私の言うことをファクトチェックし始めた
私は最近、アイリーンについて少々困ったことに気づいた。
彼女は今でも私の言うことを聞いている。
問題はそこじゃない。
問題は、どうやら私の言うことをいちいち確認するようになったことだ。
これまでの人生では、もっと単純だった。私が何かに気づき、それが何を意味する可能性があるのか警告する。そしてアイリーンは、私の言葉を真剣に受け止める。
それでうまくいっていた。
ところが最近、彼女は質問するようになった。
それ、本当に分かってること?
本当にそうだった?
そして私が一番気に入らないのが――
それとも、また勝手に決めつけてる?
決めつけているわけじゃない。
先を読んでいるのだ。
そこには違いがある。
少なくとも、昔はあった。
…
水曜日の夜、アイリーンが家に帰って少しした頃、アンドレアから電話がかかってきた。
「またディラン情報がある。」
アイリーンはため息をついた。
「今度は何?」
「週末、映画館で見かけた人がいるの。彼女と一緒だったって。」
アイリーンは座った。
「二人きり?」
「ううん。そこが今回ちょっと違うの。彼女の友達のグループと一緒だったみたい。」
「彼女の友達?」
「そう。ほとんどが若い人たち。それで、ディランもかなり楽しそうだったって。」
ほう。
それは新情報だった。
どうやらディランは、年下の彼女の生息環境にまで足を踏み入れ始めたらしい。
「彼女は?」とアイリーンが聞いた。
「相変わらずディランに夢中みたい。」
「でしょうね。」
「それに、ディランもかなり楽しそうだったって。」
アイリーンは少し黙った。
「ほかにも知りたい?」とアンドレアが聞いた。
「ううん。」
「何も?」
「それで十分。」
アンドレアはそれ以上聞かなかった。
「分かった。」
「教えてくれてありがとう。」
「大丈夫?」
アイリーンは少し考えた。
「完全には。でも、大丈夫になる。」
二人は別れを言って電話を切った。
アイリーンはスマートフォンを横に置き、しばらく黙っていた。
私には意見があった。
たくさん。
アイリーンも、それを分かっていた。
でも、わざわざ一つずつ確認する必要はなかった。
その夜、眠る前にアイリーンは座り、目を閉じた。
「南無妙法蓮華経……南無妙法蓮華経……」
海。
どうやら世の中には、私の助けなしで整理することもあるらしい。
非常に不愉快だった。
…
翌朝、アイリーンが出勤すると、一通のメールが届いていた。
出社したら私のオフィスに来てもらえますか? 新しいプロジェクトについて話があります。
話があります。
私はこの言葉を知っている。
このあとに良いことが続いたためしがない。
アイリーンはメールを読んだ。
「興味深い。」
「興味深い?」
彼女はバッグを置いた。
「うん。」
「これは明らかに問題だよ。」
「どうして?」
そんなことまで説明しないといけないなんて信じられない。
「話があります。」
「新しいプロジェクトについて、って書いてある。」
「そうやって誘い込むんだよ。」
アイリーンはパソコンを立ち上げた。
「誰が?」
「オフィスを持ってる人たち。」
アイリーンが私を見た。
「プロジェクトについて話したいって書いてあるだけでしょう。」
「だから怪しい。」
「どこが?」
「翻訳に問題があるのかも。」
「まだプロジェクトは始まってない。」
「部署の編成を変えるのかもしれない。」
「何を根拠に?」
「クライアントからクレームが来たとか。」
「まだ始まってもいないプロジェクトに?」
まあ。
今のは少し無理があった。
「もしかしたら――」
アイリーンが手を上げた。
「もういい。」
「何?」
「オフィスに行く。」
「分かってる。」
「それで、何の話なのか本人に聞けば分かる。」
「何の話かは、もう私が予想したでしょう。」
「そこが問題なの。」
私は彼女を見た。
「何が問題?」
「情報がないうちから、あなたは『たぶん』を『絶対』に変えちゃうの。」
「そんなことしてない。」
アイリーンはノートを手に取った。
「メール一通で診断までしたじゃない。」
「症状が出てたから。」
アイリーンは笑いながら廊下へ向かった。
私はついていった。
当然。
上司のオフィスのドアは開いていた。
アイリーンの姿を見ると、彼は顔を上げた。
「どうぞ、入って。」
怪しい。
アイリーンは座った。
「メールを見ました。」
「よかった。午後のミーティングの前に話しておきたくてね。」
ほら来た。
彼はファイルを開いた。
「クライアントがプロジェクトを拡大することになった。対象市場を二つ追加して、翻訳チームの調整もこちらに任せたいそうだ。」
私は衝撃に備えた。
すると彼はアイリーンを見た。
「そのチームを君にまとめてもらいたい。」
私は止まった。
アイリーンも止まった。
「私が?」
「そう。」
これは……
都合が悪い。
上司はプロジェクトについて説明した。扱う言語も増える。関わる人も増える。調整することも増える。そしてアイリーンが当初予想していたより、ずっと大きな役割だった。
そして、残念ながら私の主張にとっては――
いい知らせだった。
とてもいい知らせ。
アイリーンは質問をし、メモを取り、スケジュールについて話し合った。
私は黙っていた。
役に立つことが何もなかった。
こういう状況は嫌いだ。
話が終わると、アイリーンはファイルを抱えて自分のオフィスへ戻った。
廊下に誰もいなくなるのを待って、私を見た。
「それで?」
何をしようとしているのか、すぐ分かった。
「何が?」
「恐ろしいメール。」
「恐ろしいなんて言ってない。」
「脅威だって言った。」
「言葉が違う。」
