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どうやら「疲れた」だけで十分らしい

アイリンは、ノートに書いた問いに答えなかった。

次の朝も。

その翌日も。

私は自分の人生に、どんな原因をつくってきたんだろう?

私はこれまでずっと、自分自身をどう扱ってきたんだろう?

問いはそこに残った。

答えを待ちながら。

私はそれでいいと思った。

答えないほうがいい質問というものもある。

特に、その答えの中に私が登場する可能性がある場合は。

それに今は、もっと差し迫ったことがあった。

それから数日のうちに、治療が始まった。

特別な儀式はなかった。

劇的な宣言も。

「今日から私は病気と闘う!」みたいなものもない。

薬。

診察。

スマホに入れた予定とリマインダー。

どうやら人生を変えるような出来事にも、カレンダー通知はついてくるらしい。

そして、理学療法も始まった。

私は心配だった。

かなり。

右脚の筋力低下とバランスの問題があったため、神経内科医に勧められたのだ。

最初の理学療法は金曜日の朝だった。

ディランが車で送ると言った。

数か月前なら、ここから交渉が始まっていた。

自分で運転できる。

誰かに頼る必要なんてない。

大げさにしないで。

そういう主張なら、私は専門部署を一つ丸ごと持っている。

ところがアイリンは、あっさり答えた。

「わかった」

……簡単すぎる。

怪しい。

……

運動そのものは簡単そうに見えた。

そこが腹立たしかった。

立つ。

体重を左右に移す。

片脚を上げる。

これまでの人生で、やり方を考えたことすらなかった動作ばかりだ。

今は違った。

右脚が震えた。

以前なら何も考えずにできた動きに、今は集中しなければならない。

そしてアイリンの顔には、すぐに苛立ちが浮かんだ。

当然、私はすぐに結論を出した。

悪くなってる。

アイリンは私を無視した。

もう一度やった。

今度は、ゆっくり。

理学療法が終わるころには、すっかり疲れ切っていた。

待合室に戻ると、ディランが立ち上がった。

「どうだった?」

アイリンは疲れた顔で答えた。

「明日聞いて」

「そんなによかった?」

「家に連れて帰って」

「それならできる」

車に乗ると、アイリンはシートに頭を預けた。

しばらく、二人とも何も言わなかった。

やがてアイリンが口を開いた。

「思ってたより大変だった」

ディランがちらりとアイリンを見た。

「でも、やったんだろ?」

アイリンは窓の外を見た。

「うん」

やった。

私としては残念だった。

その事実のせいで、用意していた反論がいくつか使えなくなったからだ。

……

翌朝はもっとひどかった。

筋肉が痛み、右脚も重かった。

私はさっそく提案した。

「今日は全部キャンセルするのに最適な日だと思う」

アイリンはベッドから起き上がった。

「在宅勤務にしよう」

そのまま浴室へ向かう。

「理学療法は永久にキャンセル。いっそ退職という選択肢も――」

「オスクリタ」

アイリンが私をたしなめた。

「選択肢を提示してるだけ」

「それ、予定表つきの神経衰弱だから」

失礼な。

かなり綿密な計画だったのに。

それでも、その日は在宅勤務にすることにした。

最初、私は勝ったと思った。

ところが違った。

アイリンは、私に脅されて何か恐ろしいことが起きていると思ったから在宅勤務にしたのではない。

疲れていたから、そうしたのだ。

どうやら最近、その二つは別物らしい。

午前中は仕事をした。

メール。

電話。

翻訳。

メール一本で済みそうな会議と、逆に会議を開いたほうがよさそうなメール。

いつもの生活。

でも昼になるころには、もうほとんど力が残っていなかった。

アイリンはしばらくパソコンの画面を見つめた。

そしてノートパソコンを閉じた。

本当に閉じた。

私は黙って様子を見ていた。

アイリンは寝室へ行き、横になった。

ああ。

これは知っている。

私の得意分野だ。

まだ仕事が残ってる。

メールも来てる。

ほかの人は昼間から仕事をやめたりしない。

休むのはあとでいい。

どれも実績のある主張だ。

私はさっそく口を出した。

「メールが来てるよ」

アイリンは目を閉じたまま答えた。

「知ってる」

「何通も」

「知ってる」

「一つは『緊急』って書いてある」

それでもアイリンは目を開けなかった。

「何でも緊急って書いてあるのよ」

……それはそう。

でも、そこじゃない。

私はもう一押しした。

「せめて始めた仕事くらい終わらせたら?」

アイリンは目を閉じたまま言った。

「疲れたの」

私は続きを待った。

何もなかった。

ただ、

疲れた。

それだけ。

怠けてるんじゃないか。

ではない。

こんなに疲れるなんておかしい。

でもない。

ほかの人ならもっとできる。

でもない。

これくらいできるはず。

でもない。

疲れている。

だから休む。

それだけだった。

なぜそれがこんなに気に入らないのか、私にもわからなかった。

何年もの間、「疲れた」で話が終わったことなんてなかった。

そこから私たちの交渉が始まるのだ。

どれくらい疲れてる?

