七話 少女の小さくて大きな決断
更新が遅れて申し訳ありません。
門から少し進んで、左へ曲ったところに、「冒険者登録管理所」という小さなレンガの建物がある。
冒険者の、新規登録、登録解除の依頼を受け付けている場所だ。
この建物の上に、伝書鳩が何匹か止まっている。
おそらく、他の国や街に、新規登録者などの、顔、年齢、職業、名前などを、行き渡らせるためだ。
この建物の、すぐ隣に、登録所の3倍程度はある、大きい建物がある。
ギルドだ。冒険者ギルド。
ここで、冒険者達は、魔物の討伐クエストなどを受けて、クエストをクリアし、報酬のお金や、便利アイテム、素材などをもらう。
この、ギルドに入る前に私はまず登録だ。
木のドアをガチャリと開けて、中に入ると、受付席ごとに、受付嬢が対応している。
全員青い受付嬢の服を着て、対応している。時間が少しかかりそうだった。
狭さの割には、ちゃんと、待合席が10脚ほどある。全部木のイスだ。
私達はそこに腰をかけて待つ。
……ああ、いよいよ私も冒険者となるのか。ワクワクするような、ドキドキするような感情に襲われている。
スバルも、最初はこんな感じだったのだろうか。
「次の方ー、3番の御席へどうぞー。」
呼ばれた。ので、私は立ち上がって、一番端の3番の席まで行き、腰をかける。
「お名前は?」
「サッ、サクラです。」
メガネがよく似合うポニーテールの受付嬢に名前を聞かれたが、名前を言うだけなのに、緊張して普通に言えない。
「年齢はおいくつでしょう。」
「じゅっじゅうよんさい…です。」
「14歳。最年少での冒険者登録ですねぇ。大抵は、15歳程度になってから冒険者になるんですけど…。」
などと言う。
やむを得ないのだ。他に生きる道なんてない。あってもそれは生き地獄だ。
「生年月日は…」
それから、自分のステータスを話して、ついに、職業を選ぶ時が来た。
うん。もう答えは決めてある。
「続いて、職業ですが、説明を受けますか?」
ある程度のことは知っている。
だが、まだ分からないことも多そうなので一応聞いておこう。
「お願いします。」
「では、説明します。……………」
自分でも分かっているところを省くと、主職業は、全部で12個ほど。
剣士、騎士、呪文系魔術師、召喚系魔術師、僧侶、盗賊、旅芸人、弓士、演奏家、魔物使い、拳闘士、錬金術師だ。
副職業は、たくさんありすぎて覚えられなかったが、気になったのがひとつ。
料理人。
いろいろな料理を作る。またはひらめくことができる職業だ。それに器用になれる。
これなら、冒険者でもバランスのいい食事ができるだろう。
でも、まずは主職業を決めよう。
私は、勇敢に敵と対峙し、剣技を駆使して戦う…
「剣士にします。」
私はそう言った。
振り返ると、スバルが大きく目を開き、口をポカンと開けていた。
「剣士ですね。分かりました。
……はい、これで手続きは終了しました。おめでとうございます!貴方も今日から冒険者です!わーパチパチパチ〜」
受付嬢が、立ち上がって、微笑みながら拍手する。
受付嬢が座る。
「では、手続きが完了いたしましたので、冒険者証明書を発行します。ので、今から一時間ほど経ちましたら、またここに戻ってきてください。」
「はい、ありがとうございました。」
私は席を立ち、スバルのもとへ行く。
スバルは立ち上がって、何か言いたげな顔をしていた。
「終わったよ。」
「なぁ、お前、なんで剣士にしたんだ?一番危険な役だぞ?いいのか?」
スバルはまず最初に職業の事を、唾を飛ばすような大声で言った。
受付嬢が、困った顔をして、こちらを見ている。
しかし、私は言う。
「いいよ。だって…剣士になったのは…スバルを…守る為だもん。」
そうだ。
スバルは、召喚獣を戦わせているから、身体に影響を受けるような攻撃はあまり受けない。
しかし、あと召喚獣を二体死なせてしまったら、スバルは死んでしまうのだ。
ので、召喚獣を守りながらも同時にスバルも守る。
それに、剣士になったのは、別の、もっと重要な理由がある。
「私は、いつもいつも、誰かに守られて生きてきた。誰かを守ったことなんて、一度もない。だから、今度は私が!スバルを守る。」
拳を握りしめて言った
それを聞いたスバルは、驚いたような顔で数秒硬直していた。そして、あとから、
「お前は、弱いから守られてきただけだ。そういうことは、俺より強くなってから言え。」
