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数えるものを間違えていた

私は、ヴィヴィアンの名前を数えていた。

夕食の途中で一度。

ディランが契約上の問題を説明したときに、もう一度。

そして、予定よりずっと長引いた会議の話をしたときに、さらに一度。

最初にその名前が出たとき、私はアイリンの意識の中で、そっと指を一本立てた。

「一回」

二度目には――

「二回」

そして三度目。

もう一本指を立てようとして、私はやめた。

アイリンはすぐに気づいた。

『どうしたの?』

「たぶん、数えるものを間違えてた」

ディランが新しいプロジェクトの責任者になってから、何週間かが過ぎていた。

それでも彼は努力していた。

そのことは、ちゃんと認めなければならない。

帰宅すればアイリンにキスをした。

一日がどうだったか尋ねた。

仕事の都合がつくかぎり、彼女と一緒に夕食を取ろうともしていた。

冷たくなったわけではない。

ただ、忙しくなっただけだった。

ものすごく忙しく。

人間は、「距離ができたこと」と「忙しいこと」はまったく別だと思いたがる。

本当に別であることもある。

でも、そうではないこともある。

その晩、ディランは疲れきった顔で帰ってきた。

けれど、アイリンの姿を見た瞬間、表情をやわらげた。

「ただいま」

そう言って、彼は身をかがめてアイリンにキスをした。

「遅かったわね」

「うん。分かってる」

ディランは食卓へ目を向けた。

「まさか、待ってた?」

「待ってたわ」

「アイリン……」

「私も仕事をしていたもの」

「それを聞いても、罪悪感は減らないんだけど」

「減らすために言ったんじゃないもの」

ディランは笑った。

よし。

二人はまだ、こうして笑える。

しばらくして、二人は向かい合って夕食を食べ始めた。

ディランは最初の一口を食べると、目を閉じた。

「今日一番の出来事だ」

「そんなに大変だったの?」

「想像以上に」

アイリンは笑った。

「何があったの?」

それだけで十分だった。

ディランはまず会議の話を始めた。

次に顧客。

それから、危うく古い修正版のまま送られそうになった契約書。

「でも、送る前にヴィヴィアンがミスに気づいてくれたんだ」

私は指を立てなかった。

ディランはそのまま話を続けた。

「法務部は全部延期したがったんだけど、ヴィヴィアンが別の方法を提案してくれて」

それでも私は何もしなかった。

「そのあと、僕がチームを立て直している間、ヴィヴィアンが顧客の対応をしてくれた」

私はただ、ディランを見ていた。

アイリンがちらりとこちらを意識した。

『もう数えないの?』

「うん」

『どうして?』

「問題は、ヴィヴィアンじゃないから」

アイリンは何も言わなかった。

私も、それ以上は言わなかった。

ディランは話し続けた。

顧客。

締め切り。

会議。

突然起きた問題。

新しい提案。

アイリンが会ったことのない人たち。

夕食の席でディランが名前を口にすることでしか、彼女の知らない人たち。

今のディランの世界は、とても大きく聞こえた。

忙しくて。

複雑で。

生き生きとしていた。

そしてアイリンは静かに耳を傾けていた。

まるで、一度も訪れたことのない街の話を聞いているみたいに。

やがて、ディランは話すのをやめた。

そして彼女に微笑んだ。

「アイリンは?」

「今日はどうだった?」

アイリンは少し考えた。

「原稿の調整が終わったわ」

「すごいじゃないか」

「思ったより時間がかかったけど」

「でも、終わったんだろ?」

「ええ」

「君ならできると思ってた」

アイリンも微笑んだ。

「それから、息子たちとも話したわ」

「元気にしてる?」

「ええ、二人とも」

彼女は小さく笑った。

「下の子が、またパスタを作ろうとしたの」

ディランは警戒するような顔をした。

「心配したほうがいい?」

「ソースを焦がしただけ」

「進歩だな」

「本人もそう言ってたわ」

二人は笑った。

ほんの少しのあいだだけ。

昔と何も変わらない二人に見えた。

私は危うく安心しかけた。

危うく。

そのとき、ディランがあくびをした。

隠そうとしたけれど、無駄だった。

「疲れてるでしょう」とアイリンが言った。

「平気だよ」

「食べながら寝そうになってたわ」

「料理を味わってただけだ」

「寝てたわよ」

「両方できるんだ」

ディランはアイリンが止めるのも聞かず、自分の皿をキッチンまで運んだ。

それからソファに腰を下ろした。

「五分だけ」

足を伸ばしながら、彼は言った。

「そのあと、片づけを手伝う」

アイリンは腕を組んだ。

「三分ね」

「もう少し僕を信じてくれてもいいだろ」

三分後。

ディランは眠っていた。

私たちは何も言わなかった。

アイリンはキッチンへ戻り、残りの片づけを終えた。

そして戻ってくると、毛布を持ってディランにそっとかけた。

彼は身じろぎもしなかった。

アイリンは向かいの椅子に腰を下ろした。

部屋が静かになった。

穏やか、ではない。

ただ静かだった。

その二つは、同じではない。

アイリンは長いあいだ、眠るディランを見つめていた。

そして、ひとつの思いが浮かんだ。

『もう、息子たちは私を必要としていない』

「成長するって、そういうことでしょう」

『分かってる』

「あなたも、それを望んでた」

『今だって望んでるわ』

また沈黙が落ちた。

アイリンの視線は、ディランから離れなかった。

『彼にも、自分の世界がある』

「仕事なら、前からしてたでしょう」

『でも、今は違う』

そう。

今は違う。

顧客がいる。

チームがいる。

会議がある。

毎日のようにディランを必要とする人たちがいる。

彼と一緒に成功を喜ぶ人たち。

彼が帰宅する前に、彼と一緒に問題を解決する人たち。

アイリンは視線を落とした。

『彼は、何でも話してくれる』

「そうね」

『顧客の名前も知ってる』

『同僚の名前も』

『仕事の内容も』

『抱えている問題も』

そこで、彼女はためらった。

そして、ずっと考えないようにしていた思いが浮かんだ。

『でも……』

『私はもう、そのどこにもいない気がする』

私は否定したかった。

そんなことはないと言いたかった。

いつものように、少し皮肉を言ってごまかしたかった。

けれど――

口から出たのは、別の言葉だった。

「あなたは今でも、彼の人生の一部よ」

アイリンは目を閉じた。

『だったら、どうして彼の毎日の中には、もう私はいないように感じるの?』

そこだった。

答えは、そこにあった。

問題はヴィヴィアンではなかった。

プロジェクトでもなかった。

問題は、ディランが毎晩帰宅して、アイリンがもう隣で共有していない人生の話をすることだった。

彼女は、彼の一日について何でも知っていた。

けれど、その一日を一緒に生きてはいなかった。

二十年以上、いつも誰かが彼女を必要としていた。

息子たち。

ディラン。

家族。

忘れ物をした。

学校の課題がある。

誕生日がある。

病院の予約がある。

解決しなければならない問題がある。

アイリンは長い年月をかけて、みんなが自分の人生を築くのを助けてきた。

けれど、その先に何があるのかを、自分に問いかけたことはなかった。

最後に、ひとつの思いがこぼれた。

『私は、これから何をすればいいの?』

私は口を開いた。

いつもなら、何かしら答えがあった。

気の利いたこと。

慰めになること。

少なくとも――

少しは鬱陶しいこと。

けれど今回は。

何も浮かばなかった。

アイリンの人生の内側で声になってから、初めて。

私は、答えを持っていなかった。



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