六話 ナルーガ王国
私達は、カリアス村の宿屋にチェックアウトをお願いして、村を出て行く。
ナビどらごんによると、次の目的地はカリアス村から東に位置する、ナルーガ王国だという。
ナルーガ王国は、約五百年前、この地にて、悪しき力を持ったドラゴンを倒した、『ナルーガ』と呼ばれる少年がいたという。
ドラゴンを倒してくれたお詫びにと、もともと町だったこの国の町長が、なんでもしていいと言い、ナルーガが王となり国を築いた。
ので、この国は、「ナルーガ王国」と言うのだという。
この国に行く理由は、スバルが、「俺についてくるなら、お前も武器を持て。
冒険者として生きるなら戦闘経験も必要だ。あと、宿屋代、食事代も稼ぐためにな。」と言う。
すなわち、私はこの国で、冒険者に登録できるこの国で『冒険者』となるのだ。
自立できるようになるため、戦闘経験を積み、ベテランの冒険者になるのだ。スバルみたいに。
ナルーガ王国まで、ひたすら歩みを進める。
「ところで、サクラはなんの職業につくナビ?」
職業……?
キョトンとしていると、スバルがフォローする。
「職業ってのは、冒険者になるにあたって決めなきゃいけないことだ。剣士や、魔法使い、いっぱいある。ちなみに俺は召喚術師な」
うん、スバルが召喚術師だということはよく知っている。
「僕はナビゲーターナビ!」
「俺は召喚術師だから、召喚魔法が使える。魔力もちょっと上がるんだ」
なるほど、冒険者には職業があって、その決めた職業によって特殊効果がつくらしい。
しかし、ナビどらごんが言ったナビゲーターは、明らかに戦闘向きな職業ではないだろう。
そう疑問に思い、ナビどらごんに聞いてみる。
「ねぇ………」
そういえば、私は私からナビどらこんに話しかけたことがなかった。ので、ナビどらごんをどのような呼び方をすればいいのか分からない。
私が顎に手を当てて、考えているのを、察してくれたのか、ナビどらごんはドンと胸を叩いて言う。
「僕のことは!ウルトラスーパー超天才デラックスナビどらごんと呼べばいいナビ!」
「いや長いわ!しかもダセェし」
またスバルとナビどらごんの漫才が始まるのかと思ったら、スバルがフォローしてくれる。
「いいよ、こいつのことはナビどらごんでもドスケベでも変態でもどんな呼び方でもいいよ」
「あれ?スバル。後の方変じゃなかったナビ?」
「気にするなスーパード変態ドラゴン」
「ああっ!やっぱり僕の悪口言ってるナビ!」
スバルとナビどらごんのやり取りに苦笑しつつも、私は考える。
どんな呼び方でもいい、か。なら…
「じゃあ、ナビーちゃんでいい?」
「ナビーちゃんって、全然カッコよくないナビ!」
「よかったなぁ、ナビーちゃぁん」
「ちょっと!辞めるナビ!」
「よろしくね!ナビーちゃん!」
「ああっ!勝手にっ!…はぁ、もうどうでもいいナビ」
「どうでもいい?なら、変態がいいk…」
「黙れ…。失せろ…」
一瞬ナビーちゃんのとてつもない殺気が満ち溢れるのを感じた気がしたけど、気のせいだ。う、うん。き、きっと、ききのせせせいだ…。
それで、話を戻すと、
「ナビーちゃんは明らかに戦闘向けの職業じゃないよね」
「そうナビ、僕、戦闘向けの主職業は何もないけど、副職業があるナビ。それがナビゲーターナビ」
副職業……。
つまり、戦闘を目的としていないもう一つの職業ということ…?
ならば、ナビーちゃんが職業を案内役と言うのも分かる。
じゃあ、スバルも何か副職業をやっているのだろうか。そう思い、スバルに聞いてみる。
「ねぇ、スバルの副職業はなに?」
「俺か?俺は副職業は無い。召喚術師一筋だ」
「へぇ」
なるほど、職業は主職業も副職業もどちらも決めなくてはならない訳ではなく、どちらか片方だけでも良いという訳だな。
まぁ、職業をやるにあたって、私は主職業を最優先に考えるが、余裕があったら、副職業をやってみるのもいいかもしれない。
主職業を考えながらも、副職業も一緒に考えてみることにする。
「お、見えてきたナビ!ナルーガ王国ナビ!」
ナビーちゃんがはしゃぐので、正面を見たら、とても大きな外壁が広がっていた。
石のレンガでできているらしい。ところどころに欠けた部分や、ヒビが入った部分なども、リアルで美しい。
門まで歩いて行くと、門番が槍と盾を持って、鉄の鎧で武装している。
門番が槍を重ね、道を塞いで言う。
「貴様ら、この国に何の用だ」
左の門番が言う。
兜をかぶっているので、顔は伺えないが、低い声を出したので、男だと認識した。
「この子が冒険者になりたいんだと。だから、この国で登録するんだ」
スバルは私の肩に手を置いて、得意そうに喋った。やはりスバルはこういうのに慣れているんだな。
「他の国や街で登録できなかったのか?」
左の門番は言う。
スバルが答える。
「いやぁ、街はあったんだけどさぁ。この前、「イリシアネ襲撃事件」があって、街が焼けてしまって、んでここにきた。」
その話を、門番は聞くと、門番は「なにっ」などと驚きの声を上げる。
そしてスバルに一歩近づいて問う。
「お前は「イリシアネ襲撃事件」に居合わせたのか?たしか、生き残った者はいないとの話だったぞ!」
「奇跡的に助かったんだよ」
スバルは嘘をついた。
「生存者がいたとは…おっと、話題がそれたな。まぁ、今バクーンという魔物がうろちょろしてるんじゃないかって、それであまり冒険者を国に入れていないんだよ」
「はぁ?せっかくここまで来たのにー」
スバルが溜息をつく。
「まぁまぁ最後まで話を聞け。お前らが生存者ということは、事情聴取をしなければならないからな。特別に国に入れてやる」
「はぁ?事情聴取?めんどくせえな。
……まぁ、仕方ないか」
いろいろあるらしいが、ひとまずこの国に入ることができるらしい。
「じゃあ、門を開ける。入れ、事情聴取はおそらく昼過ぎになると思うから、それまでに準備しておけよ。」
「へいへーい。」
スバルがめんどくさそうに返事をすると、ギギギギと音を立てて門がひらく。
私達は、門が完全に開くのを確認すると、ゆっくりと中に入る。
「じゃあ、昼過ぎ、そうだなぁ。2時程度に城へ来てくれ!」
門番がそう言うと、門番のうち、何もしゃべらなかった右側の門番に「王妃様へ報告を頼む」と言い、門番の仕事に戻った。
頼まれた門番は、走って王国に行く。
私達とすれ違い、商店街の人混みに消えていく。
……気のせいだろうか。門番とすれ違う時に、鋭い視線を感じたのだ。
まるで、「殺すぞ」とでも言いたげな、鋭い視線を………。
いや、きっと気のせいだ。
そんなことを考えていると、先を歩いていたスバルが振り返り、こう言う。
「さて、冒険者登録に行こうぜ」




