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どうやら、夫婦にも手入れが必要らしい

恋愛で一番難しいのは、恋に落ちることだと思っている人が多い。

違う。

恋に落ちることなんて、驚くほど簡単だ。

本当に難しいのは、仕事や子育て、締め切りや毎日の責任に追われながら、それでも二人のつながりを失わないこと。

その頃になると、人間はだいたい行き当たりばったりになる。

あの土曜日以来、アイリンは一つ決めたことがあった。

「また時間ができたら」じゃない。

「子どもたちが出かけたら」でもない。

二人の時間は、空くのを待つものじゃなく、自分たちで作るもの。

そう決めたのだ。

もちろん、人生はそんなに協力的ではない。

毎週デートなんてできない。

特別な週末もない。

でも、不思議なことに、小さな時間なら少しずつ見つかるようになった。

火曜日の朝は、子どもたちが起きる前に二人でコーヒーを飲んだ。

木曜日は買い物へ向かう車の中で十分ほど話をした。

日曜日には、次男がバスケットボールの練習をしている間、近所を少しだけ散歩した。

どれも特別な出来事じゃない。

ただ、その時間だけは二人だけのものだった。

私は腕を組む。

「なるほど。」

アイリンが買ってきた野菜を冷蔵庫へしまいながら聞く。

「何が?」

「夫婦って、細切れの時間で維持される生き物だったのね。」

彼女は笑った。

「案外そうかも。」

私は首を振る。

「人間の仕組みって、本当に効率が悪い。」

数日後の夜。

家の中が静まり返った頃、アイリンは水を飲もうとキッチンへ向かった。

すると、冷凍庫の前でダイレンがアイスクリームを持って立っていた。

二人は目が合う。

何も言わない。

しばらくしてダイレンがアイスを少し持ち上げた。

「食べる?」

十分後。

二人はキッチンテーブルに並んで座り、一つの容器からそのままアイスを食べていた。

夜中にわざわざ器を使うほど律儀ではない。

話題は自然に移り変わる。

子どもたち。

仕事。

アンドレア。

大学時代。

名前は思い出せないのに、変な踊りだけは全員覚えている同級生。

そしてダイレンが、うっかり地雷を踏んだ。

「そういえばさ。」

アイリンはスプーンを向ける。

「その始まり方、ちょっと怖い。」

「大学の頃の髪型さ。」

「うん?」

「あれ、そんなに悪くなかったと思うんだ。」

アイリンは吹き出しかけた。

「ひどかったわ。」

「当時は流行ってた。」

「芝刈り機に負けた人みたいだった。」

「そこまでじゃない。」

「写真が証拠よ。」

ちなみに。

今回はアイリンが全面的に正しい。

私はあの髪型を知っている。

あの時代全体が謝るべきだった。

笑いが落ち着くと、話題はまた変わっていく。

大学生活。

最初のアパート。

初めて買ったソファ。

「あれ、なんで買ったんだろう。」

ダイレンが苦笑する。

「安かったから。」

「片方に傾いてた。」

「私たちも傾いてた。」

「座るたびに音がしてた。」

「でも長持ちした。」

アイリンが微笑む。

「私たちもね。」

私は天井を見上げる。

「あのソファね。」

アイリンが笑う。

「覚えてるの?」

「あれは希望だけで支えられてた家具だったわ。」

笑い声は、やがて静かな沈黙へ変わった。

気まずいわけじゃない。

もう無理に話し続けなくても平気になっただけだ。

しばらくしてダイレンが言った。

「ねえ。」

「何?」

「僕たち、頑張りすぎてたのかもしれない。」

アイリンは首をかしげる。

「二人の時間を作ること?」

ダイレンはうなずく。

「完璧な時間を待ってた。」

アイリンは少し考えた。

あの日のレストランも楽しかった。

その後の散歩はもっと楽しかった。

でも今思えば、この夜中のアイスクリームも、きっと忘れない。

どれも特別だったからじゃない。

特別じゃなくてもよかったから。

「完璧な時間なんて、たぶんないのね。」

アイリンは静かに言う。

「私たち、自分たちのことをいつも一日の最後に回してた。」

ダイレンも笑った。

「僕も同じこと考えてた。」

アイリンは溶け始めたアイスの容器を見つめる。

「私たち、この家族を作るために何年も頑張ってきた。」

顔を上げる。

「後悔なんて一つもない。」

少し笑う。

「でも今度は――」

「この家族を作った私たち自身も、大事にしないとね。」

ダイレンはすぐには答えなかった。

ただ静かにテーブル越しに手を伸ばし、彼女の手を握る。

「それがいい。」

アイリンもうなずいた。

「私もそう思う。」

私は腕を組む。

「いやだわ。」

アイリンが笑う。

「今度は何?」

「夫婦って、ちゃんと手入れが必要だったのね。」

「今さら?」

私はため息をつく。

「研究内容を書き直さないと。」

「研究?」

「私は長年、感情の大惨事ばっかり観察してきたの。」

首を振る。

「幸せな結婚生活なんて、統計が狂うじゃない。」

気づけばアイスは半分以上溶けていた。

でも二人とも気にしなかった。

何か特別なことが起きたわけじゃない。

それでも、その夜のキッチンは少しだけ温かかった。

たぶん二人は思い出したのだ。

愛は、大きな出来事で続くものじゃない。

何度でも相手を選び直すこと。

何度でも、もう一度知ろうとすること。

その積み重ねで続いていく。

まったく。

人間って、本当に手がかかる生き物だ。



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