母親であることと、自分を見失うことのあいだで
九か月後、二人目の子どもが生まれた。
そして、オスクリタの予想に反して世界は終わらなかった。
残念ながら、その代わりにずっと忙しくなった。
二人目が生まれても生活が壊れたわけではない。むしろ最初の時より楽な部分もあった。アイリンは赤ちゃんが泣くたびに慌てなくなっていたし、小さな失敗をすべて大惨事の前触れだと思うこともなくなっていた。
経験が、かつての不安の一部を置き換えてくれていたのだ。
全部ではない。
でも、十分なくらいには。
...
ある午後、アイリンはベビーモニターを隣に置きながら、小さな服を畳んでいた。スピーカーからは穏やかな寝息が聞こえ、リビングの床の半分はおもちゃで埋まっている。
心の中では、オスクリタがソファからその様子を眺めていた。
「まあね」
彼女は渋々認める。
「前回より情緒不安定じゃなくなってる」
アイリンは笑った。
「ありがとう」
「褒めてないわよ」
...
ダイレンもまた、驚くほど自然に父親としての生活に馴染んでいた。
深夜のミルク、おむつ替え、寝かしつけ。どれも以前よりずっと落ち着いてこなしている。
ある夜、アイリンは上の子を寝かせたあと階段を下りてきて、リビングの光景に思わず立ち止まった。
ダイレンは一人掛けの椅子で眠っていた。
胸の上には末っ子が丸くなって眠り、膝には読みかけの絵本が逆さまに開かれたまま置かれている。
アイリンはしばらく黙ってその姿を見つめた。
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心の中でオスクリタが大げさに指を差す。
「気をつけなさい」
アイリンは視線を外さないまま尋ねた。
「何を?」
「そういう愛情はね、人を感情的に再起不能にするのよ」
...
アイリンは思わず笑った。
オスクリタが言いたいことは分かっていた。
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その後の年月は驚くほど速く過ぎていった。
赤ちゃんは幼児になり、幼児は子どもになる。
学校の予定が増え、誕生日会が増え、宿題が始まり、気づけば一年ごとに時間が短くなっているような気さえした。
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一日の始まりは、たいてい準備ができる前にやってくる。
片方の子は靴が見つからず、もう片方は朝食を拒否する。学校へ提出する書類にサインが必要だったり、宿題を手伝ったり。
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ある朝、ダイレンは鍵を探しながら言った。
「今日は迎えに行ける?」
「四時から会議があるの」
「じゃあ俺が早めに帰るよ」
「大丈夫?」
ダイレンはうなずいた。
「なんとかなるさ」
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会話は三十秒も続かなかった。
最近はそんな会話ばかりだった。
話したくないわけではない。
ただ、その先にはいつも別の用事が待っていた。
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数週間が数か月になり、数か月が日常になった。
少しずつ、二人の生活は恋愛というより段取りに近いものになっていく。
壊れているわけではない。
ただ、少しだけ焦点が合っていない。
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ある夜、ダイレンが仕事から帰ると、アイリンはキッチンテーブルでメールを返信しながら上の子の学校の課題を手伝っていた。
下の子はようやく眠ったところだった。
ノートパソコンの横にはコーヒーが置かれている。
すっかり冷めていた。
まただ。
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ダイレンは彼女の額に軽くキスをした。
「長い一日だった?」
アイリンは笑う。
「どの日の話?」
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ダイレンも疲れたように笑った。
その返事だけで十分だった。
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在宅勤務は、かつてのような特別な贈り物ではなくなっていた。
以前は自由を与えてくれた。
今はただ、すべてが起きる場所だった。
会議、洗濯、学校の予定、翻訳の締め切り、昼食、食器洗い、そしてまた仕事。
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昼食を食べたかどうか思い出せない日もある。
同じコーヒーを三回温め直して、結局飲まない日もある。
それでも誰もが、彼女が問題なく機能し続けることを期待していた。
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心の中でオスクリタが天井を見上げた。
「ねえ、人類って女性にずいぶん面白い仕事を押し付けたわよね」
アイリンはキーボードを打ちながら答える。
「例えば?」
「子育てして、仕事して、みんなの感情を支えて、ちゃんと見た目も整えて、文句は言わない」
少し間を置く。
「ひどい設計よ、正直」
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アイリンは笑った。
でも、その笑いはすぐに消えた。
冗談の中に、本当の痛みが混じっていたからだ。
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数日後、ビデオ会議の前にアイリンは寝室の鏡の前に立っていた。
ブラウスを整え、髪を直し、それから動きを止める。
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彼女はしばらく鏡の中の自分を見つめた。
批判的にでもなく、悲しそうにでもなく。
ただ、どこか他人を見るように。
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心の中にオスクリタが現れた。
珍しく、最初の言葉は冗談ではなかった。
