あの子たちは、もう気づいていた
あの夜の話し合いが終わってから―
私たちの間に、もう話すことはほとんど残っていなかった。
少なくとも、アイリーンとディランの間では。
答えはもう出ている。
あとは日曜日を待つだけだった。
二人の息子たちが昼食を食べに来る、その日を。
荷物をまとめる前に。
新しい部屋を探す前に。
一つだった生活が二つに分かれる前に。
二人は、息子たちに自分たちの口で話そうと決めていた。
そのことだけは、迷いなく一致していた。
私は日曜日が来るのを楽しみにしていなかった。
子どもが大人になれば、こういう話は楽になる。
そんなことを言う人がいる。
嘘だ。
大人になった子どもは――
もっと鋭い質問をするだけだ。
…
日曜日の朝。
部屋にはラザニアの香りが広がっていた。
アイリーンは朝からキッチンに立ち、オーブンを何度ものぞき込み、必要もないのに同じ場所を拭き直し、時計ばかり見ていた。
私はしばらく黙って見ていたが、とうとう声をかけた。
「その時計、もう十回は見たわよ。」
「数えてないもの。」
「私は数えた。」
アイリーンは小さく笑う。
「でしょうね。」
そこへディランがサラダのボウルを持って入ってきた。
「これ、どこに置く?」
「あそこ。」
彼はテーブルに置き、少しだけ彼女を見つめた。
「こんなに頑張らなくてもいいんだよ。」
「分かってる。」
「でも、やるんだろ?」
アイリーンは苦笑しながらうなずいた。
「たぶんね。」
やっぱり分からない。
こんな状況になっても、お互いのことだけは驚くほどよく分かっている。
…
先にやって来たのは次男だった。
玄関を開けるなり、まっすぐキッチンへ向かう。
「お願いだから、ラザニアだって言って。」
アイリーンが振り返る。
「こんにちは、が先じゃない?」
彼は笑いながら母親を抱きしめた。
「こんにちは、お母さん。」
そしてすぐオーブンを見る。
「……で?」
「ラザニアよ。」
「やっぱり。お母さんは僕のことが一番好きなんだ。」
その声に、ディランが笑う。
「毎回それを言ってるな。」
「毎回当たってるから。」
少し遅れて長男もやって来た。
手にはケーキの箱。
「デザート担当です。」
次男が箱をのぞき込む。
「何ケーキ?」
「チョコ。」
「よし、入っていい。」
「ありがとう。」
「寛大だからね。」
ほんの少しだけ。
本当にほんの少しだけ。
いつもの日曜日に戻ったような気がした。
…
昼食はにぎやかだった。
仕事の話。
友達の話。
一人暮らしを始めてから起きた失敗談。
次男は洗濯でまたシャツを一枚駄目にしたらしい。
長男は自分で流し台を直そうとして失敗し、結局業者を呼んだという。
ディランが笑う。
「電話してくれればよかったのに。」
「自分でできると思ったんだ。」
「結果は?」
「修理屋さんの今月の売り上げに貢献した。」
アイリーンも思わず笑った。
食事の間、彼女はあまり話さなかった。
ただ、息子たちのお皿が空けば自然にラザニアを取り分ける。
誰も「もう十分」と言っても、お構いなしだった。
いい昼食だった。
だからこそ、少し残酷だった。
…
食事が終わると、次男が皿を持ち上げた。
「片づけるよ。」
長男が目を丸くする。
「誰?」
「成長した。」
「信じない。」
「証人ならいる。」
アイリーンが笑いながら首を振る。
「今日はそのままでいいわ。」
二人とも彼女を見る。
「あとで片づけるから。」
その一言で、部屋の空気が変わった。
ほんの少し。
でも、誰もが気づくには十分だった。
ディランがアイリーンを見る。
彼女は小さくうなずく。
そして息子たちへ向き直った。
「少しだけ、話があるの。」
…
誰も理由を聞かなかった。
そのほうが怖かった。
人は答えを予感しているときほど、質問をしなくなる。
四人はリビングへ移動した。
アイリーンはディランの隣に座る。
向かいには息子たち。
