助っ人が来るなんて聞いてない
私はずっと、難しいことでも一度誰かに話してしまえば、次の人に話すのは少し楽になるものだと思っていた。
経験を積んで。
慣れて。
少しは上手になる。
どうやら感情というものは、そんなふうにはできていないらしい。
実に効率の悪いシステムだ。
……
最初に話したのはルーシーだった。
翌朝、アイリンがオフィスに着いて間もなく、ルーシーがドアのところに現れた。
「それで?」
アイリンはバッグを置いた。
「おはよう、くらい言ってくれてもいいんじゃない?」
「ずっと待ってたんだから」
「分かってる」
ルーシーは中に入り、ドアを閉めた。
私はちょっと身構えた。
「神経内科で何て言われたの?」
アイリンは椅子に座った。
一瞬、仕事に逃げ込めないかというようにパソコンを見た。
無理だった。
「MRIで、脱髄性疾患と一致する病変が見つかったの」
ルーシーの表情が変わった。
「それって、どういうこと?」
「中枢神経系の神経を覆っているミエリンが傷ついてるってこと」
「原因は分かってるの?」
「免疫系が誤ってミエリンを攻撃しているらしい。でも、どうして私にそれが起きているのかも、どの病気なのかも、まだ分からない」
少し沈黙があった。
そしてアイリンは、その言葉を口にした。
「今のところ、多発性硬化症が主な可能性の一つだって」
出た。
また。
あの言葉。
二度目に聞いても、少しもましにはならなかった。
ルーシーはアイリンの向かいに座った。
「もう確定なの?」
「ううん。だから、もっと検査が必要なの」
「どんな?」
「血液検査と、追加の画像検査……」
アイリンは少しためらった。
「それから腰椎穿刺」
ルーシーの目が大きくなった。
やっとだ。
適切な反応をしてくれる人がいた。
「腰椎穿刺?」
「らしいよ」
「大丈夫?」
出た。
答えが明らかに「完全には大丈夫じゃない」ときに、人間が必ず聞く質問。
アイリンは少し考えてから答えた。
「怖い」
よし。
「でも、何なのか分かる前から、ありとあらゆる可能性を怖がりたくないの」
ルーシーはうなずいた。
「それは理にかなってると思う」
私は原則として反対だった。
ルーシーは机越しに手を伸ばし、アイリンの手を握った。
「何だったとしても、一人で抱えなくていいんだからね」
アイリンは彼女を見た。
そして、ただ言った。
「ありがとう」
拒まない。
「大丈夫」とも言わない。
自分一人で何とかできるという演説もしない。
興味深い。
非常に興味深い。
……
その日の午後、アンドレアにも話した。
二人はコーヒーを飲みに行き、アンドレアは座るなり聞いた。
「それで?」
アイリンは話した。
病変。
脱髄。
多発性硬化症。
検査。
腰椎穿刺。
アンドレアは途中で口を挟まず、最後まで聞いた。
そしてテーブル越しに手を伸ばし、アイリンの手を握った。
「分かった」
「分かった?」
「まず、ちゃんと理解しよう」
アイリンは彼女を見た。
「それから、何であっても一緒に向き合えばいい」
一緒に。
興味深い言葉だ。
「息子たちは知ってる?」
「まだ」
「ディランは?」
「まだ」
アンドレアは黙って待った。
アイリンがため息をつく。
「分かってる」
「話したほうがいい」
「分かってる」
「三人一緒に」
「分かってる」
「直接会って」
アイリンが彼女を見た。
「私もこの会話に参加していい?」
アンドレアは笑った。
「そのうちね」
……
その夜、アイリンは二人の息子に電話した。
「土曜日、うちに来られる? 話したいことがあるの」
二人とも、すぐに何があったのか聞いた。
そして二人とも、ほぼ同じ答えを受け取った。
「大丈夫。会ってから説明したいの」
当然、どちらも気に入らなかった。
それでも二人とも来ると言った。
次はディラン。
アイリンは画面に表示された彼の名前を数秒見つめてから電話をかけた。
すぐに出た。
「もしもし」
「もしもし」
ほんの短い沈黙。
「土曜日、来られる? 息子たちも来るの」
「何があった?」
いきなり本題。
二十五年も一緒にいると、どうやら会話上の形式的な手順はいくつか消滅するらしい。