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「それ、ちょっと問題ね」
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アイリンは目の下の隈に触れた。
「疲れて見える?」
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オスクリタは腕を組む。
「見えないのよ」
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その言葉のあとに続いた沈黙は、二人が思っていた以上に重かった。
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その夜、子どもたちが眠ったあとも、アイリンはリビングに残っていた。
久しぶりに、ずっと口にしなかったことを声に出す。
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「最近、自分が誰なのか分からないの」
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言葉は静かな部屋に残った。
普段ならオスクリタはすぐに何か言う。
皮肉かもしれない。
批判かもしれない。
大げさな予言かもしれない。
何かしら必ず。
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でも今回は違った。
オスクリタは黙ったままだった。
それだけで妙に不安になる。
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アイリンは彼女を見た。
「今日はずいぶん静かね」
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「そうね」
オスクリタは視線を逸らした。
しばらくして、小さくため息をつく。
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「ねえ、腹が立つこと言っていい?」
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「なに?」
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「これ、もう不安とか劣等感の問題じゃないと思う」
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アイリンは眉をひそめた。
その答えは二人とも好きではなかった。
不安や劣等感なら戦い方を知っている。
何年も向き合ってきたから。
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でもこれは違う。
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疲労は言い争わない。
怒鳴らない。
「あなたはダメだ」と責めたりもしない。
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ただ少しずつ何かを奪っていく。
そしてある日、何かがなくなっていることに気づくのだ。
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その考えは長い間、二人のあいだに横たわっていた。
どちらも先に認めたくなかった。
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その夜遅く、ようやく二人の子どもが眠りについたあと、アイリンはソファに座ったまま動く気力を失っていた。
数分後、ダイレンが隣に腰を下ろす。
しばらく誰も話さなかった。
疲労がまるで形を持っているみたいだった。
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やがてダイレンが彼女を見た。
皿洗いのことでもない。
明日の予定でもない。
アイリン自身を。
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「会いたかった」
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その言葉は、どんな喧嘩よりも強く胸に響いた。
彼女も同じだったからだ。
夫としてだけではない。
一人の人としてのダイレンに。
予定や責任に追われる前の、あの頃の二人に。
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アイリンはそっと彼の肩にもたれた。
「私も」
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劇的な演説はなかった。
魔法みたいな解決策もなかった。
ただ、少しずつ自分たちを見失っていた二人が、それを認めただけだった。
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ダイレンは自然に彼女の手を取る。
アイリンも握り返した。
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心の中でオスクリタがものすごく嫌そうな顔をした。
「最悪ね」
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アイリンは笑う。
「今度は何?」
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「健全な感情の共有よ」
少し間。
「気持ち悪い」
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でもその声は以前より柔らかかった。
棘も少なくなっていた。
何もかも壊したがるような鋭さも。
...
母親であること。
仕事。
疲労。
結婚生活。
年を重ねること。
その全部のあいだで、彼女たちの中の何かは変わっていた。
消えたのではない。
変わったのだ。
...
そしてたぶん、大人になるというのは恐れなくなることでも、完璧になることでもない。
人生が何度も自分を消そうとしてくるたびに、そのたびに自分自身を見つけ直していくことなのかもしれなかった。




