私が聞きたくなかった答え
あの会話は、二階で終わったものだと思っていた。
どうやら、本当のことというのは、最悪のタイミングで姿を現すらしい。
夜中の三時を少し過ぎた頃、アイリーンは静かにキッチンへ降りてきた。コップに水を注ぎ、カウンターにもたれかかる。
泣いていたわけじゃない。
取り乱していたわけでもない。
ただ――ベッドまで持ち帰るには大きすぎる問いを抱えてしまった人のように見えた。
私は、彼女が口を開くのを待った。
でも、何も言わない。
「本当なら、眠っている時間よ。」
「分かってる。」
「今夜、それ何回目?」
「……分かってる。」
「少し同じことを言いすぎじゃない?」
彼女の口元がかすかに緩んだ。
でも、その笑みはすぐに消えた。
アイリーンはグラスの中の水を見つめたまま、小さくつぶやく。
「まだ、あの人の質問が頭から離れない。」
どの質問かなんて、聞くまでもなかった。
――君は幸せ?
「もう少し違う答えが出ると思ってた。」
「でも?」
「……まだ分からない。」
キッチンに静けさが戻る。
気まずい沈黙ではない。
ただ、飾りのない沈黙だった。
しばらくして、私は尋ねた。
「一番怖いのは何?」
アイリーンはすぐには答えなかった。
やがて、ぽつりと言う。
「何も悪くないこと。」
私は眉をひそめた。
「それだけじゃ説明にならないわ。」
彼女はゆっくりとうなずく。
「ディランは私を愛してくれてる。」
「そうね。」
「私もディランを愛してる。」
「それもそう。」
「私たちは健康だし。」
「だいたいはね。」
「息子たちも元気にやってる。」
「ええ。」
彼女は私を見た。
「だったら、どうして何かが足りない気がするんだろう。」
その夜、初めて。
私は答えを作ることさえできなかった。
アイリーンは椅子に腰を下ろし、グラスを両手で包み込む。
「ずっと思ってたの。」
「みんなが私を必要としなくなれば、人生はもっと楽になるって。」
力なく笑う。
「実際、そうなった。」
「それで?」
「その先で、自分が何を必要としているのか、一度も考えなかった。」
私は黙って彼女を見つめた。
ずっと、不確かなことこそ恐ろしいと思っていた。
でも今夜は――
本当に怖いのは、すべてが当たり前になってしまうことなのかもしれないと思い始めていた。
「これからどうするの?」
アイリーンは階段へ目を向ける。
「分からない。」
「このままではいられない。」
「分かってる。」
「じゃあ、何かを変えないと。」
「うん。」
その返事は、考えるより先に口からこぼれていた。
私は身を乗り出す。
「何を?」
彼女は長い間、私を見つめ返した。
「……分からない。」
私は思わず聞き返す。
「分からない?」
「分かっているのは、一つだけ。」
彼女は静かに息をついた。
「あの質問を聞かなかったふりには、もう戻れない。」
私はその答えが好きになれなかった。
間違っていたからじゃない。
まだ終わっていなかったから。
私は意を決して尋ねた。
「ディランのもとを離れることを考えてるの?」
アイリーンは目を閉じた。
そして、ゆっくりと開く。
その瞳は、不思議なくらい穏やかだった。
「……分からない。」
安心ではなかった。
恐怖でもなかった。
もっと厄介なものだった。
「分からない」という答えは、あらゆる未来を残してしまう。
彼女はもう一度、階段を見上げる。
「ディランを失いたくない。」
私はすぐにうなずいた。
「それでいい。」
アイリーンは小さく息をのみ、続けた。
「でも……もう、自分自身を失い続けることもできない。」
私たちは黙り込んだ。
初めて、その二つは同時には守れないように思えた。
二階では、ディランが穏やかな寝息を立てて眠っている。
隣にいる女性が、自分でも答えの見つからない問いを抱え始めていることなど、何も知らずに。
私は階段を見つめた。
それから、アイリーンを見る。
私はずっと、自分の役目は彼女が持っているものを守ることだと思っていた。
でも、この夜。
初めて――
彼女を守るということは、もしかしたら、すべてが変わることを受け入れることなのかもしれないと考えてしまった。