「来たときに話す」
また短い沈黙。
「体のこと?」
アイリンの動きが止まった。
私も止まった。
「どうして分かったの?」
「ほかのことなら、三人全員を呼んだりしないだろ」
なるほど。
「大丈夫なのか?」
「うん」
私は彼女を見た。
アイリンは言い直した。
「……今は大丈夫」
よし。
「分かった。行くよ」
……
土曜日、最初に来たのはディランだった。
もちろん。
彼はソファに座り、アイリンは三度目になるスマホの確認をしていた。
私は退屈していた。
これは危険だ。
「聞いてみたら?」
「嫌」
「まだ何を聞くか言ってないけど」
「分かってるから」
「あり得ない」
「オスクリータ」
「一つだけ」
「嫌」
「気にならないの?」
アイリンが私を見た。
ほら。
やっぱり気にはなってる。
「彼の恋愛事情は私には関係ない」
「二十五年一緒にいて、突然プライバシーを尊重するようになったの?」
「私たちは別れてるの」
「厳密には、待ってる間の無難な話題を提案してるだけ」
「ディランの恋愛事情のどこが無難なのよ」
そのときディランがアイリンを見た。
「どうした?」
「何でもない」
「さっきから妙に落ち着かないな」
「ちょっと考え事してただけ」
「緊張してる?」
「少しね」
ディランはそれ以上聞かなかった。
私は不満だった。
最近の私はかなり協力的なのに。
誰も私の働きを評価してくれない。
幸い、私が次の作戦を考え出す前に息子たちが到着した。
弟のほうが入ってきて、ディランを見た。
次にアイリンを見る。
「二人、より戻すの?」
……何ですって?
「戻さない」
アイリンが即答した。
「分かった」
彼は座った。
「一応、確認」
兄が呆れた顔で見た。
「わざわざ来て、最初に聞くことがそれ?」
「可能性を一つ消しておきたかったんだよ」
おお。
この子、好き。
方法論というものを理解している。
……
全員が落ち着くと、アイリンは話を引き延ばさなかった。
「ちょっと体のことで問題があって」
部屋の空気が変わった。
一瞬で。
アイリンは、しびれや脚の力が入りにくかったこと、これまでに受けた検査について簡単に話した。
そして本題に入った。
「MRIで、脱髄性疾患と一致する病変が見つかったの」
弟が眉をひそめた。
「それって何?」
アイリンが説明した。
ディランは黙って彼女を見ていた。
「どの病気かは分かってるのか?」
「まだ」
「医者は何だと思ってる?」
アイリンは息を吸った。
「今のところ、一番可能性が高いのは多発性硬化症だって」
沈黙。
最初に口を開いたのは弟だった。
「それになったってこと?」
「違う」
即答。
明確。
よし。
「多発性硬化症と診断されたわけじゃないの。何なのか確定するには、まだ検査が必要なの」
「でも、その可能性が高いってことだよな」
ディランが言った。
「今のところはね」
兄が身を乗り出した。
「もし多発性硬化症だったら、どうなるの?」
「まだ全部は分からない」
いい答え。
「今、少しずつ調べ始めてる。治療法があることは分かってる。でも、検査が終わる前から先のことまで決めつけたくないの」
見てよ、この人。
今度は家族全員をファクトチェックしている。
私は怪物を育ててしまったらしい。
「どんな検査?」
弟が聞いた。
「追加の血液検査と画像検査」
少し間を置いた。
「それから、腰椎穿刺」
三人の顔がまったく同時に変わった。
美しい。
完璧なシンクロ。
「何それ?」
弟が聞いた。
「分かる。私もそう思った」
次にディランが口を開いた。
「いつ?」
「まだ日程は決まってない」
「俺が一緒に行く」
迷いなし。
すると兄もすぐに言った。
「必要なら、僕も来るよ」
「俺も」
弟も続いた。
アイリンは三人を見た。
私は身構えた。
こういうときの彼女なら普通、
一人で大丈夫。
みんなには自分の生活がある。
私のために予定を変えてほしくない。
そう言う。
ところが――
「ありがとう」
私は危うく彼女の熱を測るところだった。
……
「まず日程が決まってからね。それから、どうするのが一番いいか考えよう」