「何か悪いことが起きたと思ってたでしょう。」
「情報が足りなかっただけ。」
アイリーンは足を止めた。
「それって、『間違ってました』をものすごく長く言っただけよね。」
私は息をのんだ。
「間違ってない。」
「間違ってた。」
「潜在的な危険を察知したの。」
「危険なんてなかった。」
「それは今だから分かることでしょう。」
「そう。まさにそれ。」
アイリーンはまた歩き始めた。
私はかなり不満を抱えながらついていった。
「そこがポイントなの」と彼女が言った。
「何の?」
「まだ分からないのに、自分で答えを埋めちゃった。」
「可能性を提示しただけ。」
「事実みたいに言ってた。」
「あなたを守ろうとしたの。」
アイリーンは自分のオフィスの前で立ち止まり、私を見た。
「分かってる。」
その一言で、少しだけ反論する気が失せた。
すると彼女は笑った。
「でも、これからも確認するから。」
信じられない。
…
その夜、アイリーンはアンドレアに電話をかけた。
「いい知らせがある。」
「お願いだから、ディランとは関係ない話にして。」
アイリーンは笑った。
「関係ない。新しいプロジェクトで翻訳チームをまとめてほしいって言われたの。」
アンドレアはほとんど叫んだ。
「ええっ!?」
アイリーンはスマートフォンを耳から離した。
「聞こえたでしょう。」
「それ、すごいじゃない!」
「責任も増えるけどね。」
「すごいことには変わりない。」
「仕事も増える。」
「せっかくのいい知らせを自分で台無しにするの、やめなさい。」
アイリーンは笑った。
「嬉しいよ。」
「当然でしょう。」
それからしばらく、アイリーンはミーティングのこと、拡大されたプロジェクトのこと、自分が担当することになる役割について話した。
アンドレアは質問し、また喜び、少なくとも二回は「あなたを誇りに思う」と言った。
やがて興奮が少し落ち着いた。
するとアンドレアの声が変わった。
「せっかく話してるから聞くけど……昨日の話、大丈夫?」
アイリーンはソファの背にもたれた。
私は耳を澄ませた。
「つらいよ。」
ためらいはなかった。
強がりもしなかった。
アンドレアは少し黙った。
「かなり?」
「それなりに。」
「じゃあ、どうしてもっと知ろうとしないの?」
アイリーンは自分の手を見た。
「知ったところで、私はその情報をどうするの?」
アンドレアは答えなかった。
「私たちは二十五年間、夫婦だった。ディランは大人になってからの人生のほとんどを、私と結婚した状態で過ごしたの。だから今は、結婚していた頃にはしなかったことをしてみたいのかもしれない。違う人たちと知り合ったり、違う場所へ行ったり。」
「年下の女性と?」
アイリーンは目を回した。
「今、すごく大人なことを言おうとしてるんだから。」
アンドレアが笑った。
「ごめん。続けて。」
アイリーンも笑った。
でも、その笑顔はすぐに消えた。
「それを見るのは簡単じゃない。」
「分かってる。」
「特に、楽しそうにしてるって聞くとね。」
そこは私も気に入らなかった。
かなり。
アイリーンは続けた。
「でも、別れたいって言ったのは私だから。」
「だからって、ディランを愛さなくなったわけじゃないでしょう。」
アイリーンは黙った。
「うん。愛さなくなったわけじゃない。」
その言葉に、私たち三人とも一瞬黙った。
やがてアイリーンはため息をついた。
「もしかしたらディランは、結婚している間にはできなかったことを今やってみたいのかもしれない。分からない。でも正直、細かいことまで全部知る必要はないと思う。」
アンドレアは口を挟まなかった。
「ほかの女性と一緒にいるディランを想像するとつらい。それは平気なふりなんてできない。でも……彼を愛しているからって、自分から別れたあとで、私なしの人生をどう生きるかまで私が決めていいことにはならないでしょう。」
私は、それに対して役に立つ言葉を何一つ思いつかなかった。
どうやらアンドレアも同じだった。
しばらくして、彼女がため息をついた。
「あなたがそんなに物分かりよくなると腹が立つ。」
アイリーンが笑った。
「オスクリータも同じこと思ってる。」
ちょっと待って。
「少なくともそこは意見が合うわね」とアンドレア。
「あなたには想像もつかないくらい。」
自分の存在すら知らない人に私の話をされるのは、あまり気分のいいものではない。
二人はもう少し話してから電話を切った。
アイリーンはスマートフォンを置いた。
私は黙っていた。
彼女が私を見る。
「何も言わないの?」
「考えてる。」
「心配したほうがいい?」
「たぶん。」
アイリーンが片方の眉を上げた。
私は自分で気づいた。
「……分かった。可能性はある。」
アイリーンが笑った。
私は笑わなかった。
これはだんだん馬鹿らしくなってきた。
「またやってる。」と私は言った。
「何を?」
「私が言うことを全部確認してる。」
「誰かがやらないと。」
「私の専門的判断を信頼してた頃のほうが好きだった。」
「今朝、メール一通を診断したでしょう。」
それを持ち出す必要はなかった。
「一回のミス。」
「私たちが知ってる範囲では、一回ね。」
私は彼女を見つめた。
「今の言い方、ちょっと脅威を感じる。」
アイリーンは笑った。
どうやら私はクビになったわけではないらしい。
監督されることになったのだ。
どっちのほうが悪いのか、まだ分からない。
少しして、アイリーンは座り、目を閉じた。
私はため息をついた。
「また?」
「南無妙法蓮華経……南無妙法蓮華経……」
素晴らしい。
昼間はファクトチェックされて、
夜は海送り。
私の労働環境は、急速に悪化していた。




