こんなの、私の仕事じゃなかった
まず、一つだけはっきりさせておきたい。
こんなの、私の仕事じゃなかった。
私は――非公式に、感情的に、しかも福利厚生もなしで――不安に対処するために雇われた。
自信のなさ。
自分への疑い。
失敗への恐怖。
難しい話をしなければならないとき。
大事な決断をするとき。
そして、照明がやたら容赦ない鏡の前に立ったときに襲ってくる、あのおなじみのパニック。
医学用語まで担当するなんて、聞いていない。
なのに私はそこにいた。
神経内科の診察室に。
……
アイリンは医師と向かい合って座っていた。
パソコンの画面には、彼女のMRI画像が映し出されている。
私はこの構図が気に入らなかった。
神経内科医は何かを知っている。
私たちは知らない。
明らかな力関係の不均衡だ。
医師はもう一度、アイリンの症状を確認した。
しびれ。
疲労。
右脚の重さ。
職場で起きたこと。
そして、また診察が始まった。
歩いて。
止まって。
押して。
指を目で追って。
脚を上げて。
もう一度。
私は全部見ていた。
たぶん、アイリン本人より注意深く。
やがて神経内科医は机に戻った。
「MRIを確認しました」
アイリンがうなずいた。
私は近づいた。
感情的に。
精神的に。
まあ、影というものが衝撃に備えるときにするような方法で。
医師は画面を少しアイリンのほうへ向けた。
「MRIには、脱髄性疾患と一致するいくつかの病変が見られます」
アイリンは画面を見た。
私は医師を見た。
次に画面。
そして、また医師。
「脱髄……」
アイリンが繰り返した。
「はい」
「それは、どういう意味ですか?」
医師は説明した。
ミエリンとは、中枢神経系の神経を覆い、保護しているものだという。
脱髄性疾患では、そのミエリンが損傷する。
多くの場合、免疫系が誤ってそれを攻撃してしまうために。
アイリンはしばらく黙っていた。
「つまり……本来は守るはずの免疫系が、守るべきものを攻撃している可能性があるってことですか?」
「簡単に言えば、そうです」
……何ですって?
彼女を守るために存在しているものが……
逆に彼女を傷つけている?
守ろうとしすぎて。
方向を間違えて。
助けようとしているつもりで、結果的に傷つけている。
私は居心地が悪くなった。
それって――
いや。
絶対に違う。
今は免疫系の話をしている。
プロらしくいこう。
……
「どの病気なのか、もう分かっているんですか?」
アイリンが尋ねた。
「まだです」
よし。
私は「まだ」が気に入った。
「まだ」には、ずいぶん余地がある。
神経内科医は続けた。
「脱髄性疾患にはいくつか種類があります。症状とMRIで確認できる所見から考えると、多発性硬化症は、詳しく調べる必要がある主な可能性の一つです」
出た。
多発性硬化症。
その言葉。
アイリンは動かなかった。
私も。
医師はそのまま話を続けていたけれど、数秒間、その言葉だけが本来よりずっと大きな場所を占領していた。
やがてアイリンが尋ねた。
「先生は、それだと思いますか?」
「慎重に調べる必要がある可能性の一つです。ただ、現時点では確定するだけの情報がありません」
診断ではない。
私はそこにしがみついた。
どうやら最近の私は、事実を扱うようになったらしい。
実に嫌な習慣だ。
「では、次は何をするんですか?」
アイリンが尋ねた。
私は彼女を見た。
それだけ?
「歩けなくなるんですか?」
じゃないの?
「これから私はどうなるんですか?」
でもない?
誰にも示されていない十年後の未来へ、一気に飛んでいくこともしない?
ただ――
次は何をするんですか?
この女、誰?
……
神経内科医は、さらに検査が必要だと説明した。
追加の血液検査。
追加の画像検査。
いいでしょう。
それくらいなら私にも対応できる。
ところが次に、医師は言った。
「それから、腰椎穿刺も行いたいと思います」
……すみません。
何を?
アイリンが瞬きをした。
「腰椎穿刺ですか?」
「はい」
医師は、脳脊髄液を調べることで、MRIに見られたものが多発性硬化症によるものなのか、それとも別の脱髄性疾患なのかを判断するための情報が得られると説明した。
私は「脳脊髄液」というところで、一時的に話を聞くのをやめた。
「どこから液体を取るって?」
アイリンは私を無視した。
また。
非常に不健全なコミュニケーションだと思う。
「必要なんですか?」
アイリンが尋ねた。
「あなたの場合は、重要な検査だと考えています」
アイリンはうなずいた。
「分かりました」
分かりました?
