どうやら今度は私がしっかり者らしい
検査結果を待っている間、人間にはやるべきことがいくつかある。
休むこと。
眠ること。
水分を取ること。
余計なストレスを避けること。
逆に、やるべきではないこともある。
金曜の夜の集まりに誘われて、のこのこ参加することだ。
アイリンはそうは思わなかったらしい。
……
木曜の午後、ルーシーがアイリンのオフィスのドアから顔をのぞかせた。
「明日の夜、うちで何人か集まるんだけど」
「誰が来るの?」
「職場の人たちと、友達が何人か」
「食べ物は?」
ルーシーが目を細めた。
「そこが決め手なの?」
「可能性はある」
「住所送るね」
「うん」
……ちょっと待って。
ルーシーが立ち去った。
私は待った。
アイリンは何事もなかったようにキーボードを打ち続けている。
「行くの?」
「うん」
「検査結果待ちなんだけど」
「知ってる」
「右脚だって怪しい動きをしてる」
「それも知ってる」
「疲れてるし」
そこでようやくアイリンが私を見た。
「ルーシーのところには行く」
どうやら今度は、私がしっかり者の大人役らしい。
そんな契約をした覚えはない。
……
金曜の夜。
ルーシーの部屋にはほどよく人が集まっていて、にぎやかではあったものの、私が避難を要求できるほどではなかった。
私は滞在時間を九十分と見積もった。
最大で。
ところが誰かがアイリンに食べ物を渡した。
別の誰かが話しかけてきた。
そして気がつけば、アイリンは三人を相手に字幕について熱弁していた。
「字幕のほうがいいって」
「いや」
アイリンは私を無視した。
「翻訳の仕事してるんだから、偏ってるでしょ」
誰かがそう言うと、アイリンは即座に返した。
「だからこそ、私には発言する資格があるの」
みんなが笑った。
アイリンも笑った。
私は注意深く観察する。
右脚?
動いてる。
手?
問題なし。
めまい?
なし。
食べている。
しゃべっている。
笑っている。
そして一時間近く、アイリンは忘れていた。
症状を、ではない。
検査を、でもない。
ただ――恐怖を。
人間って、そんなことしていいの?
私は少し疑問だった。
……
しばらくして、ルーシーがアイリンの隣に座った。
「顔色、よくなったね」
「何と比べて?」
「今週のあなたと比べて」
「それ、安心していいのかな」
ルーシーが笑った。
「心配してたでしょ」
「少しね」
「検査のこと?」
アイリンは手にしていたグラスに目を落とした。
「どちらかというと、何も分からないことが怖い」
ルーシーがうなずいた。
「それが一番つらいよね」
その通り。
ようやく話の分かる人がいた。
「唱題は続けてる?」
「毎日」
「どう?」
アイリンは少し考えた。
「心配しなくなるわけじゃない」
ルーシーは黙って続きを待った。
「でも、前みたいにずっとそこにとどまらなくなった」
「それだけでも大きいよ」
アイリンはうなずいた。
「うん。そう思う」
私はこの評価についていくつか意見があった。
それを整理する前に、キッチンから誰かがルーシーを呼んだ。
彼女は立ち上がった。
「帰るときは声かけてね」
「分かった」
ルーシーが離れていく。
私はアイリンを見た。
部屋の向こうにいる誰かが言ったことに、彼女は笑っていた。
検査はまだ終わっていない。
症状も現実にある。
なのにアイリンは楽しんでいる。
本来なら逆でしょう。
私が不安になれば、アイリンも不安になる。
そういう仕組みだったはずだ。
ところが今では、アイリンの落ち着きが私にうつり始めている。
まずい。
アイリンが私のオスクリータになってしまった。
これはもう、私のほうがセラピーを受ける必要がありそうだ。
……
その後の数日間で、検査が続いた。
血液検査。
画像検査。
書類。
機械。
待ち時間。
細かい話は省こう。
私は全部そこにいた。
人間というのは、どういうわけか「先が分からない」という不安まで事務手続きに変えてしまうらしい。
見事なものだ。
すぐに出た結果もあった。
時間のかかるものもあった。
一度だけ、アイリンがGoogleを開いた。
「ダメ」
指が止まった。
「一つだけ調べたいの」
「ダメ」
「単語一つだけ」
「そうやって始まるんだから」
「オスクリータ」
「今日は単語一つ。二十分後には自分の葬式の計画を立ててる」
アイリンは画面を見つめた。
そしてブラウザを閉じた。
成長。
私の。
これは私の功績として認めてもらいたい。
……
数日が過ぎた。
アイリンは仕事を続けた。
韓国語の勉強も続けた。
唱題も続けた。
そして私は観察を続けた。
想像するのではなく。
観察する。
手。
右脚。
バランス。
疲労。
事実というものは、私の助けなどなくても十分に怖いらしい。
ちょっと失礼な話だ。
そんなある日の午後、電話が鳴った。
アイリンは仕事中だった。
「もしもし?」
その瞬間、彼女の姿勢が変わった。
私はすぐに分かった。
医者だ。
「はい、受け取りました」
アイリンが相手の話を聞く。
「分かりました」
「はい」
そして――
「神経内科ですか?」
出た。
また、あの言葉。
ただし今回は「必要なら」ではない。
アイリンはペンを取った。
「いつですか?」
日付を書き留める。
「分かりました。ありがとうございます」
電話を切った。
数秒間、私たちはどちらも何も言わなかった。
先に口を開いたのは私だった。
「で」
アイリンが椅子にもたれた。
「で」
「神経内科」
「うん」
私はパニックを待った。
アイリンのでもいい。
私のでもいい。
誰のでもいいから。
何も起こらない。
「怖い?」
「怖いよ」
よし。
少なくとも片方は正常に機能している。
「それで、どうするの?」
アイリンはパソコンの画面に開いている文書を見た。
「これを終わらせる」
私は彼女を見つめた。
「今、神経内科を紹介されたばかりなんだけど」
「これは五時までなの」
「あなた、相当おかしいよ」
「たぶんね」
アイリンはペンを手に取った。
私は喜んでいるべきだった。
神経内科。
専門医に回されるほどの検査結果。
不確実性。
最高級の材料じゃないか。
昔の私なら、昼食前には不治の病を六つくらい診断していただろう。
それなのに今は?
欲しいのは事実だった。
本物の事実。
いったいいつから、こんなことになった?
……
その夜、アイリンは唱題した。
南無妙法蓮華経。
珍しく私は、ほとんど文句も言わず海に着いた。
ほとんど、だけど。
太陽の下で水に浮かびながら、私は神経内科のことを考えた。
診断名ではない。
車椅子でもない。
結末でもない。
ただ、予約された診察のことだけ。
一つずつ。
私は「一つずつ」が嫌いだ。
破滅的な妄想をするには、あまりにも効率が悪い。
戻ってくると、アイリンは書き留めた日付を見た。
神経内科。
現実。
予約済み。
あとは待つだけ。
そしてその紙を脇に置き、夕食を作りに行った。
私は彼女を見ていた。
アイリンは怖がっていた。
私も怖かった。
でも私たちはどちらも、まだ起きてもいない未来へ走ってはいなかった。
どうやら自分を保つというのは、次に何が起きるかを知っていることではないらしい。
分からないままでも、ちゃんと今日を生きられること。
そういうことなのかもしれない。
とはいえ、私は今すぐ答えが欲しい。
当然だ。
私だって進化の途中なんだから。
聖人になったわけじゃない。




