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【書籍化】未来で冷遇妃になるはずなのに、なんだか様子がおかしいのですが…  作者: 狭山ひびき
第二部 ラファエル王太子の最愛

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ローズの出した答え 2

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「ローズ、俺に黙って勝手なことをしたね?」


 次の日。

 ローズの部屋に夕食を取りに来たラファエルは、部屋に入って来るなりじっとりとした目を向けてきた。


(あ……)


 ローズが「しまった!」という顔をすると、盛大にため息をつかれる。


「夕食の準備が整うまで、俺の部屋で話をしようじゃないか。ねえ?」

「あ、ぅ……」


 これは怒っているなとローズが助けを求めるようにミラを見たが、事情を知っているミラは助けてはくれなかった。「突っ走ったローズ様が悪いのですから、怒られていらっしゃいませ」とにこやかに送り出されて、ローズはがっくりと肩を落とす。

 ラファエルに連れられて隣の部屋まで移動すると、彼はソファに腰を下ろすとひょいとローズを膝に乗せる。がっちりと腰に腕が回されて逃げられなくされたローズは、おろおろと視線を彷徨わせた。


「それで、ローズの言い分を先に聞こうじゃないか」


 ラファエルは笑顔なのに、声には逆らえない響きがある。

 どうあっても誤魔化せないし言い訳も通用しないだろうから、ローズは素直に白状することにした。


「事前に相談しなくてごめんなさい……」


 ミラが言ったように、今回は少々突っ走りすぎた。

 ブランディーヌのためにも急がなくてはと焦ってしまったからだが、それは言い訳にはならない。


「王妃様から、ブランディーヌ様の処断を決めて報告するようにと言われていたので、ちょうどいいと思ったんです」


 ブランディーヌがローズの頬を叩いた件の処断はローズ預かりになっていた。それを思い出したローズは、今回のブランディーヌが攫われた件を「建前」として使うことを思いついたのである。


「ブランディーヌ様がレオンス殿下と結婚する方法はこれしかないと思って……」


 ブランディーヌが攫われたことで、ブロンデル国との関係はさらに悪化することが想定される。

 このまま両国の関係がこじれるのはマルタン大国としても望むことではない。

 ゆえに、ブランディーヌをブロンデル国へ嫁がせ、両国の橋渡しをさせる。

 国同士の関係が良好とは言えない国に嫁がせるのは、ローズを叩いたことへのブランディーヌの「罰」としてふさわしい。

 このような持論を展開したところ、ブランディーヌのことを案じていたジゼルも協力してくれることになり、国王への根回しに動いてくれたのである。


 ちなみにジゼルからは、建前としては悪くないがアルベリク国王の説得には少し弱いと言われ、いくつか肉付けもされている。

 曰く、一度誘拐されたブランディーヌは世間からは「傷者」として見られるだろう。問題になるような事実はなかったが、貴族の結婚において処女性を重要視するマルタン大国ではブランディーヌに良縁は望めない。だから責任をもってブロンデル国に引き取ってもらうのがいい、というようなことが追加されたわけである。


「父上から報告があったときは強引すぎてあきれたよ。聞けば君が思いついたことだって言うじゃないか。まったく……。今度からきちんと報告するように」

「はい……」


 これは、突っ走った自分が悪い。ローズはしょんぼりと俯いた。

 ラファエルはローズの頭にポンと手を置く。


「まあ、今後のことを考えると、ローズのこの案はうまく作用するだろう。ブロンデル国への賠償問題については、レオンス殿下がヒルカ国再建の主張を取り下げることで手打ちになりそうだからね」

「そうなんですか?」

「もちろん、レオンス殿下はこれから国に帰って国王や大臣たちに説明する必要がある。だけど、こちらが国交改善の橋渡しで王女まで差し出すと言えば、こちらがかなりの譲歩をしたと、少なくとも他国には映る。これでごねれば、ブロンデル国側が悪者と言うわけだ。さすがに、うち以外のほかの国とも外交でもめたくはないだろう? レオンス殿下は有能だからね、しっかり外堀を埋めてから国内の反対派を抑え込みにかかると思うよ」

「じゃあ、大きくこじれることは……」

「ないはずだ。それどころか、国交がほぼ停止していた今までのことを考えると、結果だけを見れば改善することになる」

「じゃあ!」

「ま、上手くまとまったってことだよ。多少の問題が残るとすれば、レオンス殿下がブロンデル国内の過激派を始末し安定させるまで、数年はブランディーヌを嫁がせられないということかな」

「数年……ブランディーヌ様は不安になられるでしょうか」


 八年も待ったのに、さらに待たされるのはラファエルの言う通り問題だろう。

 ローズが顔を曇らせると、ラファエルが首を横に振った。


「いや、そうじゃなくて、姉上があと数年も王宮にいることが問題なんだ」

「え?」

「さっさと出て行ってほしいのに、ままならないものだな。はあ……」

「ええ⁉」


 本心からそう思っていそうなラファエルの嘆きに、ローズはあんぐりと口を開けた。


「今回の件で姉上は君のことをずいぶんと気に入ったみたいだからな」


 それが本当ならば、いいことではないのだろうか。ローズはラファエルの家族には気に入られたいし、仲良くしたいと思っている。ラファエルはいったい何を問題視しているのだろう。

 不思議そうな顔をしたローズの鼻を、ラファエルがふにっとつまんだ。


「そんな顔をしているってことは、わかっていないね。ローズを気に入った姉上が、何かと君にちょっかいをかけてくるだろうって言っているんだけど」

「それは、ダメなことなんですか?」

「ダメに決まっているだろう?」


 ラファエルはローズの鼻をつまんでいた手を頬に移動させて、今度はふにふにと頬をつつきながら続けた。


「俺はローズを可能な限り独占したいし、ローズの一番で唯一でいたいんだよ。どう考えても姉上は邪魔ものじゃないか」


 ラファエルはもしかして冗談を言っているのだろうか。

 ローズが思わず「ふふ」と笑みをこぼすと、ラファエルの形のいい眉がぐっと寄った。


「なるほどまだ理解できていないのか。じゃあ言い方を変えよう。俺が嫉妬すると君がとても大変な目に遭うと思うけど、それでも笑っていられるのかな」


(嫉妬? 大変? ……何の話?)


 話がどうつながっているのかがわからなくなって、ローズはパチパチと瞬く。

 ブランディーヌがローズのことを気に入ったらしいというところから、どうして嫉妬へと話が飛んだのだろう。


(というか、ラファエル様が嫉妬? ……わたしに?)


 それはちょっと……、嬉しいかもしれない。

 ふにゃっと頬を緩めたローズを見て、ラファエルが額に片手を当てて天井を仰いだ。


「本当に知らないからね、ローズ。俺は一応警告したよ?」


 ――ローズがラファエルのその言葉の意味を知ることになるのは、今日からさらに数日後のことだった。





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