と言った。
「じゃあ、私、絶対スバルより強くなって見せるから!」
少し大きめの声で言った。
幸い、周りの人は反応しなかったようだが…
私の言葉を聞いたスバルは、一瞬ニヤリと笑った。
「ま、せいぜい頑張りな。」
スバルがそう言った。私の目標が決まった。
それは、スバルを守れるように、とびきり強くなることだ。
拳を握りしめて思考していると、スバルは、さっさと行くぞと言わんばかりに早足で歩いて登録所を出た。
登録証の代わりとなる登録書ができるのは、今から55分ほどあとだ。
現在の時間は、12時30分。昼食どきだ。
「腹減ったなぁ。」
確かに、私もお腹が空いている。
「なぁナビドラ?」
「ん?なにそのパズ○ラみたいな言い方は。どうしたナビ?」
「この国に万屋とかなかったか?」
「ああ、あるナビ。たしか商店街にあったナビ。」
「わかった。行こう。サクラ。そこで飯玉でも買って、飯にしよう。」
「うん。分かった。」
☆☆☆
ナルーガ王国。ナルーガ城。
門番は、鎧の金属音をジャラジャラと鳴らし、少しゆったりめに走っている。
門番の目的は、他でもない。
一応、もう一人の門番から、事情聴取の準備をしてこいと言われたが、この門番は、言われたことをしようとはしなかった。
なぜなら、今から王を暗殺して、王妃を誘拐する為だ。
この門番は、王国の兵として、遣わされた時、王妃を見た。
王妃は、とても美しいので、門番は一目惚れをしてしまったのだ。
美しい王妃に見惚れていると、その隣にいたいかつい王が、こう言ったのだ。
「おい、そこの兵。なぁにわしの妻に見惚れておるのじゃ。兵のくせに、わしの妻をジロジロ見るなっ。しっしっ。毛皮らしい。」
その言葉を聞いた兵は、頭に血が上った。
あんな誰でも見惚れるような美女に、見とれてはいけないというのだ。
兵のくせに?俺は兵だけど人間だ!
まあ、これくらいなら、まだ許せる範囲だが、王はさらに追い討ちをかける。
王に、お茶を入れた時だった。
「砂糖をたっぷり入れてくれな。」
「たっぷりとは、どのくらいでしょうか。」
「なぁに、お主はそんな事も分からんのか。これだから兵士は。」
「そう言われましても…。」
「もういい!とにかくたっぷりじゃ!」
「はい、分かりました。」
ということで、門番は砂糖を大さじ二杯ほど入れた。結構たっぷりだ。
「どうぞ。」
「うむ。…………が〜〜〜…甘ったるい!」
「え?」
「こんな甘ったるいのは頼んでおらんぞ!」
そう怒鳴りながら、王はカップを机に叩きつけて割る。
バリーンと大きな音がした。
「ぬっ、うるさいぞ!お前のせいだ!」
「ええ!?なんで、カップを割ったのは王様じゃありませんか!」
「ええい黙れ!お前が甘ったるいの出すからこうなったんじゃ!もういい!わしは寝る!」
そう言い、王は部屋にずかずか歩いて行った。
途中ですてんと転んだ。家来たちが笑う。
すると、王は、顔を、まるでリンゴのように赤く染める。
すると、また大きな声を出す。
「笑うな!ぐぅぅ、お主のせいじゃ!」
そう言って、王は門番を指差す。
これには、流石に頭にきた。
「わ、…私はなにもやってないじゃないですか!」
「うるさい!お前が何かしらの魔法をかけたんじゃ!それでわしは転んだんじゃ!」
「私は騎士ですので!魔法は使えません!」
「うるさいわ!お前はもう二度と顔を出すな!この国の門番でもやってろ!」
「そ、そんな!」
そして、また王は自分の部屋へと歩いて行った。
この日の事について、門番は思った。
『あの王は、ろくに政治もやってないくせに、なにが王だ!でかいツラしやがって。…殺そうかな。
あんなやつこの国にいても、どうしようもない!だったら殺しちまえばいい!
そして、そのまま王女を誘拐して、好きなようにしてやるんだ!
ムカつく王も消えるし、王女も手に入れられるし、一石二鳥じゃねぇか。
よぉし!やってやる!』
門番は、王を殺すと心に決め、実行日について考えた。
その実行日が、今日だと言うのだ。
王、暗殺の時が刻一刻と迫っているにも関わらず、兵達はのんきにしている。
「インビジブル」
王の部屋への道へと、隠密に行く為、門番は、誰もいない場所で、姿を消す魔法を唱えた。
門番は、王の部屋へと、歩みを進める。
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