しばらく誰も口を開かなかった。
最近、私は沈黙が好きじゃない。
このところ、沈黙は人生を変えることばかりしている。
アイリーンは両手を重ねた。
「お父さんと私から、話したいことがあるの。」
次男が心配そうに尋ねる。
「誰か病気なの?」
「違う。」
ディランがすぐ答えた。
安心した表情は、一瞬しか続かなかった。
「じゃあ……何?」
アイリーンは静かに息を吸った。
「私たち、しばらく別々に暮らすことにしたの。」
その言葉が、部屋の真ん中に落ちた。
誰も動かない。
最初に口を開いたのは長男だった。
「……本気なの?」
「本気だ。」
ディランは静かに答えた。
次男が戸惑ったように尋ねる。
「ケンカしたの?」
「違う。」
「何かあった?」
アイリーンは首を横に振る。
「一つの出来事があったわけじゃないの。」
長男が父を見る。
「他に好きな人がいるの?」
「いない。」
迷いのない返事だった。
アイリーンは二人を見る。
「お父さんが私を愛さなくなったからじゃない。」
そしてディランを見る。
「私がお父さんを愛さなくなったからでもない。」
次男は困ったように眉をひそめた。
「じゃあ……どうして?」
その質問は来ると思っていた。
やっぱり好きにはなれない質問だった。
アイリーンは少し考えてから話し始める。
「私たちは長い間、とても上手だったの。」
「家族を支えて。」
「仕事をして。」
「次から次へと起きる問題を片づけて。」
彼女は寂しそうに笑う。
「でも、その間に、自分たちのことを後回しにするのが当たり前になってしまった。」
誰も口を挟まない。
ディランが静かに言う。
「変えようとはした。」
彼はアイリーンを見る。
「本当に。」
「分かってる。」
アイリーンは優しく答えた。
「でも私、自分のことにも気づいたの。」
少し間を置く。
「私はもう、自分が誰なのか分からなくなってた。」
部屋は静まり返った。
その沈黙だけは、
私は壊さなかった。
本当の言葉には、皮肉なんて必要ない。
長男が静かに尋ねる。
「もう決めたんだね。」
「うん。」
「住む場所は?」
「まだ探してない。」
次男が驚く。
「まだ?」
アイリーンは苦笑した。
「まだ。」
長男が息を吐く。
「本当にやるんだ……。」
「そうしなきゃいけないと思う。」
しばらく黙っていた次男が、ぽつりと言った。
「やっぱり。」
アイリーンが彼を見る。
「気づいてたの?」
彼はうなずいた。
「うん。」
長男も苦笑する。
「僕も。」
「どうして?」
ディランが尋ねる。
長男は肩をすくめた。
「二人とも、普通にしようと頑張りすぎてた。」
……なるほど。
そういうことか。
子どもって、小さい頃は親に見られて育つ。
でもいつの間にか、
親のほうが見られている。
まったく。
聞いてない。
次男が母を見た。
「お母さん、大丈夫?」
アイリーンは少しだけディランを見て、それから息子を見る。
「怖いわ。」
その一言を聞くと、次男は立ち上がり、何も言わずに母を抱きしめた。
少し遅れて長男も加わる。
四人じゃない。
三人だけの、不格好なハグだった。
私は目をそらした。
泣きそうだったわけじゃない。
……たぶん。
少しだけ、気を遣ってあげただけだ。
やがて長男が離れ、両親を見比べる。
「この決断は好きじゃない。」
アイリーンはうなずいた。
「分かってる。」
「でも……話してくれてよかった。」
ディランも静かにうなずく。
「ありがとう。」
次男が少し笑う。
「一つだけ約束して。」
「何?」
アイリーンが尋ねる。
「日曜日のラザニアは続けて。」
彼はディランを見る。
「僕はどっちの味方にもならないから。」
その瞬間。
みんなが笑った。
私も。
ほんの少しだけ。
家族は、形が変わることがある。
でも。
愛まで一緒に消えてしまうとは限らない。
時には、違う形を探しながら、
それでも残り続けるものもあるのだから。