ディランがうなずいた。
「俺は一緒に行けるから」
「分かってる」
アイリンは彼を見た。
「ありがとう」
興味深い。
どうやら人の助けを受け入れても、その場で自立心が消滅するわけではないらしい。
誰かもっと早く教えてくれてもよかったのに。
弟はまだアイリンを見ていた。
「怖い?」
あ。
私の担当分野。
ようやくだ。
アイリンは少し考えた。
「怖いよ」
素晴らしい出だし。
「でも、何が起きているのか正確に分かる前から取り乱しても、何の役にも立たないから」
担当終了。
また。
「検査を受けて、結果を聞く。それから、何を言われても、そのとき考える」
「一つずつってこと?」
兄が言った。
「そう」
私は理性的な人間たちに囲まれていた。
疲れる。
……
その後も、みんな午後まで一緒にいた。
ありがたいことに、神経系の病気について話し続けたりはしなかった。
息子たちは大学の話をした。
弟が教授への不満を言った。
兄は、問題は教授じゃなくて弟のほうだと言った。
当然、口論になった。
ディランは二人とも間違っていると言った。
そしてアイリンが笑った。
本当に笑った。
私は彼女を見ていた。
彼女の体の中で、何か深刻なことが起きているのかもしれない。
それは事実。
息子たちがリビングで言い争っている。
それも事実。
ディランが、二人の頑固さは母親譲りだと言っている。
異議はあるけど、まあ事実ということにしておこう。
そしてアイリンは笑っている。
それも事実。
どうやら、一つの事実がほかの事実を消してしまうわけではないらしい。
私は少しずつ、それに気づき始めていた。
……
帰る前、息子たちはアイリンを抱きしめた。
「検査の日が決まったら、すぐ教えて」
「うん」
弟は少しだけ長く抱きしめていた。
「俺たちがいるからね、母さん」
「分かってる」
「何か必要だったら――」
「分かってるよ」
アイリンは彼の頬にキスをした。
「ありがとう」
最後に玄関に残ったのはディランだった。
「腰椎穿刺の日が決まったら連絡して」
「する」
「本当に」
「私も本気で言ってる」
ディランはしばらく彼女を見た。
それから抱きしめた。
恋愛的なものじゃない。
混乱するようなものでもない。
ただ、なじんだもの。
二十五年分の、なじみ。
「何か必要なら、何でも言って」
アイリンはうなずいた。
「ありがとう」
そしてディランは帰った。
アイリンはドアを閉め、そのまま背中を預けた。
「ふう」
「ふう」
「大変だった」
「うん」
私は約三秒待った。
「それで……」
「嫌」
「まだ何も言ってないけど」
「ディランが誰かと付き合ってるのか知りたいか、って聞くつもりでしょ」
私は傷ついた。
主に、当たっていたから。
「知りたくないの?」
アイリンは少し考えた。
「知りたくない」
「決めるの早すぎない?」
彼女は笑って、キッチンへ向かった。
まあいい。
今日はもう十分すぎるほど「分からないこと」と付き合った。
私にだって節度はある。
……
その夜、アイリンは唱題した。
そして海が現れた。
温かい水。
太陽。
相変わらず、まともな日陰はない。
このままだと私は、想像上の日焼けダメージを負いそうだ。
でも、何かが違っていた。
昨日まで、これは私たち二人だけのことだった。
今はルーシーが知っている。
アンドレアも。
息子たちも。
ディランも。
アイリンの人生のほとんどを通して、私は彼女を守るのが自分の仕事だと思っていた。
全部を見る。
全部を先回りする。
十七回くらい警告する。
でも今、本当に何かが起きている。
私には防げない何かが。
そして初めて――
アイリンを気にかけているのは、私だけじゃなかった。
それをどう思えばいいのか、よく分からなかった。
ほっとした?
たぶん。
嫉妬した?
もちろん。
私には勤続年数というものがある。
それでも……
何かを背負うということは、必ずしも全部を一人で背負うことじゃないのかもしれない。
ほかの人に少し持ってもらってもいい。
まあ、それくらいなら許してあげてもいい。
一時的に。
調子に乗られても困るから。