まだ何が残ってる?

もう少し頑張れない?

今休んだら、誰かに迷惑をかけない?

ちゃんと手順があった。

基準もあった。

立派なシステムだった。

どうやらアイリンは、経営陣に相談もせず廃止したらしい。

しかも眠った。

昼間に。

まだメールが存在しているというのに。

私は近くにいた。

職業上の侮辱を感じながら。

……

アイリンが目を覚ましたとき、驚くべきことが起きていた。

世界はまだ存在していた。

一応、確認した。

会社も潰れていない。

説明を求めて誰かがアパートまで押しかけてきてもいない。

文明は正常に機能していた。

困ったものだ。

アイリンは何か食べ、それからしばらく仕事に戻った。

休んだ分を取り戻すためではない。

罰として夜中まで働くためでもない。

本当に必要なことだけを済ませた。

そして、また仕事をやめた。

これはもう無謀と言っていい。

その夜、テーブルの上のノートがアイリンの目に入った。

しまった。

あの調査のことを忘れかけていた。

アイリンはノートを開いた。

数日前に書いた問いが、まだそこにあった。

私は自分の人生に、どんな原因をつくってきたんだろう?

私はこれまでずっと、自分自身をどう扱ってきたんだろう?

アイリンはそれを読んだ。

しばらく何も書かなかった。

やがてペンを動かした。

休むためには、その資格を得なければいけないように生きてきた。

私はすぐに反論した。

「事情があったでしょう」

仕事。

子どもたち。

締め切り。

生活。

どれも非常に説得力のある事情だ。

アイリンは私の反論を無視して、もう一行書いた。

疲れることを、弱さのように扱ってきた。

私はたまらず言った。

「ずいぶん一方的な調査じゃない?」

アイリンはさらに書いた。

自分がまだやれると決めたら、体もそれについてくるべきだと思っていた。

私は黙った。

それは新しかった。

アイリンはその文章を見つめた。

それから、自分の右脚を見た。

何年もの間、ただ「疲れた」というだけでは十分ではなかった。

休むには理由が必要だった。

止まるには許可が必要だった。

そしてアイリン自身が「もう終わり」と決める前に体が「もう十分」と言ったら、私たちはたいてい、その訴えを却下した。

私は「規律」と呼ぶほうが好きだった。

そのほうがずっと聞こえがいい。

アイリンはまたペンを取った。

自分をいたわることを、いつもほかのすべてのあとに回してきた。

ちょっと待って。

これは明らかに証拠固めに入っている。

私は抗議した。

「これ、内省というより起訴に近づいてない?」

アイリンが笑った。

「怖くなってきた?」

「まさか」

怖かった。

アイリンはもう一度、ページを見つめた。

そこに罪悪感はなかった。

前回と同じように、それが私は気になった。

疲れすぎたから病気になったのだと証明しようとしているわけではない。

自分を責める理由を探しているわけでもない。

アイリンが見ようとしていたのは、自分自身とどう生きるかという中で、これまでどんな原因をつくってきたのかということだった。

それはまったく別の話だった。

しかも、かなり危険だ。

罪悪感なら、過去を見続けていればいい。

でもアイリンは、だんだん別のことに興味を持ち始めていた。

これから何ができるのか。

アイリンはノートを閉じた。

それからお茶を入れ、ソファに座った。

そして何もしなかった。

私はまた口を出した。

「ねえ、厳密に言えば、この時間をもっと有効に使えると思うんだけど」

アイリンはお茶を飲みながら答えた。

「使ってるよ」

「座ってるだけだけど」

「うん」

「それは活動とは呼ばない」

「今日は呼ぶの」

アイリンはもう一口、お茶を飲んだ。

私は彼女を見た。

閉じられたノートパソコン。

ノート。

そしてその朝、ただ歩くだけでも以前より多くの力を必要としていた右脚。

体がアイリンを立ち止まらせた。

そしてどうやら、立ち止まったことで、アイリンはいろいろなものに気づき始めた。

自分の疲れ。

自分の限界。

自分自身をどう扱ってきたのか。

そして、原因だと気づきもしないまま、何度も繰り返してきた原因。

私。

私は理学療法のほうが好きだった。

少なくとも、あそこなら脚のせいにできた。



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