれない」
アイリンは手の中のカップを見つめた。
「自分自身に認めてもらうこと」
……ああ。
それはもっとまずい。
なぜなら、そのことなら私にも心当たりがあったからだ。
アイリンは何かを達成するたびに、少しだけ満足した。
一時的に。
そのあと私は、また基準を先へ動かした。
もっといい仕事。
もっといい体。
もっといい母親。
もっといい妻。
もっと強い女性。
今の自分に満足してもいいと私が許可する前に、アイリンはいつだって「もっといいアイリン」にならなければならなかった。
私はそれを、向上心だと思っていた。
どうやらアイリンは、別の見方をし始めているらしい。
「自分に価値があるって思うために、何かを成し遂げなくてもいいとしたら?」
私は即座に反応した。
「そんな危険なこと、簡単に言わないで」
アイリンが笑った。
「本気だよ」
「私も本気よ」
するとアイリンは、テーブルに置いてあったノートを手に取った。
まずい。
ノートを開き、一文だけ書いた。
自分の価値は、何かをして証明しなくてもいい。
私はその言葉をじっと見た。
「何を根拠に?」
アイリンは少し考えた。
それから肩をすくめた。
「生きてるから……かな」
それは証拠ではない。
哲学だ。
非常に危険な領域である。
私は表計算のほうが好きだ。
アイリンはノートを閉じた。
それだけだった。
その一文を、突然心の底から信じられるようになったわけではない。
それくらい、私にはわかる。
でも、否定もしなかった。
最近のアイリンのいちばん腹立たしい習慣は、これだった。
私が賛成するかどうかを決める前に、新しい考えを存在させておく。
最初は「もしかしたら」。
次は、人に助けてもらうこと。
そして今度は、生きているだけで人には価値があるらしい。
この調子では、そのうち私は部署全体の管理権を失うことになる。