全然分かりましたじゃない。
血液を採るところから始まって、今度は私が完全に立入禁止区域だと思っていた場所へのアクセスを要求されている。
私は懸念がある。
いくつも。
その間にもアイリンは、どう準備すればいいのか、検査後はどうなるのか、結果が出るまでどれくらいかかるのかを質問していた。
私も聞いた。
だいたいは。
最後に医師は検査の指示書を渡し、すべての検査が終わったら再診の予約を取るよう伝えた。
それで終わりだった。
劇的な音楽もない。
人生を揺るがす宣告もない。
ただ、もう一つファイルが増えただけ。
人間というものは、驚くほど大量の「分からない」をファイルに入れて渡されるらしい。
……
車に乗ると、アイリンはそのファイルを助手席に置いた。
しばらく、私たちは何も言わなかった。
やがて彼女がファイルを見る。
「脱髄性疾患」
「うん」
「多発性硬化症」
「可能性としては」
アイリンがうなずいた。
来た。
これは私の出番だ。
間違いない。
「それで」
私は言った。
「ここからパニックになる、ということでいいのよね?」
「ならない」
私は彼女を見つめた。
「ならない?」
「MRIで何かが起きていることは分かった。それをなかったことにするつもりはない」
やっとだ。
話の分かる女だ。
「でも、それが何なのかはまだ正確には分からない」
……あ。
「それなら私が手伝えるけど」
アイリンが私を見る。
「恐ろしい可能性なら、いくつか用意してある」
「でしょうね」
「かなり詳しく」
「興味ない」
失礼な。
「じゃあ、どうするつもり?」
アイリンはもう一度ファイルを見た。
「検査を受ける」
「当然」
「それから、何が起きているのか理解する」
理解する。
私はその言葉が嫌いだった。
「脱髄」と同じくらい。
私は警報を鳴らすためにできているのであって、物事を理解するためにできているわけじゃない。
「理解した結果、怖くなったらどうするの?」
「そのときは、本当に何か分かってから考える」
「じゃあ、怖がるのはそれまで待つってこと?」
アイリンは少し笑いそうになった。
「どうやらね」
信じられない。
私は何年もの間、この人がありもしない災難に備えられるよう、せっせと準備してきた。
そして今、ようやく本当に怖がってもおかしくないことが起きているというのに、彼女が欲しがっているのは情報だった。
私、ものすごく持て余されてない?
……
家に帰ると、アイリンは少し食事をした。
それから座って唱題を始めた。
南無妙法蓮華経。
海が現れた。
今回は、太陽にも文句を言わなかった。
日陰がないことにも文句を言わなかった。
ここへ送り込まれたことにさえ、文句を言わなかった。
なぜなら、あの言葉が私についてきていたからだ。
多発性硬化症。
その言葉は、水の向こうのどこかに浮かんでいた。
手を伸ばせば、つかむこともできた。
引き寄せて、細かく分解することも。
そこから未来を作り上げることも。
ひどい未来を。
やり方なら、よく知っている。
でも私は、その言葉をそこに浮かべたままにした。
可能性。
診断ではない。
神経内科医はそう言った。
なら、今の私たちが知っていていいのは、そこまでだ。
私はルールが嫌いだ。
特に、筋の通ったルールが。
……
唱題を終えると、アイリンはもう一度ファイルを開いた。
血液検査。
画像検査。
腰椎穿刺。
再診。
そしてノートを取り出した。
私は警戒した。
「何してるの?」
「これからやることを書いてる」
「リスト?」
「うん」
私は彼女を見た。
「神経系の病気かもしれないっていう状況に、文房具で立ち向かうつもり?」
「今のところ、うまくいってるみたい」
それには反論できなかった。
アイリンは受けるべき検査と、医師に聞きたいことを書き出した。
そしてノートを閉じた。
Googleは開かない。
医学記事も読まない。
まだ。
今はただ、次にやるべきことだけ。
私はファイルを見た。
それから、アイリンを見た。
彼女の体の中で何かが起きている。
それだけは分かっていた。
その「何か」には、名前があるのかもしれない。
でも、その名前を私たちはまだ知らない。
そして今回は、医師たちが名前をつけるより先に、私が勝手につけるつもりはなかった。
こんなの、私の仕事じゃなかった。
でも、どうやら私の仕事内容そのものが変わり始めているらしい。




